─時は18世紀のフランス、首都のパリにて。マリー・アントワネットこと史上最低の女王が制圧するパリの街の奥深くにある庶民の街に、とある幼き少女の父が長年営んでいるオルゴールの老舗があった。
「客…すっかり減っちゃったね」
父が作った曲が鳴る細かい弦のオルゴールを片手に、椅子に座りながら客を待っている父の横の椅子から、私は元気無さげに俯いた。
「…あぁ。そりゃあそうだ。」
少々枯れた声で、返事をする父。
「…」
私はその父が言いたい事を分かったように黙り込み、少し顔を上げてまた俯く。
時刻は午後5時。
オルゴールの老舗、
「スティアオルゴール」は今日も二人の親子しか居ない。
「私、まだまだ頑張るよ。バイトももっと良いとこ探す」
「これ以上はダメだ。」
父親が私の言葉を遮る。
「ッなっ…!?なんでよ!!」
私はその言葉を受け、椅子をガタッと言わせ立ち上がった。
「お前に無理だけはさせたくない。」
「そ、そんな事言ったって私達…!!」
「俺はもうすぐ死ぬ。俺の事は放っといてヘレン、自分の事だけを考えろ。」
そう。この父親は病名不明の病。
「…必ずお金貯めて医者連れてくるから。」
「俺の事は後回しで良い。」
「…頑固なんだから」
私は父に聞こえないくらいの音量でそう呟いた。
「ごめん、そろそろ稽古の時間だから行ってくるね。」
「おう。」
私は革鞄を持ち、家を後にした。
─いつもの街並み。
いつもの人々。
いつもの私。
. カトリック
いつもの教徒の公開処刑。
しばらく歩くと、木の看板に
【演劇団】(フランス語で)
と手書きで書いてある。ここの看板も劣化してきてそろそろ落ちてきそうで怖い。
そう。私は仕事として演劇の舞台をやっている。今日はその稽古に来た。
そしていつも通り私は稽古場の前の廊下に入る。
「ハロー!ヘレン!」
すると、真っ先に出迎えてくれたのは親友のローラ。
「ハロー、ローラ」
「いつもあんたは暗いねぇ〜」
「あんたは明るすぎるくらいよ」
「で、でも明るかったらな〜んでもできちゃう!」
「そして暗かったらネガティブになっちゃう!アーコワイコワイ」
「だからあんたは笑う方がいーの!ほら!」
彼女、ローラは私の口の横を指で上に上げた。
「あんた、笑わなきゃ損損!」
「わあうあら!えぇははひえよ!(笑うから!手放してよ!)」
「ん〜しょ〜がないなぁ〜」
頬がヒリヒリする。全く、力強いのよ。
「あんた力強いのよっ!お返し!」
そう言い、私はローラの顔をつねった。
何よこの子、頬がふにふにね…
羨ましくて余計に腹が立つわ。
「いでででででっ!」
「はなひてっては!(放してってば!)」
「しょおおぉ〜がないなぁぁ〜!もぉぉ〜!」
私は満面の笑みでローラの頬から手を放した。
「…ヘレン、貴方って情緒不安定…?」
「は?何言ってんのよ!?」
「え、だって最初と全くテンション違うじゃん!?」
「多分気のせい!ほら、練習行くよ!」
「えぇぇ〜!?」
そんなこんなでローラと共に稽古場へ足を運んだ。
「おはよう、ヘレン」
「おはようございます、師匠」
「あらやだ師匠なんてもぉ〜!うふふふ」
この人はここの演劇団の団長であり指導者。
いつもここに通う練習生達に稽古を付けている先生という立場の人。
始めに言った通り、今日は半月後の舞台の為、稽古をしにやってきた。
さて、約1時間半の練習頑張りますか。
二話へ続く
あとがき
年始早々初めてのノベル、如何でしたか?
私自身平均1000文字超える程度で書いていこうかなと思います。
まぁ、そのおかげで更新は亀だと思いますし、皆様が忘れた頃に投稿するかもですし。
とりあえず次回までお気長に待っててくださいな。
あ、いつの間にか1600文字に…
投稿日
2023/01/01 23:05:00
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