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15話 109スポット アイに会う
人の流れが、
最初から速い。
立ち止まる余地がなく、
身体が前へ押される。
リカは、
足元を確かめながら進む。
長めの上着。
袖は手の甲まで。
歩きやすい靴。
腰元で、
電子マネーのキーホルダーが
触れ合う音がする。
呼ばれる。
少し高い声。
振り向くと、
派手な服装の友達が
もう手を振っている。
動きが大きい。
表情も大きい。
髪は自由に揺れ、
アクセサリーが多い。
複数のキーホルダーが
まとめて付けられていて、
歩くたびに
留め具が鳴る。
「変わってないね」
リカが言うと、
相手は笑う。
「そっちこそ」
距離が一気に縮まる。
通路の端に寄り、
立ったまま話す。
近況。
学校。
引っ越し。
テンポが早く、
間ができない。
それが、
懐かしい。
「でさ」
少しだけ声が落ちる。
「ここはさ、
遊ぶには最高」
周りを見渡す。
店。
音。
人。
全部が動いている。
「でも」
一拍。
「住むなら、
別」
言い切り。
リカは、
すぐに頷く。
否定も、
驚きもない。
「だよね」
短い返事。
派手な友達は、
それを聞いて
満足そうに笑う。
「わかる人がいてよかった」
別れ際。
手を振る動きも大きい。
人の流れに、
すぐに溶ける。
リカは、
その背中を少し見てから、
装置を操作する。
番号を入れる。
確定。
音と光が切り替わる。
戻った場所は、
静かだった。
さっきまでの
にぎやかさが、
遠くなる。
住む場所と、
会う場所。
それが違っていても、
おかしくない。
リカは、
そう思いながら
歩き出した。
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