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既読
高校二年の春、クラスのグループLIOEに知らないアカウントが入ってきた。
名前はただの「既読」。
誰も招待していない。なのにメンバー一覧にいる。アイコンは真っ黒。
「誰これ?」
「バグじゃね?」
「先生?」
ふざけ半分でスタンプが飛び交う。
でも、そのアカウントは何も送らない。ただ、全員のメッセージに“既読”をつけるだけだった。
深夜二時。
俺のスマホが震えた。
——写真が送信されました。
差出人は「既読」。
開いた瞬間、喉が詰まった。
それは俺の部屋だった。
今、この瞬間の。
机の上の開きっぱなしのノート、ベッドに脱ぎ捨てたパーカー。
写真は部屋の隅、天井近くから撮られている。
俺はゆっくり顔を上げた。
天井にカメラなんてない。
換気口もない。
あるのは、白いシミだけ。
そのとき、また通知。
——写真が送信されました。
今度は、俺の“後ろ姿”。
画面の中の俺は、今と同じ姿勢でスマホを見ている。
つまり——撮っているのは、俺の“目の前”から。
背中に、息がかかった。
振り向けなかった。
通知音が鳴る。
——既読
画面いっぱいに、その二文字。
震える指でグループを開くと、クラス全員が同じ写真を送られていた。
「やめろよ」
「誰?」
「どこにいるの?」
そして、最後に届いたメッセージ。
——“次は、外から。”
カーテンの向こうで、何かが動いた。
風は吹いていない。
窓は閉まっている。
それでも、布がゆっくりと、内側に膨らんだ。
まるで、誰かが外から押しているみたいに。
通知が鳴る。
——既読
今度は、俺が送ってもいないのに。
俺のスマホから、クラス全員に写真が送信された。
そこに写っていたのは、
カーテン越しに、こちらを見つめる“目”。
俺は、まだ振り向いていない。
なのに、写真の中の俺は——
振り向いて、笑っていた。