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スパイがバレてクビになった美香の、逆恨みが恐ろしい....😱 良だけでなく、楓ちゃんも心配です。 一樹さん、しっかり守ってあげて!!!
誰も、被害に遭いませんように😱💦💦💦
一樹さんったら楓ちゃんを溺愛しそう🤭 そして段々きな臭い事実が判明してきた💦 クビになった美香が逆上しないかが心配😨😨 皆様同様「田代ひさし」に私も吹いた🤣🤣マリコ様絶妙な名前凄いです👏👏
話し合いを終えた一樹と楓は、良達と別れてタクシーでマンションへ向かった。
「今日はありがとうございました。一緒に来てもらってすごく心強かったです」
「うん、お兄さんと仲直り出来て良かったな。まあお兄さんが楓にした事は許せる事ではないけどなぁ……」
「はい。ただ久しぶりに会った兄はなんだか昔の……まだ両親がいた頃の兄に戻っていたような気がしました。毒気が抜けたっていうんでしょうか? だから少しホッとしました。一緒にいてくれる栄子さんのお陰なんでしょうか?」
「彼女はまだお兄さんの事を愛してるんじゃないのか?」
「そう思いますか?」
「うん。俺にはそう見えた」
「フフッ、やっぱりそうなんですね」
楓はなんだか嬉しくなる。
施設にいた頃から楓は優しくて頼りになる栄子をずっと慕っていたので、もし姉が出来るなら栄子がいいと思っていたからだ。
そこで楓は少し緊張しながら気になっていた事を聞く。
「あの……さっき兄に言っていた事は……本当ですか?」
「ん?」
「その……結婚がどうとか……」
「ああ、本当だ」
「それってもう決定事項ですか?」
「だな」
「わ、私の意志や気持ちなんかは……関係ないって事なのでしょうか?」
楓は自分の気持ちが蚊帳の外に置かれている事に気付き、思い切って一樹に聞いた。
「ん? 楓は嫌なのか?」
「嫌とかそういうんじゃなくて……いつの間にそんな事になったのかなぁって……」
すると一樹は楓に魅力的な笑顔を向けて言った。
「ハハッ、楓は除け者にされたのが気に入らないのか?」
「いえ、そうじゃなくって……」
「じゃあなんだ?」
一樹が楽しそうに言った。
その顔は子犬のように無邪気な笑顔だったので、楓はつい見とれてしまい頭が真っ白になる。
そして自分が何に不満を持っていたのかさえ忘れてしまう。
(何でだろう? あの笑顔を見ていたら全ての不満が一瞬にして消えてしまう……)
楓は恥ずかしさのあまり、慌てて視線を窓の外に向けた。
その時一樹が楓の手を握ってこう言った。
「心配するな。俺は楓を生涯大切にするし命をかけて守るから……だから楓は俺の言う通りにしてればいい」
その有無を言わさぬ強引な物言いは、今の楓にはとても心地良く感じた。
楓は束縛される事が嫌いなはずなのに、なぜか嫌じゃないと思っている自分に気付く。
(この人を信じてみようかな?)
そんな風に思いながら、楓は手のひらに伝わる一樹の体温をその手で受け止めていた。
翌日、一樹は藤城コーポレーションの会長室で雅則と話をしていた。
「田代久幸は与党議員の田代久(たしろひさし)の息子だろ? あの政治家はあまり良い噂を聞かないが?」
「はい。昨年も愛人問題で世間を賑わせたばかりで、前妻と離婚した後は愛人の元グラビアアイドルと再婚しましたし…」
「国策よりも私生活の方に一生懸命みたいだな? それに政治家としてもかなりきな臭い噂があるみたいだしな」
「はい。親族企業に政治資金を横流ししているのは有名です」
「あの政党は昔から梅島と繋がっている事で有名だからなー」
「ざっと調べたところによると、息子の久幸が大学時代に起こしたレイプ事件も梅島に揉み消してもらったみたいですね」
「チッ、梅島も落ちたもんだ。国会議員の息子のケツ持ちなんかしやがって」
「本当にそうです……」
「ところでその保険会社に勤めている女性……..えーっと」
「立花栄子さんですか?」
「そうそう。彼女に保険金に関する話をもうちょっと聞いてみてくれないか? 梅島は多重債務者に多額の保険金をかけて自殺に見せかけて殺すというやり口で有名だ。その情報を手に入れて愛宮署の瀬尾君に流してやれ。きっと泣いて喜ぶぞ」
「わかりました」
「あとは……『グリシーヌ』のスパイの件だが……」
「スパイが誰かわかったんですか?」
「うん、レミが突き止めた」
「誰です?」
「一樹、驚くなよ……スパイは美香だ」
「____美香が?」
一樹は驚いていた。
「美香には針の痕もなかったですし、さすがにシャブは……」
「いや、鼻から吸引していたんだろう。おまえが鋭いから美香は相当気を付けてたんだろうな」
「…………」
その時一樹はある事を思い出していた。それは美香と会う際、急に呼び出すといつも断られていた事を。
てっきり先客がいるのだろうと一樹は思っていたがそうではないようだ。おそらく美香の身体にはまだ薬が残っていたので断っていたのだ。
思えば美香はセックスの最中に異様にテンションが上がる事が多かった。ハイになったかと思うと急にズーンと堕ちる。そしてセックスの後はいつも死んだように眠る。その後目が覚めるといつも怠そうにしていた。
あれは今思えば薬のせいだったのかもしれない。
(チッ……あの頃から既にシャブ漬けだったのか……)
一樹は一瞬イラっとしたが、美香はただの遊びの女だったのでそれ以上の思いは特になかった。
美香に何かの情報を漏らした記憶もないし、特に心配する事もない。
「で、レミさんは大丈夫でしたか?」
「ああ、大丈夫だ。あいつは思ってた以上に有能だよ。周りにぜんぜんバレずに情報を入手したんだからなぁ」
雅則は嬉しそうに笑う。
「それはお見事です。で、美香は?」
「昨日クビにした。もう店には来ないから安心しろ。今後は一切関わるな」
「わかりました」
プライドの高い美香が突然首を切られたとなると、逆上して何をしでかすかわからない。
薬をやっていればあれこれと被害妄想が膨らんで大事件を起こさないとも限らない。
一樹はその点が少し不安だった。
「で、結局楓ちゃんの兄貴も商社を辞めたんだよな?」
「はい」
「インサイダーの情報を流さないままバックレたと知ったら、梅島が黙っちゃいないだろうな。心配だからしばらく護衛をつけてやれ」
「わかりました。お気遣いありがとうございます」
「うん、まあお前の大事な人の兄貴なんだから、しっかり守ってやれよ」
「はい」
「それと梅島の件についてだが、どうやら本家の若頭が奴らと繋がっているみたいなんだ」
「やっぱり……俺もそんな事だろうと思っていました。もちろん美香もですよね?」
「ああ。まあちょうどいい機会かもしれないな。このチャンスに梅島を一掃してうちのシマに平和を取り戻すか……」
「承知しました」
そこで二人は顔を見合わせて意味深にニヤッと笑った。