そしてデートの日がやって来た。
詩帆は少し緊張していた。
なぜなら詩帆はデートというものに対し、かなりのトラウマを持っていたからだ。
しかし今日デートする相手は涼平だ。
涼平とは既に二度食事へ行き、その後パーティーにも一緒に行ったりとこれまで何度も楽しい時間を過ごしている。
だからきっと今日も楽しめるはずだ。詩帆はそう自分に言い聞かせて出かける準備を始めた。
涼平と約束した午前11時が近づいたので、詩帆はアパートを出て階段の前で涼平を待つ。
詩帆はここから電車で行くのか自転車で行くのかどっちだろうと考えていた。
念の為自転車もすぐ出せるように待機する。
その時、詩帆の前にグレーメタリックのSUV車が停まった。
運転席には涼平が乗っていた。
「詩帆ちゃん、お待たせ!」
詩帆は驚く。
「今日は車なんですか?」
「うん。電車だとかえって遠回りでしょう? さ、乗って!」
涼平は詩帆に助手席に乗るように言った。
詩帆は助手席のドアを開けて失礼しますと言ってから座る。
「今日はよろしくお願いいたします」
「楽しい一日にしようね!」
涼平は笑顔で言うと車をスタートさせた。
詩帆が思っていた通り、涼平はこの日もジーンズに黒のパーカーというカジュアルな服装だった。
日焼けした肌に黒はとても良く似合う。
詩帆もカジュアルな服装で来て良かったとホッとする。
無理してワンピースを着てパンプスを履いていたら、きっと浮いていただろう。
車が海沿いの国道に出ると少し渋滞していた。
秋の海を見に来る観光客が多いようだ。
すれ違う車のナンバープレートを見ると、県外のナンバーばかりだった。
「サーファーの中には県外から来る人もいるのですか?」
詩帆は涼平に聞いた。
「うん。埼玉や東京の都心からも結構来るみたいだね。オリンピックのお陰でサーフィンブームに火がついたみたいだな」
涼平はそう言って右手の海を見た。そこにはすさまじい数のサーファー達が波に揺られていた。
あの混み具合だとサーフィンどころじゃないよねと涼平は苦笑いをしている。
少し渋滞が解消されて車が動き始めるとあっという間に江ノ島付近まで来た。
そこで車は地下駐車場へと入って行く。
詩帆は車でそのまま江ノ島へ行くのかと思っていたが、涼平がそのだいぶ手前に車を停めたので不思議に思っていた。
そこで涼平が言った。
「詩帆ちゃん、まずはデートの定番、水族館などいかがでしょう?」
詩帆は水族館は想定外だったので嬉しくて声を上げる。
涼平はそんな詩帆の反応を見て微笑んでいた。
二人は車を降りると水族館の入口へ向かった。
涼平がチケットを買ってくれた後、二人は中へ入って行った。
展示コーナーは、相模湾、深海、太平洋など場所別に再現され魚の特色が楽しめて興味深い。
昨今癒し系スポットとして人気のクラゲコーナーもある。
ふわふわと泳ぐクラゲを見ているだけで心癒された。
一番大きな巨大水槽へ行くと、サメやエイがゆったりと泳いでいた。
その合間を小魚の群れがキラキラと輝きながら泳ぐ様子がとても美しい。
まるで自分も海の中にいるような気分になる。
詩帆が水族館に来たのは子供の時以来だった。
久しぶりに来た水族館に詩帆は興奮しっぱなしだ。
二人がゆっくりと館内を歩いていると、間もなくイルカショーが始まるというアナウンスが流れた。
詩帆が見たいと言ったので二人は外の会場へと向かった。
二人が着席すると、すぐにショーが始まった。
まず最初は音楽に合わせてイルカ達が次々とジャンプを始めた。
次にスタッフがイルカの名前を紹介すると、イルカ達は頭を振って観客達に挨拶をした。
その様子がとても可愛らしくて詩帆は笑顔で見入っていた。
ショーの中盤では、ドルフィントレーナーの女性がイルカの上に立って乗ると、
サーフィンのようにプールの上をスイスイと回り始める。
これには涼平もびっくりして、詩帆と共に盛大な拍手を送った。
そして賢いイルカ達の演技はいよいよ終盤となり、会場内には壮大な音楽が流れ始める。
するとイルカ達は次々と高いジャンプを披露していった。今までで一番高いジャンプだ。
その大ジャンプのお陰で、水しぶきが観客席へと飛んで来る。
それは詩帆達の席まで届いたので、詩帆はキャーッと声を上げて大騒ぎをしていた。
そんな詩帆を見て涼平は声を出して笑っている。
そして盛大なクライマックスを迎えた後、イルカショーは終わった。
詩帆は館内に向かいながら、イルカが賢くて可愛過ぎますと笑顔で言った。
その時涼平は、詩帆の嬉しそうな顔を見て自分がとても満たされているのを感じた。
こんな感覚は本当に久しぶりだった。
そして涼平は歩きながら詩帆に言う。
「伊豆の海でたまにイルカが目撃されるらしいよ」
「そうなの? すごい!」
詩帆は大きな目を見開いて無邪気な顔で涼平を見つめ返す。
そして二人の目が合った瞬間、涼平はドキッとする。
しかしそんな涼平の様子には、詩帆は全く気付いていないようだった。
涼平は、詩帆の笑顔を見る度に胸が熱くなるのを感じていた。
コメント
2件
水族館デート 良いですね~🐟️🐬🌊✨ 詩帆ちゃんの無邪気で自然な笑顔にときめいてしまう涼平さん....😍♥️ 詩帆ちゃんも、涼平さんと一緒だからこそ 自然体、素の自分でいられるのかな....🍀✨
初デート💕が水族館🐟🦭なんて詩帆ちゃんが喜ぶ事間違い無いわ😀❣️ 🐬ショーのお陰で詩帆ちゃんの自然な笑顔😄にトキメク涼平さんが恋愛初心者のようで和むわ〜🌸