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12 - 第9話:揺れる証言

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2025年11月29日

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第9話:揺れる証言
クオンは、古い図書館の跡地に足を踏み入れていた。

壁は崩れ、窓には鉄鋼の補強が施されている。

人々が去ったこの場所は、オーバーライターたちの非公式な集会所になっていた。


奥の机に腰を下ろしていたのは、ひとりの老人だった。

白髪を肩まで伸ばし、皺の深い顔に痩せた体つき。

着ているのは色あせた茶色のローブで、袖口は擦り切れていた。

額の第三の眼は衰えながらも赤紫に微かに光り、長年オーバーライターを続けてきたことを示していた。


「……お前がクオンか。」

老人の声は低く掠れていたが、よく通った。

「師匠を探していると噂で聞いた。」


クオンは頷き、灰色の瞳を老人に向けた。

「彼女──ライラは、本当に“管理できない未来”に触れたのか。」


老人は少しの間沈黙し、指先で机をなぞった。

やがて視線を上げ、その第三の眼を開いた。

「見たのだよ。あの女は、過去に介入した。

消えるはずの都市を、無理に“延命”させたことがある。」


クオンの心が揺れる。

「……延命?」


「未来を修正するのではなく、壊れる歴史に抗った。

その都市は数年だけ命を得たが、やがて崩れ、存在自体が記録から消された。」


老人は目を細める。

「国家はその事実を抹消した。だが、私は見ていた。

ライラは、“管理できない未来”を見せつけたのだ。」


廃墟の外から、市民の喧騒が微かに聞こえてきた。

市場では今日もフォージャーが新しい小動物を売り、広場では国家の修正報告が流れている。

人々は誰一人として疑わない──未来も過去も必ず管理できると。


だが、クオンの胸の奥には確信が芽生え始めていた。

師匠は、社会の絶対的な思想に逆らっていたのだ。


「……ライラは、何を見たんだ。」

呟くように問うと、老人は苦笑した。

「それは、お前が追い続けるしかない。

だが気をつけろ、国家はすでにお前を監視している。」


クオンの灰色の瞳が強く光った。

師匠の残した痕跡は確かにあった。

それは、彼をさらに孤独な旅へと突き動かしていく。





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