(——可愛い、可愛い、可愛い!)
ルスはこちらにお尻を突き出した状態で、言われた通りキッチンの洗い場の端に必死に掴まっている。すっかりとろんと蕩けて焦点の合っていないカシス色の瞳とその目頭に溜まる涙、僕の指が口内を撫で回しているせいで閉じられずに唾液が口の端から垂れ落ちている口元、何度も吐き出される熱い吐息と真っ赤な頬。僕は、僕に裏切られて落胆と絶望に歪むルスの顔を見たいはずなのに、快楽で歪むこの顔を前にすると何故か心が満たされてしまううえ、下っ腹がやたらと重くなる。その事実に不快感を覚える余裕も今は無く、ただただ『もっとこの顔を快楽で崩してやりたい』と思う気持ちで胸の中が一杯だ。
「ココが好きなのかい?」
小さなルスの体では僕の指だけでも彼女の子宮口を指先で触れる事は容易い。なのに今は子宮が降りてきてまでいるから一層簡単に指先で執拗に攻める事が出来る。軽く最奥を擦るたんびにビクビクと体を震わせて、ルスが言葉にならない淫楽に染まる音を叫ぶ。
熱くてふかふかなナカからは次々に愛液が溢れ出てくるせいで僕の指はすっかりびしょ濡れなんだが、その事実で心が弾む。僕のちょっとした些細な動きだけでこの子をこんなにも乱れさせる事が出来ているんだと思うと、自然に口角が上がった。あぁ、だけど、ここまでやっては、昨夜まではトロ火で炙るみたいにルスの体を溶かし、魔力を馴染ませるという体をどうにか保ってきたが、今回はそれさえも無理そうだ。
(ならもういっそ、その事に気が付けないくらいにさせてしまえばいいのか)
無自覚に何度も何度も絶頂まで達し、既にルスはもう息も絶え絶えの状態にある。この指は長さだけじゃなく太さもあるとはいえ、たかが指でコレでは、僕のモノを挿れてしまったらどうなるんだろうか?一瞬そんな事を考えたが、ごくっと生唾を呑み込んでしまった後で、イヤイヤと否定するみたいに僕は軽く首を横に振った。
(流石にそこまでやったら何も言い訳が出来なくなる)
僕らは“夫婦”ではあっても愛情を持った間柄じゃないんだから、いき過ぎた行為は避け方がいいだろう。そうだ、いいに決まっている。憑依しているせいでルスからの影響が強い今の状態では、本来の僕では持ち合わせていなかったはずの情が湧いてしまいそうだしな。
(…… でも、もう少し、もう少しくらい、この体を味わってもバチは当たらないはずだ)
ルスの口と秘部からずるっと指を抜き、その場にしゃがむ。彼女の体までそのまま崩れ落ちそうになったが、咄嗟に両手で尻たぶを掴んで支えてやった。
「んあ…… あぁっ…… はぁはぁ」
口から指を抜いてやったのに表情は相変わらず崩れきったままだ。情けなくって、めちゃくちゃ可愛い。
(あの小さな口にぶっ込んだら、もっとバカみたいな顔を晒してくれるんだろうな)
生唾をまたごくっと呑み込み、下半身を隠すみたいに下がっているルスの尻尾の根元を掴んで無遠慮に持ち上げた。ぷるんとした真っ白な双丘が窓から差し込む陽の光でてらてらと光って見えるのはきっと、ナカから流れ出ている愛液や汗で肌が濡れに濡れているせいだろう。
指で軽く掻き分ずとも、尻を突き出している体勢のおかげでイヤラシイ箇所がすっかり丸見えだ。きっちりと閉じられた後方の孔も、物欲しそうにヒクヒクとしている秘部も、どちらもひどく卑猥である。子供並に小さな体には不釣り合いの大きめな肉芽はもう剥かずとも完全に勃起していて、弄って欲しそうに真っ赤なその実を小刻みに震わせていた。
舌を出し、果実の様に実っている肉芽に添える。口全体で包み込んでちゅっと軽く吸い付くと、ルスの身が歓喜に震えてながら甘い声で鳴いた。
「んぁぁっ!い、いぃっ——」
頭ん中はすっかりもう機能を停止しているのか、羞恥心なんかぶっ飛んでしまったみたいだ。もっともっとと自分から腰を動かして敏感な肉芽を僕の舌に押し付けてくる。こんなに淫乱な行動をしているのに、まだ処女なのだと思うと…… こっちの頭の中まで煮詰まっていきそうだ。
「そっか。じゃあ、もっとしてあげるよ」
和毛の一切生えていない秘部はふわふわとしていて、甘い匂いまでする気がする。ナカから溢れ出ている愛液や口に含んでいる肉芽が美味しいとさえ感じられるのはきっと、僕も多少は興奮状態にあるせいだろう。そう、多少だ、多少。
舌先をずらしてとろっとろになっている蜜口に添えて、期待で震える肉壁のナカに熱い舌を押し挿れていく。
いまいち想像力に欠ける僕ではこの肉体を創る為にはルスの想像力に頼らざるを得ないが、このくらいの変更ならば粘土細工みたいに簡単に作り替えられるので、舌を蛇みたいに長く伸ばし、 “人間”では絶対に与える事の出来ない享楽を無理矢理ルスのナカに与えてやった。
「——ひぐっ!」
ルスが背中を仰け反らせてはしたなく嬌声をあげる。僕の耳を優しく擽ぐる甘美に満ちた声だ。
出逢って以降、毎夜の如く指でほぐし続けてきた膣内は容易く僕の舌を受け入れるどころか、もっと舐めてくれ、もう出て行かないでと懇願するみたいにぎゅっと抱き締めてくる。ただ最後まではしていないだけで、既にもう充分過ぎる程に快楽を知ってしまっているルスのナカで僕の唾液と愛液とが混じり合っていく。次々に染み出してくる愛液を余す事なく飲み干してやろうとしても難しいくらいだ。
叱るみたいに真っ赤な肉芽をきゅっと指先で摘むと、ナカがぎゅぎゅっと蠢動を繰り返した。また達したのか、ルスはもう、洗い場の端っこを掴むのさえも辛そうだ。
「…… あぁ、ぁっ」
だらしなく開いたままの口から唾液がこぼれ落ちて、床に水溜りを作った。このままでは気を失ってしまいそうな程に虚な瞳にもなっているが、楽しくってやめ時が掴めない。だけどそんな僕の心境を何となく察したのか、ルスが掠れた声で「…… 魔力はもう、馴染んだ、よね?」と力無い声で訊いてきた。
(…… いやいや。ここまでされても、もはやただの建前にしか過ぎなくなってきている言葉を、まだ信じるのか?)
確かに嘘じゃない。嘘じゃないが、これらの行為がそれ『だけ』なのだと思われているのかと考えたら、妙に癪に触った。だけど、じゃあこの行為に意味を持たせるとしたら…… 一体どんな?
——そんな疑問と共に、今胸に抱いているこの感情の出所がものすごく気になった。
(彼女の善良さに侵食され始めているのは間違いないが、だからって、ココまで思考に関与出来るものなのか?)
興が削がれたみたいにすんっと冷静になり、ぬぷんっと水音を立てながらルスの蜜口から舌を抜く。舌にまだ残る甘味と蜜道の感触に少しだけ浸りつつ、そっと額に手を当てる。
「…… スキア?どう、したの?」
熱が残ったままの瞳と声で問われると、『本当は、もっと続きをして欲しいんじゃないのか?』と、僕自身がこの続きを期待している様な言葉が咄嗟に出そうになったが、開きかけた口を慌てて閉じた。
「今日の分はもう、大丈夫だ」
「そ、そっか」
羞恥の中に少しだけ安堵の色が混じる顔でルスがふにゃりと笑う。下っ腹の重たさなんか忘れられる笑顔だ。
そう考え、己を戒めるみたいに指先でトントンッと自分の額を叩いた。『いや、だから、コレを可愛いとか思ってる場合じゃないだろ』と。
…… これはちょっと冷静に考えた方がいい案件だな。
『可愛い』だなんだと、僕が憑依対象を見て感じるだなんて、明らからにオカシイ事だから。
「——大丈夫か?」
「う、うん。もう…… 大丈夫」
愛液やら唾液やらで、とてもじゃないがこのまま外出出来る状態ではなかったので、ルスにシャワーを浴びさせた。まだ濡れている彼女の髪の毛をタオルで拭きながら水分を吸い取って消し去っていると、ルスがぽつりと呟いた。
「…… 世の“夫婦”って、あんなすごい事するの?」
キッチンでおこなった行為を少し思い出したのか、僕と視線を合わせようとしていないルスの頬が少し赤い。
「いやいや、あんなのは序の口だろ。作法的には白いエプロンをつけさせるみたいだし、途中では止めないだろうし」
「え?…… お店に売ってる白いエプロンを見るたんびに、『汚れが目立つのに、何で白いんだろう?』って思っていたんだけど、アレって、ソレ用のアイテムだったんだ」
自分の両頬を手で包んで、「…… わぁ」とこぼしながらルスが何やら勝手に勘違いしている。わざわざ訂正をいれるのも面倒だし、バカ過ぎて面白いのでもう、このままにしておこう。