そして宴も終わりに近づいた頃、最後に新郎の内田から皆に挨拶があった。
内田は結婚式を挙げる予定がなかった自分達に、こんな素敵な式をプレゼントしてくれた山岸夫妻や山荘のスタッフ、そして参
列してくれた宿泊客の皆様に心から感謝していると伝えた。そして山荘で出会えた方々とのご縁を今後も大切にしていきたいと
述べると、盛大な拍手が鳴り響いて結婚式は終了した。
その後出口で新郎新婦は一人一人にお礼を述べていた。
優羽とパートの三人は、食事をご馳走になったお礼に後片付けを買って出た。
三橋も朝早くからケーキと料理の準備で疲れているだろう。
四人のお陰で、片づけはあっという間に終わった。
車で来ていた兄の裕樹は、ノンアルコールビールしか飲んでいなかったので、
帰りがてらパートの三人を家まで送ってくれると言った。
そこで舞子達パート三人は裕樹の車で家に帰って行った。
いつもより興奮した夜を過ごした流星は、優羽が片づけをしている間フロントのソファーで寝てしまった。
今日はもう風呂に入れるのは無理だろう。
そう思いながら、優羽は流星を抱き上げようとしたが重たくて持ち上がらない。
最近流星はぐんぐん体重が増えていて、昔のようにさっと抱き上げる事が難しくなっていた。
優羽が再度流星の方へと手を伸ばそうとすると、横から逞しい腕が伸びて来て流星をあっさりと抱き上げる。
「僕が連れて行きますよ」
岳大だった。
「ありがとうございます、助かります。部屋はこちらです」
優羽は先導して岳大を部屋まで案内した。
一番奥の突き当たりの部屋のドアを開けて、優羽が流星を受け取ろうとすると、
「重いからベッドまで運びますよ」
岳大がそう言ったので優羽はお願いする事にした。
部屋へ入り電気をつけると、壁際にある流星のベッドへ案内した。
岳大は流星をそっとベッドに横たえると、靴を脱がせてからタオルケットを掛けてくれた。
そして部屋を見回すと言った。
「素敵な部屋ですね」
「はい。この部屋からは川のせせらぎが聞こえるのでとても癒されます」
優羽は嬉しそうに言う。
すると岳大はクローゼットに掛けてある白いワンピースに気付く。
「あのドレスは優羽さんのものだったんですね」
「はい。あれは昔ボーナスで買った服なんですが一度も着ていなくて…。でも今日花嫁さんに着ていただけたの
で良かったです」
「花嫁さんにとてもよく似合っていましたね。でもきっと優羽さんにも似合うと思うなぁ」
「え?」
優羽はびっくりして小さく呟いたが岳大は気づかずに続ける。
「それにしても今日はお見事でした。とても素晴らしかったです」
「ありがとうございます。初めての事ばかりで無我夢中でしたが、やっているうちにこちらまで幸せな気分になれました。佐伯
さんのアドバイスのお陰です」
優羽は改めて岳大に礼を言う。
「いえいえ僕は何も。でもこういった経験を少しずつ積み重ねて段々夢へ近づいていくんだと思いますよ。よく頑張りました
ね」
「ありがとうございます」
岳大が褒めてくれたので、優羽はなんだか気恥しくなる。
「僕は明日東京へ帰ります。優羽さんはたしか明日はお休みでしたよね? 流星君も保育園はお休みだし、だったら朝寝坊して
も大丈夫ですよね? もし良かったらこの後テラスで一杯いかがですか? 缶ビールですが」
優羽は思いもかけない誘いに驚いていたが、快く受ける事にする。
「はい。私もなんか一杯飲みたい気分でした。だって、ずっとやりたかった夢が叶ったから」
「ハハッ、じゃあお祝いしないとだな。じゃ、先に行ってます」
岳大は部屋を出る前にもう一度流星の寝顔を見てから、微笑んでその場を後にした。
優羽は今達成感に満ちていた。
ずっとやりたかったスタイリストの真似事が出来たのだ。
そしてそれは見事に成功した。
だから優羽は今、躍り出したいくらい嬉しい気持ちでいっぱいだった。
きっとこのまま寝ても興奮してすぐには眠れないだろう。だから岳大の申し出が有難かった。
優羽は部屋の灯りを消すとそっと部屋を出た。
そして岳大が待つウッドデッキへ向かった。
コメント
4件
ウハッ(*´艸`*)💖 逞しい腕が伸びてきて…キュンキュン🩷 えっ(´゚д゚`)💦 岳大さん💦明日帰ってしまうん😭 きっとすぐ会いにきてくれる思うけど、 もうちょっとだけでええさかい前に進んでー🥹🍀🍀🍀🙏🏻🩷
星空を眺めながら2人は何を話すんだろう.。.:*☆✩࿐⋆* アルコールも入るから、これから先へと続く何かがあるといいな💓
2人でお祝いですね🥂綺麗な花嫁にして差し上げることができて優羽ちゃんの心も満たされて✨岳大さんのおかげですね❤️