テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
第19話:偽物の師匠
黄昏の市民区。
広場にはフォージャーが開いた展示会の看板が光っていた。
「未来を創る、新しい命のかたち」──鮮やかなホログラムが空に浮かび、市民たちの関心を集めていた。
屋台のように並べられた透明なカプセルの中には、奇妙な小動物や観賞用のトピオワンダーが並び、子どもたちは歓声を上げて指を差していた。
その中央に立つのは、豪奢な外套を纏ったフォージャーの男・ダリオ。
濃紫の外套には鉄鋼の装飾が施され、赤茶の瞳は自信に満ちている。
「秩序に縛られる必要はない。未来は造れるものだ!」
彼の声に、市民たちは拍手を送る。
そのとき。
壇上に、一人の人物が姿を現した。
長い緑のコート、黒髪を束ねた落ち着いた立ち姿。
第三の眼が淡く光り、灰色に近い瞳が群衆を見渡す。
「……師匠……?」
クオンは群衆の後方で立ち止まり、息を呑んだ。
その姿は、かつて自分に暗黒物質の揺らぎを見せてくれた“師匠”ライラと瓜二つだった。
だが何かが違う。
眼差しに宿るはずの静けさがなく、作られたような均整の取れすぎた表情。
声も、どこか機械的に整えられた調子だった。
「私はライラ。未来を導く存在。
秩序を超えて、命を創り出す正義を広めよう。」
群衆がざわつく。
「ライラ……? 記録に残る名だ!」
「本当に生きていたのか?」
「奇跡だ!」
ダリオは笑みを浮かべ、群衆に向けて言葉を重ねた。
「見よ! これこそ我らフォージャーの力だ。
かつて失われた人物をも再現できる!」
クオンの灰色の瞳が揺れる。
目の前にいるのは“師匠”そのものに見える。
だが内心の冷静さが告げていた──これは偽物。フォージャーによって造られた模造体にすぎない。
リサが隣で歯を食いしばった。
琥珀色の瞳が怒りに燃える。
「市民を騙してる……!」
だが群衆は熱狂していた。
「造られた命でも構わない、奇跡を目にできたんだ!」
「秩序なんて必要ない、未来は造れる!」
秩序を信じる国家、市民の熱狂を煽るフォージャー、そして偽物の師匠。
クオンの正義はまたしても揺さぶられる。
「……師匠。なぜ俺の前に、偽物として現れる……」
都市の空に、歪んだ光が差し込む。
本物の真実を知るクオンだけが、この欺瞞を打ち砕く責任を背負っていた。