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#勧善懲悪
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公園の舞台がほぼ直りきったころ、エリアは大きな板を一枚抱えて現れた。
「重そう」
サペが手を伸ばす。
「重いよ。だから持ちな」
「命令が雑」
「遠慮よりいいでしょ」
二人で板を立てる。
布をめくると、そこには新しい看板の下絵が描かれていた。
歯車を抱えたからくり人形。
横でしゃがみ込む修理屋。
その向こうに、絵筆、木槌、帳面、糸巻き、ケーキの箱、紙コップ。町のみんなの手仕事が細かく紛れ込んでいる。
中央の文字を見て、サペは目を丸くした。
「からくり人形と修理屋たち」
昔の題目を少しだけ変えた、その名前が、妙にしっくりきた。
「勝手に変えた」
エリアが言う。
「怒る?」
「いや」
サペは首を振る。
「すごく、いい」
エリアはほっとしたように笑った。
その笑い方を見ていると、卒業式の日に言えなかった言葉も、今なら少しずつ口にできる気がした。
ズジが看板をのぞき込み、すぐに気づく。
「これ、右下の小さいケーキ、ローレリーズさんの箱だ」
「ばれたか」
「左上の影、ルドヴィナさんの鍵も入ってる」
「ばれる前提で描いた」
見れば見るほど、誰かの仕事が、誰かの癖が、絵の中に潜んでいる。
サペは板の端に触れた。
エリアの線はまっすぐだ。迷っても、最後には自分の線にしてしまう強さがある。
「これ、残るな」
サペがつぶやくと、エリアは肩をすくめた。
「残すために描いたんだから」
黒い名刺みたいに人を縛るものじゃない。
見るたび、自分の手で直した日を思い出せるもの。
そんな看板が町にあるのは、たぶん、かなりいいことだった。