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由天。
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58話 重さのある記憶
放課後。
1450スポット。
図書館と閲覧広場。
奥の区画。
人が少ない。
床は石。
足音が低く返る。
そこに、
巨大な石が置かれている。
角は削られ、
表面は滑らか。
背より高く、
幅もある。
近くに立つ係の人。
背筋が伸びている。
服は動きやすく、
袖口に糸の補強。
「これが、メモリ石です」
声は小さい。
でも、
はっきりしている。
リカは、
少し前に出る。
肩までの髪。
前髪は目にかからない。
両手は後ろ。
「重いね」
ぽつり。
係の人は、
うなずく。
「重いほど、
たくさんの状態を
持っている」
石に、
そっと手を置く。
冷たい。
軽く叩いても、
動かない。
「覚えている量が、
そのまま重さになる」
石は、
考えない。
選ばない。
ただ、
預かっている。
新聞。
本。
記録。
誰かの言葉。
全部が、
ここにあった形。
リカは、
想像する。
これを運ぶ人。
置く人。
確かめる人。
簡単じゃない。
でも、
誰かがやっている。
だから、
ここにある。
係の人は、
一歩下がる。
「忘れられないものは、
重くなるんです」
リカは、
石を見る。
重い。
でも、
嫌じゃない。
大事なものは、
軽くならない。
そういう決まりみたいに、
そこにあった。
帰り際。
リカは、
もう一度だけ、
振り返る。
巨大なメモリ石は、
何も言わず、
そのまま、
そこに立っていた。