テラーノベル
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自宅に戻った凪子は、まずゆっくりと湯船に浸かった。
体が温まるにつれ、張り詰めていた心までふっと緩んでいく。
入浴後はハーブティーを淹れ、窓辺のソファに腰を下ろした。
ふと外を見上げると、先ほど運転手と眺めた満月が、夜空にまぶしいほどの光を放っていた。
その月を見つめながら、凪子はそっと微笑む。
(ひょんなことから、素敵な出会いに恵まれたわ……)
そう思いながらハーブティーを口に含んだとき、玄関の鍵が開く音がした。
信也が帰ってきたようだ。
リビングに入ってきた信也は、凪子を見るなり迷いなく歩み寄り、そのまま抱きしめた。
「凪子、ただいま」
「おかえりなさい」
「今夜は何してたの?」
「紀子と電話したり、雑誌を読んだり……かな?」
紅子の言葉を思い出し、凪子は罪のない嘘をついた。
「そっか。俺はね、今日、旧友と会ってきたよ」
その言葉に、凪子は胸がちくりと痛む。
(そうよ……彼はいつも、外での出来事をその日のうちにちゃんと話してくれるじゃない)
疑った自分が、急に恥ずかしくなる。
「旧友って、どんな人?」
「テレビにも出るような有名人だよ。昼のワイドショーのファッションチェックにも出てる人」
凪子は知っていたが、わざと悩むふりをした。
「えーっと、一番上の文字は?」
「『高い』って字で始まる人」
「高、たか……あっ! 分かった! 高倉ジョン?」
「ピンポーン、正解」
信也は嬉しそうに笑う。
「へぇ……あなたがあの人と古くからの知り合いだとは知らなかったわ」
「ずっとイタリアにいるからね。久しぶりに戻ってきて誘ってくれたんだ」
「そうなんだ。楽しかった?」
「うん。俺が結婚したのを知って、大騒ぎしてたよ」
「ふふっ、そっか」
「でさ、結婚祝いにプレゼントを貰ったよ」
信也は椅子の上に置いていた紙袋を手に取り、凪子に差し出した。
「凪子に、って」
「私に? いいの?」
「当たり前だろ」
「嬉しい!」
胸を高鳴らせながら、凪子は紙袋から包みを取り出した。
「何かな?」
「開けてごらん」
「うん」
包みを開くと、ヴェネチアンガラスで作られた、美しい花嫁の人形が姿を現した。
人形は、ひまわりのブーケを手にしている。
その顔立ちは、どことなく凪子に似ていた。
「素敵……」
「イタリアで注文したらしい。世界でひとつだけのオリジナルだよ」
「そうなの? すごく嬉しいわ!」
「喜んでくれてよかったよ」
「『ありがとう』って、伝えてね」
「ああ。子供が生まれて落ち着いたら、君にも紹介するよ」
「わぁ、楽しみ!」
胸がいっぱいになった凪子は、人形をそっとテーブルに置き、思わず信也に抱きついた。
「信也、愛してる……」
妻からの突然の抱擁に少し驚きながらも、信也は凪子をしっかりと抱きしめた。
「俺も愛してる……君と過ごす毎日が、愛しくてたまらないよ」
「私もよ……」
二人はそっと見つめ合い、どちらからともなく唇を重ねた。
凪子は、この上ない幸福に満たされていた。
信也もまた、揺るぎない幸せを胸に抱いている。
窓ガラスには、抱き合う二人のシルエットが映り込んでいる。
その向こうで輝く月は、まるで二人の未来を祝福するかのように、柔らかな光を静かに解き放っていた。
<了>
『マウントリベンジ』コミカライズ記念・SS、最後までお読みいただきありがとうございました✨
コミカライズ版の方も、ぜひよろしくお願いいたしますm(__)m🎵
コメント
43件
ショートストーリーありがとうございます。紅子さん‼️ の登場にびっくりと嬉しいさでいっぱい! イケオジを一気読みの後だったので一人で興奮しちゃいました! 育児中の片時なので、まちまち何ですが、マリコ様は私の癒しです! 体調に気をつけて下さい
マウントリベンジのこの後のショ−トドラマが配信すると知り、第1話から仕事の合間など読んで最終話を今日読んだのですが、紅子さんなど出てきてとても良かったです! 引越しなので忙しいなか、お疲れ様でした!
マリコ先生 おはようございます😊 マウントリベンジSS読みました また、凪子さんに会えるなんて 嬉しかったです🥹 そして、紅子さんの優しくて 温かい思い遣りのある言葉を 凪子さんに語り掛ける…私も (⸝⸝⸝ᵒ̴̶̷̥́ ⌑ ᵒ̴̶̷̣̥̀⸝⸝⸝)(泣)ぅʓぅʓしました マリコ先生の満月ストーリーに 私も元気貰えました😂🙌 ありがとうございます😊❤️