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第5話:大和国の信者たち
配信の幕開け
「こんばんは、“はごろもまごころ”だよ!」
まひろは、水色のチェック柄シャツにベージュのハーフパンツ。首元には小さな布のスカーフをゆるく巻き、足をぶらぶらさせながらカメラを見ていた。
「ねぇミウおねえちゃん……“Yamato is justice”っていう旗を持ってる人たち、海外でいっぱい出てきてるんだって。ぼく、正義って言われるの、なんか照れるなぁ」
隣のミウは、薄ピンク色のニットワンピースに、薄黄緑のカーディガンを羽織っていた。髪はゆるくおろし、ヘアピンを横に差している。
彼女は頬に手を添え、ふんわり微笑んだ。
「え〜♡ でも素敵だよね。“大和国に移住したい”って言ってくれる人までいるんだもん」
コメント欄は一気にざわつく。
「移住したい!」「ヤマトコインもっと買いたい」「日本語勉強してます!」
Zの仕掛け
暗い部屋で、緑のフーディを被った**Z(ゼイド)**はノートPCを操作していた。
彼のモニターには、各国で開かれる「Yamato is justice」と書かれたプラカードを持つ集会の映像が並んでいる。
その多くは、Zが生成AIで作り出したフェイク映像だった。
少人数のデモをAIで群衆に見せかけ、SNSで「数万人規模」と拡散。
さらにBotを使い「#YamatoIsJustice」「#MoveToYamato」をトレンド入りさせた。
Zは口元をゆがめる。
「移住なんてできやしない。でも“移住したい”と思わせるだけで、投資は流れ込む」
画面にはヤマトコインの価格が急騰するグラフが表示されていた。
レイNewsと月刊蜜
レイNewsの記事。
「海外で急増する“大和国信者”たち──『Yamato is justice』の旗」
「ヤマトコインで投資、若者層に急拡大」
月刊蜜は「大和国を信じる声」と題して、移住希望者のインタビュー記事を掲載。だがその声は、ZがAIで生成した“偽証言”だった。
無垢とふんわり同意
その夜の配信。
まひろはチェック柄シャツの袖をつまみ、無垢な瞳で言った。
「ぼく……ただ“正義なのかな”って思っただけなのに、世界の人たちが本当に旗を振ってる……」
ミウはふんわり笑みを浮かべ、ヘアピンに触れながら語った。
「え〜♡ まひろはすごいねぇ。“ほんとかな”って思っただけで、もう世界の人が信じちゃってるんだよ。
それって……とっても素敵じゃない?」
コメント欄は「ありがとう」「ヤマトに未来がある」「Justice for Yamato」で埋め尽くされた。
結末
暗いモニターの前でZは笑った。
「信仰は資産より強い。
“正義”と呼ばれる国には、金も人も勝手に集まる。
はごろも党はただ笑っていればいい……世界は勝手に飲み込まれる」
無垢な問いとふんわり同意、その裏で信者の群れは増殖し、“大和国”は幻想のまま現実を侵食し始めていた。