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騎士団長は恋と忠義を区別できない

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騎士団長は恋と忠義を区別できない

8 - 【第七話】召喚へ求めた期待③(シド・レイナード・談)

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2025年10月10日

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「迎えに来たぞ!彼の部屋の準備が出来たそうだ!」


突如上空から声が聞こえ、驚いて顔を上げた。するとそこには白い梟が飛んでいて「お迎えだ!」と何度も声を張り上げていた。

「すごいな!この世界では鳥が話せるのか」

俺が感心している横で、ロシェルが「わかったわ。先に戻っていて、サビィル」と白梟に向かい叫んだ。

「わかったぞ!伝えよう!」

サビィルと呼ばれた白梟はそう返すと、先に神殿があるであろう方角へと戻って行く。

「彼は、父さんの伝達係ですよ。普段はあまりこの神殿には居ないのだけれど、今日は珍しいわ。お休みなのかしら?」

「梟が話したり、魔法が使えたり……すごい世界だな、此処は」

「あら、シドも魔法が使えるようになりますよ?」

「……は?」

「だってシドの毛色は濃い茶色ですもの、時がきたら魔法が使えるようになりますよ」

当然じゃないと言いたげな顔で言われたが、待ってくれ、俺は“異世界召喚”とやらで此処に来たんだから知る訳が無いじゃないか。


「時がきたら、魔法が?……俺も?」


「それが此処の決まりです。髪や瞳の色が濃い者は、魔法を使う能力に長けているの」

「じゃあ、髪も瞳も黒いロシェルは魔法が得意なのか?」

「えぇ!とっても得意よ。私は……父さんと違って、神子では無いから古代魔法は残念ながら使えないけど」

肩を竦め、ロシェルが苦笑いをする。父との違いを少し寂しく思っているのだろうか?


それにしても、面白い事が聞けた。俺も魔法が使える様になるのか。どんな事が出来る様になるのか想像も出来ないが、戦う事に役立つなら有難い。もっとも、この平和そうな世界では戦闘能力の高さなど不要かもしれないが。


「じゃあ、戻りましょうか。……シド、またお願いしてもいいですか?」

首を少し傾け、可愛く『お願い』の仕草をされた。来た時と同じく、きっとロシェルは俺に肩車をしてもらいたいのだろう。

「あぁ、どうぞ。ご主人様」

冗談めいた声でそう言い、地面に膝をつく。ロシェルが俺の近くまで来てくれたので、腰を掴んで持ち上げ、左肩にまた座らせた。嬉しそうな笑い声が聞こえて俺まで嬉しくなった。


落ちない様にと太ももにそっと手を置き、ロシェルを支える。彼女が俺の頭にしがみつき、また柔らかな感触がそっと触れてきた。今自分がどんな表情をしてしまっているのか想像もしたくない。顔が赤い気がするし、口元もキツく引き結んでしまっていてとても険しい目付きになっていそうだと思う。

シュウも反対側の肩に飛び乗り、やっぱり俺を運搬係にする気満々だ。

「シドはいつもこんな世界を見ているのね……。本当に、素晴らしいわ」

風が吹き、ロシェルの髪をフワッと舞上げた。スッと目を細めながら髪を手で押さえる彼女の姿が視界の端に少し写り、心がざわつく。


(こんな少女相手に、何故こんな……)


そんな戸惑いを感じつつも、この体の感触を享受する事を役得だと思っておこうと考えてしまいながら俺は、神殿への道をロシェルに案内されながら戻ったのだった。




その後、俺達が神殿に辿り着くと神官のセナという者に案内されて食堂に向かう事になった。本来ならそこでロシェルの母・イレイラを紹介する予定を立てていたらしいのだが、彼女は疲労により睡眠中らしく会食は延期された。カイルも返還魔法の準備の為に欠席したので、俺とロシェルだけでの夕食となった。

元の場所と似た様な世界だなと思った印象通り、食事にも大差が無く、普通に飢えを満たす事が出来て助かった。好き嫌いは無い方なのだが、食べやすい物ばかりなのは正直有難い。


部屋へは女性の神官・エレーナとここの使用人達に付き添われて向かい、何が何処に入っているのかなどを説明してもらった。使い勝手の不明な物などもほとんど無くて助かった。水回りだけは『魔法具』とやらが置いてあって使い方に少し困ったが、『触れるだけでお湯や水が使える』と聞いた時は本当に驚いた。魔法はどこまで万能なのかと。


「——他に不明な点はございませんか?入浴のお手伝いが必要でしたら使用人を置いていきますが」

「いや、問題無いです。ありがとうございます」

「わかりました。ではもし何か不自由がありましたらこちらをお使いになって、お呼び下さい」

ニコッと年若い見た目に合わぬ、とても落ち着いた雰囲気のある笑みを浮かべるエレーナが、俺に淡く光るベルを差し出してきた。それを振れば、手の空いている者が直ぐに駆けつけて来るそうだ。

「ありがとうございます」

礼を告げ、頭を下げる。

「では、私共は失礼させて頂きます。おやすみなさいませ、レイナード様。明日の朝は起こしには来ませんので、どうか存分にお体をお休め下さいまし」

エレーナがそう言い頭を下げると、一緒に来ていた使用人達も同じく礼をし、退出して行く。 扉が閉まり、その様子を見た途端、無意識にふうと息を吐いた。


(やっと……一人になれた)


朝からずっと慌ただしく過ごしてきて、まともに色々考える間も無く、流されるまま夜になってしまった。 『嫁が欲しい』なんて悩みを遥かに凌駕する大問題が目の前に現れてしまい、困ったなとは思いつつも不思議とカルサールに居た時より渇望感が無い。ロシェルとの交流により溜まっていた鬱憤を少しは解消出来たという事……なんだろうか?


だが、あくまで彼女は俺の“ご主人様”なので問題は何も解決していない。


でも、今この世界で嫁探しは出来ない。いずれ帰らねばならぬ事を考えると無意味なので、当分俺の小さな悩みには蓋をするしか無い様だ。

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