「あの……初めまして。谷岡純と申します」
「初めまして。恵菜の父です。わざわざ娘を送ってくれたのかな? すみませんねぇ」
恵菜に似て、若々しいイケおじっぽい雰囲気の父は、芸能人かと思わせる容貌。
目を細めながら純に言葉を掛けると、少し長めの髪を、ザックリと掻き上げた。
「初めまして。恵菜の母です。娘の後ろにカッコいい男子がいて、お母さんビックリしちゃったわぁ」
年配と思われる女性特有の癖なのか、手を前に振る仕草をしている恵菜の母は、目鼻立ちが整った美人。
ストレートロングの濃茶の髪を後ろに結い、うっすらと額に滲む汗を、手の甲で拭った。
(……ってか、恵菜のお父さんとお母さん…………めっちゃ若くね……!?)
恵菜の両親は、恐らく還暦を過ぎているだろう、と想像していたが、老いを感じさせない夫婦の雰囲気に、純は目を見開いている。
「あの…………雪掻き、手伝います」
彼は咄嗟に口を衝くと、雪に刺さっていたスコップを手にして、門の周辺の雪掻きを始めた。
「谷岡くん、といったかな? 申し訳ないね。なら、みんなでしようか。ホラ、恵菜も手伝え」
彼の言動を見た恵菜の父が、家の中に一度戻ってスコップを彼女に手渡すと、『えぇ〜?』と言いながらも、どこか嬉しそうな表情を見せている。
(恵菜のご両親…………何か……いいな……)
純は、彼女の家族に混じりながら、黙々と手伝いを熟(こな)していた。
一時間ほど、恵菜の実家の前を雪掻きした純は、両親に誘われ、家に招かれた。
「谷岡くん、雪掻きしてお腹空いているでしょ? 残り物で申し訳ないんだけど、カレーライスがあるから食べていってね。ホラ、恵菜も手伝ってちょうだい」
「すみません。突然来てお昼まで……」
恵菜の母が、目を細めながら案内すると、純は恐縮しきりで頭を下げた。
リビングには、食欲をそそるスパイシーな香りが広がり、純のお腹が地味にキューッと鳴っている。
「純さん。ダイニングテーブルに座って待ってて下さい」
「あっ……ああ、ありがとう」
彼は、失礼します、と声を掛けて腰を下ろし、母娘の背中を見つめていた。
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