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「着いたーッ!」
蒼弥はバスを降りると大きく伸びをした。合流地点までのしりとりで頭を使って疲れたからか、はたまた早起きによる寝不足がここに来て影響してきたのか、彼はそこからはほとんど寝ていた。…と、いうのが事実なのかはわからない。なぜならこれは周りの席の奴からそう聞いただけであって、実際俺も寝ていたからだ(キリッ✧︎)。
まぁそんなぶっちゃけどうでもいい話は一旦ここに置いておくとして…あ、落としちゃった(???)。気を取り直して、俺たちが今いるのは県立の森林公園。ここいら一帯の山々が公園として指定されており、園内にはハイキングコースやキャンプ場、ロッジなどがあり、観光客からもそこそこの評価を頂いている。そして俺たちにまず課せられているのは飯盒炊飯である。いくつかの班に分かれてカレーやらなんやらを作るのだが、この班決めに一悶着あったのはまた別のお話。
「6組4班、来なさい」
先生に呼ばれ、班員が先生の元に集った。班員は俺(神崎 亜久斗)、蒼弥(天ヶ原 蒼弥)、泰道(串野 泰道)の男子3人。そして薙野(薙野 心美)、石鐘(石鐘 結奈)、田中(田中 夏音)の女子3人、計6人だ。先生から薪とか食材を貰って班が割り振られているかまど(…であってるのか?)に向かう。
「薪の組み方は…」
「そこのニンジン取ってー」
早速、調理が始まった。俺はぎこちない動きで包丁を握ってじゃがいもを切ろうとした。俺もそうだが、この班のメンバーはどうやらほとんど日常で料理はしないらしい。だから──
「あ、いっっってぇぇえええ」
言ってるそばから泰道が包丁を指をやったらしい。彼のためにカバンから絆創膏を取り出そうとしていると
「は?だからこれは! 」
「何よ。そんなこと言ってないでとっとと燃やす枯葉取ってきてくれる?」
「なんだよ、それがお願いする態度か?」
あちゃー…なんでここまで来て蒼弥と薙野は喧嘩するんだよ。せっかくの校外学習なんだからちょっとぐらい仲良く──
「あああ!あんたがグズグズしてるから火が消えたじゃない!」
「お前が火の取り扱い下手なせいだろ?なんでその尻拭いを俺がやんなきゃなんねぇんだよ!」
「黙って聞いてりゃさっきから…」
ダメだこりゃ。もう前途多難とかそういうレベルじゃねえ。もうこの班は実質分裂してしまっている。俺と泰道の中立組と薙野ら女子組、そして蒼弥。「なんか勝手にぼっちにしないで!」と脳内で何か聞こえたのは気のせいということにしておこう。まぁ兎にも角にもただでさえ誰もまともな料理経験などないのにこんな状態でまともに料理出来るはずもなく…
「完…成…?」
「(ᯅ̈ )ウワァ…」
「何コレ」
俺らが作っていたのはカレーだ。カレーだったはずだ。カレーに違いないはずだ。カレーだっただろう。ひょっとしてカレーだったかもしれない…ダメだ、自信なくなってきた。カレー感が無い。
「ま、まぁ、食べよう…?」
石鐘の呼びかけで各々がスプーンを手に取り
「いただ…きます……」
カレーに似た、得体の知れない物体をスプーンで掬い、口に運ぶ。……あのー、これってカレーでしたっけ?とてもお世辞には美味しいとは言えない。中まで十分に熱が入ってなさそうなじゃがいも。恐らく鍋の下部に付いていた大量の焦げ。あとこれ多分水の量ミスってる。味がとてつもなく薄い。もう終わりだよこの班…ふと周りを見回してみると、みんなも嫌そうな顔でまだまだ残っている皿を睨みながら食べている。
「まったく…誰かさんが枯葉を持って来なかったから」
「俺は関係ねぇだろ!だいたいお前が『量は多い方が良いしねー』とかいいながら水をドバドバ入れまくるから」
「はあ?あんたこそねぇ」
飯食ってる間ぐらいは喧嘩はやめようよぉ……雰囲気最悪だよぉ……
「ま、まぁこんなこと滅多にないし…ね?そんな上手くいく方がおかしいよ」
「ああ、仕方がなかった、ってやつだ」
石鐘と泰道が必死に何とかしようとしてるけど焼け石に水だ。
「ご馳走様でした」
その場の空気に耐えられず、俺は1人ササッとカレーを喉に流し込んで片付けをしようと机を離れた。