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「ほんとに今日一日、世話になるけど……いいのか?」
夕暮れの路地を歩きながら、隼人は何度目かの確認をした。
「いいって。ばあちゃん、隼人来るの楽しみにしてたから」
大地はひらひらと手を振って笑う。
玄関を開けると、煮物の匂いと同時に弾む声が響いた。
「おおっ、隼人くんじゃないか! 待ってたよ!」
エプロン姿のばあちゃんが勢いよく顔を出す。
「こんばんは。お邪魔します」
隼人が軽く頭を下げると、ばあちゃんはにっこり。
「この前の体育祭の写真、近所のおばちゃんに自慢したら大ウケだったよ。あんたも男前だねぇ」
居間へ入ると、ちゃぶ台いっぱいにご馳走が並んでいた。
「これ全部ばあちゃんが?」
「そりゃあ隼人くんが一日いてくれるなら、腕を振るわないとねぇ」
「……俺だけのときはカレーだったのに」
大地がぼそり。
食卓が始まるや、ばあちゃんの“質問ラッシュ”が炸裂した。
「隼人くん、最近部活はどうだい? この前の試合、新聞に名前出てたね」
「得意科目は? 大地に勉強教えてやってるのかい?」
「彼女はまだ?」
矢継ぎ早の問いに、隼人は苦笑しながらも答えていく。
「えっと……勉強はまあまあで、彼女はまだです」
「ほほう、大地とおそろいか」
「ばあちゃん!」
大地が耳まで真っ赤になる。
食後、ばあちゃんは「男子だけで遊べ!」とトランプを持って登場。
二人は勝負に熱中し、笑い声が夜まで絶えなかった。
帰り際、ばあちゃんはお菓子の袋を隼人に持たせながら言う。
「また来ておくれよ。次は団子でも作ろうかね」
「ぜひお願いします」
隼人も素直に笑った。
家を出て並んで歩く帰り道。
「……ばあちゃん、やっぱすげーな」
「だろ? 俺でも負ける」
二人は顔を見合わせて吹き出した。
月明かりの下、ばあちゃんの声がまだ胸の奥に響いていた。