テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
1,325
「繋がらない…お仕事が忙しいのかな」
希空さんの家庭環境についてはあまり知らない。深く踏み込むことがない私の性格を今になって恨んだ。
「ごめんね希空さん。連絡が繋がらなくて…これから嵐になりそうだし、家まで送ってくよ?」
希空さんは何も言わず、縁側に立っていた。
「希空さん…?」
心配になり、近くへ行く。
「希空さん、だいじょ…」
「捨てられたんですよ。きっと」
思いもよらない言葉に喉が詰まった。何も言えない私を傍らに、希空さんは続けた。
「自分が、こんな中途半端な人間だから。だから捨てられたんです」
雨が降り始めた。閉めてあるガラス窓に打ち付ける雨の音は、希空さんの心をあらわしているかのようだった。
「中途半端な人間ってなに…?捨てられたって…」
「だからアンタも家族もスクールのみんなも!!みんなみんな、大っ嫌いだ!!」
「ま、待って!」
外へ走り出した希空さんを追いかける。激しく降る雨が体を打ち付けた。
曲がり角からやってくる車に気づかず、希空さんは思わず足を止めた。私は手を伸ばす。絶対に守らなければいけない。そう思うから。
「ッ…希空さん!大丈夫!?怪我は…なさそう。だけどこんなに濡れてたら風邪をひいちゃう。早くスクールに…」
「なんでっ、なんで死なせてくれないの…?」
雨と混ざって、涙なのかがわからないけれど、希空さんの体は震えていた。
「泥だらけになっちゃったね。シャンプーとかは書いてあるから好きに使ってね。湯船は肩まで浸かって、しっかり温まって」
一通り説明を終え、希空さんをお風呂に入れる。濡れた服は洗濯と乾燥をしているけど、1時間はかかりそうだ。代わりに私の服を持ってくる。
今までで1番希空さんの心の声が大きかった。中途半端な人間という聞きなれない言葉は、私の心を締め付けると同時に、彼女の心も締め付けたはずだ。
「あの傷、あの子に何があったの…?何をしたの…?」
私はもう一度、親御さんに電話をかけた。希空さんの体にある傷について聞くために。
─希空sideー
白に統一されたお風呂場は、外の雨音を綺麗に響かせていた。先生に促されシャワーを浴びる。あんなに怒鳴ったのは久しぶりだ。喉が痛い。頭も痛い。
もう隠し事も通用しない。あの人は私の家の事実を知ってしまっただろう。逆に、なぜ今まで知らなかったかが気になる。私たちに興味がないのだろうか。
洗い終わり、湯船に浸かる。温かく、優しい水だ。体の芯からほぐされていくように、私は脱力していった。
あの人を信用してもいいのだろうか。あの人だけは私を中途半端な人間だと思っていない気がする。だけど、理性ではわかっていても本能がそれを恐怖で踏み止めてしまう。過去の経験から私が人間であることも、信用することも拒絶する。
「中途半端だな…」
あぁ、バカバカしい
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!