「家庭科の調理実習で料理対決をしよう!」
そんなノリで始まった放課後キッチンバトル。大地・隼人・萌絵・涼・柊の五人が、調理室でエプロン姿になった。
「テーマはオムライス!」
萌絵がホワイトボードに大きく書く。
「誰が審査するの?」と隼人。
「もちろん、作ったみんなで食べ比べ」
涼がクールに答えた。
「まずは玉ねぎのみじん切りから!」
大地が張り切って包丁を握る。が——
「おっとっとっとぉぉ!?」
ザクッ!
玉ねぎが床を転がる。
「大地、指!指!!」
隼人が慌てて手を押さえると、かすり傷。
「セーフ! 流血ショーにはならなかったぜ!」
「……そのテンション怖い」
と柊が呆れる。
大地は卵を割っても殻がどさり。
フライパンでは焦げ臭い煙がもくもく。
「これ、もはや科学実験」
と涼がぼそり。
「焦げオムは新ジャンルかも!」
萌絵は何故かキラキラ。
隼人はため息をつきつつ、さりげなく手を伸ばす。
「貸せ、大地。火は弱めて……玉子はこう、ゆっくり混ぜる」
「うわー、なんか頼れる!」
「お前が壊滅的すぎるだけだ」
隼人は文句を言いながらも、フライパンを自然に支えた。
柊は甘党魂を発揮。
「俺はデザート部門いく」
テーブルに並ぶのはホイップてんこ盛りのパンケーキ。
「これもうメインでいいよね」
と涼が感心。
試食タイム。
柊のパンケーキは文句なしの優勝。
隼人と大地のオムライスは――
「……意外といける!」
萌絵が目を丸くする。
「隼人補正だな」
涼が淡々。
「いやいや俺の“愛情スパイス”も入ってるから!」
大地が胸を張る。
「愛情スパイスねぇ」
隼人は苦笑しつつも、どこか嬉しそうだった。
笑いと焦げの匂いが残る調理室に、ゆるい達成感が漂っていた。
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