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「はやくっ! ミナト! 息してない!」


海中からサリナを引き上げると、アリサは蒼白となり俺に怒鳴った。


「ったく、この馬鹿は! どうして、戦いと関係ないところで死に掛けてるんだよっ!」


俺は砂浜に膝を着くと、気道を確保し、見よう見まねで人工呼吸をする。


昔、保健体育の授業でやったきりなのだが、それでも興味をもって受けていたからか、割としっかりやり方を思い出すことができた。


『大事なのは強く押すことです。弱いと効果がありません、あばらを折るくらいの気持ちでちょうどいいです』


「サリナ、死ぬんじゃないぞ!」


俺はサリナの服をはだけさせると胸の上に両手を置くと心臓マッサージを行った。


――ボキッバキッベキッ!――


嫌な音がするが、今はそれを気にしている時ではない。なんとしてでも成功させなければ、サリナはこのまま何も語ることなくいなくなってしまうのだ。


心臓マッサージを止め、今度は息を吹き込む。

この動作を何度も続けるのだが、蘇生が可能なのは溺れてから数分以内と言われている。


今だけは、アリサのことを気にする余裕すらなく、俺はひたすら蘇生を試みた。


だんだんと焦りが大きくなる。

何度繰り返しても、サリナはピクリとも身動きすることはなく、時間だけが過ぎていく。


今、どれだけ時間が経っているのか知るのが怖かった。

もはや手遅れなのではないか。なぜもっと早くにサリナがおぼれていることに気付かなかったのか、なぜ彼女を疎んで置いてきてしまったのか……。


体感ではなく、確実に数分が過ぎた時、俺はもうサリナが助からないことをしる。


「サリナ……」


呼び掛け、唇を重ね息を吹き込む。もはやこれ以上は無理なのだと判断し、俺が顔を上げようとしたところ……。


「……っ」


目の前で膨大な『オーラ』が立ち昇る。俺は驚き、慌てて唇を離そうとするのだが……。


――ガシッ――


いつの間にか後頭部を掴まれていた。


「んっ!? んんっ……!?」


口がこじ開けられ舌が入り込んでくる。サリナの強力な力により抑えつけられており逃げることができない。


サリナは目を開けると逃げようと身体を離す俺を押し倒し、胸を押し付けてきた。


胸に感じるサリナの柔らかい胸の感触と、口を蹂躙する舌。俺は混乱の極致となり、次第に酸素がなくなり意識が朦朧としはじめた。


「いい加減にしろっ!」


「あたっ!」


アリサがサリナの頭を杖でぶん殴った。サリナの舌が引っ込み、俺はようやく彼女から離れることができた。


「な、何をするんすかぁ!」


後頭部を押さえ、涙目になりながらアリサに抗議をするサリナ。


「何をするんじゃないわよっ! 誰に断ってミナトにキスしてるのよっ!」


「だって、コウからしてきたんすよっ! これは、リヴァイアサン討伐に貢献した私への御褒美に違いないと思ったっす!」


「そんなわけあるかっ! あんたが溺れてたからでしょっ!」


蘇生するなりやかましい奴だ。だが、どうにか間に合った……。


「う、コウ? どうしたっすか? いつもならここで私にゲンコツを落とすところじゃ?」


サリナは訝しむと俺の目を見てくる。ここまで単純だと、それすらも面白いと感じた。


「ははは、いや。ちょっと吹っ切れたというか……」


身体から力が溢れてくる気がする。これまでよりも世界が違って見えた。


「へんなコウっすね……?」


首を傾げるサリナの頭を俺は、そっと撫でるのだった。






「このたびは、うちのサリナが御迷惑を……」


ナブラ王国王城に戻ると、国王以下その場の人たちが一斉に土下座をした。

ちなみに土下座はこの国では最大の謝罪だと伝わっている。


過去に転移した日本人がそう広めたからだ。


「今回はとうとうリヴァイアサンまで……。流石に見逃せない、サリナは一生幽閉の身分とする」


「そ、そそそそそ、そんなっ!?」


ショックを受けるサリナ、国家が封印していたモンスターを解き放ったのだから弁護の予知がない。


「こちらが決めた婚姻相手との間に子をもうけ、一生自由はないと思え」


本来なら死刑になっても仕方ない所業をしたのだ、誰も庇うこともせず、その場は静まり返っていた。


「一つ、よろしいでしょうか?」


「おお、何だ? アタミ=ミナト?」


ナブラ王国国王も、俺に対しては話を聞いてくれるらしい。


「先程、サリナは幽閉となりましたが、それは承諾しかねます」


「なぜかな?」


「俺はサリナと『オーラ』を習得するまでの契約を結んでいるからです。ここで離ればなれになってしまえば永遠にその機会を失ってしまう」


「む、むぅ……だがしかし……」


「さらに言うなら、リヴァイアサンは俺とアリサとサリナの三人で倒しました。場所が離島で他に被害もなく。もし、俺の力を知っていたら依頼をされていた可能性はありませんか?」


「いや、それは結果論では? 確かに、ミナト殿の実力をしれば封印されたモンスターの処理を頼んだかもしれない。だが、それはもっと万全の状況を作っていたはず。無意味にリスクを引き上げたサリナに罰を与えるのは当然かと」


「万全な状況とは? アリサがいてサリナいるからこそ俺はリヴァイアサンを討伐した。これこそが万全で挑んだという事なのでそれでいいでしょう?」


ここで引くつもりはない。俺はナブラ国王から目を離さなかった。


「はぁ、確かに筋はそちらが通っている。望みはなにかね?」


「サリナを連れて行く。こいつとの契約はまだ済んでいませんから」


「コ、コウ?」


驚き、目を大きく開いたサリナがじっと俺を見ている。


「俺についてくるか?」


サリナは次の瞬間俺に抱き着くと。


「一生ついて行くっすっ!」


目に涙を浮かべそう言った。








「あーあ、せっかくミナトと二人きりだったのに……」


アリサが愚痴をこぼす。彼女には申し訳ないことをしたが、あのままサリナが幽閉と言いつつ裏で処刑されるのを俺は見過ごすことができなかった。


「ふふふん、コウから誘ってくれたっす。いよいよ私もコウに身体を許す時がきたっすね」


サリナはそう言うと俺に身体を寄せてくる。


「ああ、いや。そっちは断るぞ。俺はアリサに愛を誓っているからな」


「なんでっすか! 『オーラ』が欲しくないんすか!?」


俺がそう答えると、サリナは目を大きく見開くと「力が欲しいか?」と迫ってきた。


「その、オーラなんだけどな――」


俺は内側を意識すると、全力で『オーラ』をひねり出す。


「な、ななななななっ! なんで、コウ……『オーラ』を!?」


驚くサリナに、


「実は、人工呼吸をしている時に何度も唇を合わせただろ? あの時になぜかできるようになったみたいだ」


最後に、サリナから微弱なオーラが立ち昇ったのだが、それを受けて俺のオーラが溢れんばかりに覚醒した。


「なんすかっ! 結局コウは私のこと好きじゃないんすねっ!」


騙されたとばかりに、前を歩くサリナ。拗ねているようで怒りながら離れていく。


「あの娘本当に馬鹿ね、ミナトが自分のこと好きじゃないなんて。だったら『オーラ』を得てる今連れてい来るわけないのに……ね?」


アリサからの視線が痛い。アリサは恋人としてずっと傍にいて欲しいが、サリナは手のかかる妹のようでやはり一緒にいたいと思ってしまう。


「すまん、アリサ」


俺はアリサに謝ると、


「仕方ないわよ。そう言うあんただからこそ私も惚れたわけだし」


アリサは溜息を吐くとすがすがしい笑顔を見せた。


「そう言えば、あんた、オーラなしにこの世界最強クラスのリヴァイアサンを倒したのよね?」


「そう言えばそうだな?」


三人かかりな上、何度も何度もエリクサーを飲んだとはいえどうにか勝つことができた。


「じゃあさ、オーラを手に入れた今のあんたなら、敵なしなんじゃないかな?」


そう言われてみればそうかもしれない。オーラで消耗する力もエリクサーで回復できることを考えると、攻守ともに最強の力が備わっていることになる。


「ふふふ、私の旦那様は世界最強かぁ。悪くない気分ね」


アリサはそう言うとサリナを追いかけていく。


「いつの間にか、俺、そこまで強くなったんだな……」


身体から立ち上る『オーラ』をみて、自分がこの世界で最強の存在になったのだと気付く。


「でもまぁ、まだまだ苦労は絶えなさそうだけどな……」


前の方で言い争いをするサリナとアリサを見て、俺も彼女たちを追いかけていくのだった。

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