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25 - 第21話:恋レアオフラインデー

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2025年09月29日

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第21話:恋レアオフラインデー

その日は、全国の話題が“恋レアのない一日”に集中していた。


レンアイCARD株式会社が打ち出した特別企画――「恋レアオフラインデー」。

サーバーを丸一日停止し、カード使用やアプリログインが完全に無効となる初の試みだった。


“カードなしでも、あなたの恋は動くか?”


そんな挑発的なキャッチコピーが街のビジョンに映し出され、SNSでは「#恋レア休みます」のハッシュタグがトレンド入りしていた。


その日の朝。

天野ミオは制服のリボンを少しきつめに締め、髪をひとつにまとめて学校に向かっていた。

白いカーディガンを羽織り、前髪は分けていて、顔全体が明るく見える。


スマホは持っていたが、アプリは開けなかった。

手のひらが軽いと感じたのは、恋レアが動かないからだろうか。


教室では、あちこちで手持ち無沙汰な声が上がっていた。


「何していいかわかんない」「目が合っても、演出できないんだよね」

「カード使わないと、不安になるなんてさ……」


普段からスコア上位だった大石リノも、今日はメイクをいつもより控えめにしていた。

制服のリボンはそのまま、髪型だけ巻かずに結んでいた。

彼女はミオに声をかけず、席で静かに日記をつけていた。


昼休み、校庭では静かな風が吹いていた。

いつもなら《接近演出》や《偶然の視線》が飛び交うエリアにも、誰もカードを使っていなかった。


その中心にいたのが、大山トキヤだった。


今日はパーカーの代わりにシャツ一枚。

ネクタイもジャケットも着ていない。

彼はポケットに手を入れたまま、校庭の隅に立っていた。


ミオは、ゆっくりとその場所に近づいていく。


誰も使わないからこそ、ふたりの距離は自然だった。


話さなくても、伝わるものがある。

目をそらさなくても、心が逃げない。

カードなしで生まれる空気は、不安だけど、確かに“自分のもの”だった。


トキヤはふと、ポケットから何かを取り出した。

それは、折りたたんだ白い紙だった。


彼は言葉ではなく、それをミオに渡した。

そこには、鉛筆で書かれた一文だけが記されていた。


ミオはそれを受け取り、黙って読んだ。

その瞬間、アプリの通知も、カードの発動もなかったが、心の奥で何かが静かに響いた。


“今日の恋は、何も演出できない。でも、誰にも消されない。”


ミオはその紙を丁寧に折り、制服の胸ポケットにしまった。


オフラインの一日が終わっても、そこにあった気持ちは、何も失われなかった。

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