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朝一番に私たちはモンスターコロシアムに来ていた。
「すごい人の量ね!アオイ、私の手を離すんじゃないわよ」
「……はい」
流石、このフェスティバルの一番のイベントね。
気をつけないと人の川にすぐに流されそう……
モンスターコロシアムのチケット番号はAー3のAー4……番号の席を探してるのだが
「ここはEの列ね、D、C……」
どんどん前に前に進んでいっている、もしかしてこれって__
「私達、一番前の列?」
Aって書いてる時点で何となく察してたけど……私達の席、マジで良い席じゃないのよ、一番前の席で隅々までコロシアムが見える位置。
「ラッキーね、流石この町の町長だわ」
「……」
今の所アオイの反応は好きな食べ物を聞いた時が1番大きかった……あれが良い思い出ならいいんだけど、泣き出すくらいだから下手に追求して刺激しない方がいいわね。
アオイは番号の席に静かに座り、コロシアムの幕開けを待っていた。
そして――
「大変お待たせしました!まもなく!モンスターコロシアムがはじまります!昨日のコロシアム勝者はアブルカさんの育てた【レッドドラゴン】!今日の勝者は誰になるのか!さぁ、では第一回戦!はじまります!」
その声と共に、会場は一気に熱気に包まれ、みんなの歓声が轟き、花火が上がる。
モンスターコロシアムの幕が開き、戦いの舞台が幕を切って落とした。
「わー!やっぱり周りの人達がテンション高いと釣られて私達までテンション高くなるわね!」
「は、い」
心なしかアオイも周りのテンションに釣られそうになってる気がする!これはここに来て正解ね!あと少し!
「アオイ、私たちは今休暇なのよ?自分の感情を抑えるのは仕事中だけにしなさい?」
「は、はい」
{レッドコーナー!グリード王国から参戦!みんたろーさんの育てた【キウルーの群れ】!キウルーはグリードの近くに生息してる小型のモンスターで群れで狩りを行う獰猛な肉食モンスターだ!みんたろーさんはキウルーを小さな頃から育て上げ今やキウルーを使って狩りをしてプラチナランクまであがったモンスター使い!キウルー達の連携が見ものです!さぁ!対するブルーコーナーは同じくグリード王国から特別ゲスト!なんと!あの『クリスタルドラゴン』を討伐し英雄になった男!!!その名も【英雄リュウト】!彼が育てた【アールラビッツ】です!}
両コーナーの檻が開いて、片方からはキウルーの群れが、もう片方からは1メートルくらいの白いフワフワしたモンスターが出てきた。
「あら、かわいいわね、あれがアールラビッツ?大きい耳ねぇ、モフモフしてるし抱き心地も良さそう」
でも、明らかにこの場所には不向きよね、どう見ても草食モンスター……キウルー達みたいに凶暴そうに見えないわ……
{さぁ!ファイト開始!}
合図と共にキウルー達が動き出す。
{キウルー達が敵を囲いだしました!普段、ハンター達が実際に遭遇するとこの様に敵を囲います、そしてリーダーが相手に近づき!キター!その鋭い牙を使った噛みつき攻撃!後に周りを囲っていた仲間が次々に……え?}
キウルーがアールラビッツに噛みついたがガキンと硬い音がして距離をとった、そしてそのままキウルーの仲間達が襲いかかるがアールラビッツは足で来る敵を攻撃し一撃でキウルーを気絶させていっている……その異様な光景は一瞬お客を静かにさせたが……すぐに番狂わせに会場が湧き、アールラビッツコールが響き出す。
さらにアールラビッツは追い討ちをかける様にキウルー達を蹴り飛ばし、文字通り“蹴散らす”
最後にはキウルー達は戦意喪失してアールラビッツからコロシアム内を逃げ回り、審判は続行不能と判断し勝敗が決まった。
{なんとなんと!勝者はリュウトさんのアールラビッツ!草食モンスターの可能性を我々に見せてくれました!}
勝負が決まると再び歓声が広がり、会場は一気に熱気に包まれた。
まだ始まって1試合しか終わっていないのに私もこんなに興奮するなんて!ここに来て本当に正解だったわ!
「すごいわね!アールラビッツってあんなに可愛いのにあんなに強いなんて!ねぇ!アオイ!」
「はい……」
アオイは返事をしてくれるがまだ変わっていない。
うーん、さっきよりまたテンション下がってる?解らないわね……とりあえず様子を見ておきましょ。
と、思っていたが____
2回戦、3回戦とリュウトと言う冒険者に育てられたアールラビッツは一気に決勝戦まで上り詰めていき。
モンスターコロシアム開催以来の番狂せに私自身が興奮してしまいアオイの事を見るのも忘れて目が釘付けになっていた。
{さぁ!いよいよ!いよいよです!このコロシアム決勝戦!まずは青コーナー!まさかまさかの草食モンスター!もし優勝したらこのコロシアム初の草食モンスターの優勝者です!アールラビッツ!}
客の歓声と私の歓声とともにアールラビッツが出てくる。
「キャー!可愛い!また華麗に技を見せてー!」
私もたまらず叫んじゃった……
{さぁ、赤コーナー!昨日のチャンピオン!こいつが暴れだすと止まらない!挑戦者をバックバックと食い漁る!心臓の弱い奴は早く会場を出たほうが身のためだ!レッドドラゴーン!}
そして反対の檻から出てきたのは今までと明らかにオーラが違うモンスター。
真紅の鱗が全身を覆い、その輝きはまるで燃えるような情熱を感じさせ、長くてしなやかな尾は炎のような赤色。
頭部には鋭い牙と鋭い目を持ち、今まで何匹ものモンスターをこのコロシアムで惨殺してきたであろう昨日のチャンピオン!
だけど私の応援してるラビッツちゃんもこれまでに見せてきた技があるから負けないわよ!
{さぁ!圧倒的この差!食うか食われるか!今まで魅せてきたアールラビッツ、ここでも魅せるのか!それとも弱肉強食!レッドドラゴンに食われるのか!今!はじまりました!}
お互いに睨み合う。
{おーっと!チャンピオンもアールラビッツもお互いに強敵と判断したのか!踏み込んで来ても避けれるような距離を保っている様に見えるぞー!}
最初に仕掛けたのはレッドドラゴン。
アールラビッツに向かって間合いを一気に詰めて鉤爪でひっかこうとするが、距離をとっていたアールラビッツは自慢の足でバックに飛び避ける。
{素晴らしい回避だ!だがレッドドラゴンも様子見の一発!すぐに次の行動に移ってその長い尻尾や鉤爪で連続波状攻撃ダァ!}
だが、アールラビッツも素早い動きで避けていく!
{避けていく避けていく!だが大丈夫か!?もう後ろは壁だぞ!アールラビッツぅ!}
その追い詰められた壁はまさに私たちの席のすぐ下。
ここからだと見下ろす形になる。
くぅ!いい席ね!もしも後ろの席なら絶対見えてないわ!
……とか思ってたら……
「見えねぇ!良く見せろ!」
興奮していた一人の男が席を立ち、前に移動し始めると、それを皮切りに周囲の人々も我を忘れ、雪崩のように動き出した。
「ちょ、ちょっと!押さないで!押さないで!」
私は危険を感じ、アオイを連れてその場を離れようとしたが、その時――。
「……あ……」
「アオイ!?」
抵抗をせずそのまま流されたアオイはコロシアムに落ちていってしまったのだ!