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届いた荷物を開けた私は、驚きのあまり目をパチクリさせて、そっと手に取った。
姿見の前で身体に合わせてみる。
それから、スマホを手に取った。
「お兄ちゃん、ありがとう!」
『どういたしまして。誕生日おめでとう、るり』
「ありがとう」
『近々帰国するから、また連絡するな』
「うん、待ってる。身体に気をつけてね?」
『ああ、ありがとう』
誕生日の前夜、私は心から兄に感謝した。
明日の鴻上さんとのデートに着て行く服を選んでいた私は、そもそも最近服を買っていなかったから明日買いに出ようと思っていたのだから、満足のいく服がないのは当たり前なのだと気がついた。
服を買いに行く時の為の服が欲しい。
いや、それ以前に、鴻上さんと一緒に服など買いに行けるはずがない。手に取る服でサイズがバレてしまうではないか。
見た目でバレているにしても、彼の前で試着して、店員さんに「ワンサイズ上はありますか?」なんて聞けない。
アラサーでもデブでも、恥じらいはあるのだ。
仕方なく、ベージュでシフォン生地のブラウスと黒のプリーツスカートにしようと思った時、それが届いたのだ。
ネイビーのノースリーブのワンピースに、白のサマーニットのロングカーディガン。
ワンピースの脇がレース素材になっていて、涼し気だ。裏地はついているから、下着が透けることもない。
縦の重ね着で細見え効果もありそうだ。
服装の心配がなくなり、私は安心して眠りについた。
翌朝は、鴻上さんが十時に迎えに来てくれた。
私がアパートを出ると、脇の駐車場に停まっている白い車の運転席から、鴻上さんが出て来た。
「おはようございます」
「おはよう」
彼は助手席のドアを開けてくれる。
「さ、乗って」
「ありがとうございます」
鴻上さんと車で出かけるようになって、時々こうしてドアを開けてくれるのだが、未だに慣れない。
だから、つい彼より先にドアを開けようとしてしまう。
今日はそういうわけにいかず、私はおずおずと助手席側に足を進めた。
すっと胸の前に手を差し出され、思わずじっと見てしまった。
「ちょっと高さがあるから気をつけて?」
手を掴めということらしいが、こんなエスコートをされたことがない私にはハードルが高く、手をあげられない。
「そんなに緊張しなくても」
フッと笑った鴻上さんが、私の手を取る。
「どうぞ」
な、慣れている……!
「ありがとうございます……」
ドッドッドッドッと心臓が大太鼓を叩く叩く。
車に乗るだけでこの調子では、帰る頃には私の胸骨は心臓に突き破られているかもしれない。
「まずはどこに行こう?」
運転席に乗り込んでシートベルトを締めると、聞かれた。
「お店の名前でわかるかな……」と言いながら、ナビのボタンを押す。
車を出してもらえると聞いて、私は当初予定していたカフェに行くのをやめた。
せっかくだから、車でなければいけないカフェレストランに行きたくなったのだ。
テレビや雑誌でも紹介されている人気店だから、ダメもとで予約の電話をしてみたら、ちょうどキャンセルが出たからと受け付けてくれたのだ。
私は店の名前を伝え、鴻上さんがナビに打ち込む。
さすが人気店なだけあって、店名だけでナビが理解した。
「すみません、ちょっと遠いんですけど」
「全然? 天気もいいし、ドライブも楽しいよ」
晴れた夏の休日に、爽やか極上イケメンの笑顔が見られるなんて、今日の誕生日が命日になっても悔いはないかもしれない。
スーツ姿しか見たことがなかったけれど、今日の鴻上さんは白のVネックのリブニットに、黒のスラックス、後部座席に黒のジャケットが見えた。
髪も、いつもは前髪を後ろに流してジェルかワックスでツンツンさせているのだけれど、今日は全体的に無造作に下ろしているから、サラサラで少し若く見える。そして、ちょっとやんちゃな感じ。
ヤバい。
めちゃくちゃ格好いい――!!
漫画なら、間違いなく私の胸に『キュン!』の文字がのっている。
失礼にならないように、けれどかなりがっつり見ていると、気が付いた。
どことなく、専務に似ている気もしない。
そう思うと、気になり出す。
私は運転する彼の横顔に問いかけた。
「あの……」
「うん?」
「鴻上さんと専務って、どういったご関係なんですか?」
「あれ? 言ってなかったっけ? 従兄弟だよ。母方の従兄弟」
「従兄弟!? ――ってことは、鴻上さんも奥山商事の創業者一族ですか!?」
「一族……ってのは大げさだけど、まぁ、うん、そうなるかな」
彼はハハハと笑う。
いや、笑い事じゃない。