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──そして、数分後。
大地に穿たれたクレーターの底。
そこから、ずず……と赤い顔がのぞいた。
「……ぐ、うぅ……いったい……何が起きた……」
地面に首まで埋まった火竜が、呻く。
声は低いのに、どこか艶がある。
さっきの戦闘での会話といい、雌だ。
「あの理不尽な力はいったい……か、身体が動かん……」
私は屈みこみ、火竜の顔を覗き込む。
抜いた刀の切っ先を、その目の前に突きつけて、ニヤリ。
「あはは! 火竜さん!
これでチェックメイチョ……よ……」
「また見せ場で噛んでいくスタイル!
刀は強迫専用!もったいない!」
辰夫が叫んだ。実況席うるさい。
「ふふ……戦う私は美しい……さてと」
ピトッ。
私は刀の腹をゆっくり火竜の頬に当てる。
「お前の選択肢は二つ。私の配下になるか、死ぬかよ」
「噛んだのを無かったことにしている……」
火竜は怯えた。
刀よりも“噛んだのに何事もなかった顔で進行する
メンタル”に怯えた。
辰夫は必死な顔で、火竜へと小さく合図を送る。
(……いいからッ!頷いとけッ!死ぬぞ!!はやくッ!)
火竜は目を閉じ、身体の力を抜いた。
そして、諦めた声で言った。
「……竜王……リンドヴルム、か……」
火竜の視線が辰夫へ向く。
「……詰んでるな」
深く息を吐き、火竜は唇を歪めた。
「ふん……気に入ったぞ。
お前の狂った勢い……従ってやろうじゃないか」
「ふふ。よし。決まりーっと!
んッ! よいしょっと!」
私は地面に埋もれた火竜の首根っこを掴み、
ずぼっ、と引き抜いた。
土と岩とプライドが一緒に剥がれ落ちる。
「よし! お前の名前は?
私はサクラ、こいつは辰夫よ」
私は汚れた手をパンパンと叩く。
「え……リンドヴルムが……え? た、辰夫……?
わ、私はヴァヴ族のヴァルヴリーナよ」
「はい、うるさい!
【ヴ】が言い難いから“辰美”な?」
「えぇ……?」
火竜は呆然とした顔。
「……」
隣で辰夫が黙り込み、下を向いて震えている。
そんなこんなで、火竜は辰美として配下になった。
──その時である。
(♪テレレレッテッテッテー)
脳内に鳴り響く、どう考えても世界観を破壊する効果音。
天の声は今日も元気だった。
【サクラのレベルが295に上がりました】
【新称号を獲得しました】
・火竜を従えし者
【エクストラスキルを習得しました】
・紅葉(*なんか格好いいやつ)
→ 全身に火を纏います。火属性になります。
ただし、使用時は燃えてるのでめちゃくちゃ熱いです。
長時間使用すると焼死しますのでご注意ください。
「ざけんな! 絶対使わんわ!」
【進化候補】
・スキル《光合成》:進化可能です。
・スキル《体温調節》:進化可能です。
・スキル《冬眠》:進化可能です。
*ちなみに周囲も静かに期待してます。笑いたいので。
「だから進化しねーよッ!!」
私は空に向かって指を突き立てた。
──
「……ん?」
私は辰美が埋まっていた穴を覗き込んだ。
土の割れ目から、水がじわりと滲み出している。
「お……んー……? ……あッ?」
背筋がゾワッとした。
これは、温泉の気配。
勝利の香り。
湯上がりビールの未来。
「……た、辰夫!
ちょっとこっち来て! はやくはやく!」
「あ、はい。どうしました?」
辰夫が近寄ってきたその瞬間。
「辰夫スクリュー☆サクラ式ーッ! どっせーい!」
私は辰夫の右足を掴み、内側に捻りながら倒れ込む。
回転。遠心力。理不尽。三拍子。
ギュルルルルッ!
ズドンッ!
「ぐはぁッ!」
辰夫はうめき声を上げ、
錐揉み回転しながら穴の底へと突き刺さった。
「え……仲間……じゃ……なかったの……?」
辰美がガクブルした。
辰夫の刺さった地面から、さらに水が湧き出す。
湯気が立つ。これは……。
「サクラ殿……これはお湯ですぞ……」
辰夫が瀕死の声で言った。
「やっぱり!? これ下に温泉があるんじゃない?」
私は目を輝かせた。
「よし! 辰夫! もう一回やろう!」(わくわく)
「ゲーム感覚みたいに言ってる! 無理です!」
「じゃあ辰美! はやくはやく!」(わくわく)
「いや、今はちょっとお腹が痛くて……」
「じゃあお前たちが掘れッ! むきー!」
私は地団駄を踏んだ。
「「……はい。」」
辰夫と辰美が、渋々穴を掘り始めた、その時。
先ほどの冒険者たち三人が、恐る恐る近寄ってきた。
「あ、あの……」
「なんだ居たのか三馬鹿」
私は即座に噛みついた。
「感謝しろよ? 私が助けなければ死んでたんだからな?
金輪際、私に足を向けて寝るなよ?
私はどこに居るか分からないだろうから?
毎日逆立ちして寝ろ!」
「「「ありがとうございました!」」」
「え? ん……あ、はい」
私は完全に意表を突かれた。
相手が礼を言う文化、存在したんだ。
「その強さに惚れました!
俺たちも姐さんの配下にしてください!」
「え? いや……要らない……」
私は最高に不満な顔で即答した。キッパリと。
「ぜ、絶対に役立ってみせます!」
「……まぁ、人間の配下が居ても良いか」
私は適当に折れた。
「よし。お前たちの名前は?」
「スヴィーヴです!」
「セヴァスヴァンです!」
「ヴァイヴゥヴルムです!」
沈黙。
カラスが鳴き、足元をアリが通る。
「だから! 【ヴ】が言い難いんだわ! お前らワザとだろ!! 親を連れて来い!!!」
「「「親は関係ありません! 親の悪口はやめてください!」」」
「あ……そ、そうだよね……ごめんね……今のは私が悪い……」
私は一瞬だけ反省した。
「じゃあお前たちはイチロー、ジロー、サブローな」
「「「えぇ……」」」
「サブローの【ブ】は良いのか……」
辰夫が混乱していた。
「まずはそこのドラゴン達と穴を掘ってこい」
「「「えぇ……」」」
◇◇◇
「もう腕が限界ですぞ……」
辰夫が呻く。
辰美もイチローもジローもサブローも、
もはや目が死んでいた。
「じゃあ辰美! お前のブレスで吹っ飛ばせ!」
「えっ!? 温泉ごと蒸発するかも……」
「いいからやれッ! 世界は広い!」
「ひぃっ!!」
ズゴォォォォォォッ!!
辰美がノーモーションでブレス。
なるほど。辰美はやればできる子。
ブレスの煙、土埃が晴れる。
……。
全員が固唾を飲んで穴を覗き込む。
そこには──
ゴゴゴゴゴ……
赤々と燃えるマグマが見えた。
「これ、マグマですぞ!?噴火寸前だったのでは!?」
辰夫が青ざめる。
「掘りすぎた!?危なかった!?」
辰美が叫ぶ。
「……あ、これお湯じゃなくて地獄湯だね」
私はマグマを見つめる。
*
──そして数時間後。
マグマから100メートル離れた場所で、
二匹と三人は、ついに温泉を掘り当てた。
全員、もはや目に光がなかった。
(つづく)
──【現在の魔王軍ステータス(天の声調べ)】──
★火竜・辰美の現在のステータス
・名前:辰美(本名:ヴァルヴリーナ)
・種族:竜属(火竜/フレイムドラゴン)
・レベル:250
【称号】
・火竜(成長補正[大]/エクストラスキル解放)
【スキル】
・体力増強(Lv125)
・魔力増強(Lv125)
・物理・魔法耐性(Lv125)
・炎耐性(Lv250)
・ブレス(炎)
【エクストラスキル】
・光焔(自身の火力を大幅に向上)
・炎の風(味方に火属性付与&火耐性上昇)