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放課後のチャイムが鳴り終わった頃、古びた教室の扉が、静かに開いた。入ってきたのは、男子生徒。スマートフォンを手に持ったまま、何かを飲み込むような目をしていた。


日下部はその顔を見て、名前を呼ばずにただ頷いた。


椅子に腰を下ろすと、男子はしばらくスマホの画面を見つめたまま、言った。


「……なんか、誰もいないんです」


「誰も?」


「“友達いる”ってことになってるんですけど。LINEのグループもあるし、放課後に話す人もいるし、見た目では普通って言われるんですけど……。

何かあったとき、連絡する相手がいないんですよね」


「何かって?」


「たとえば、今日誰とも話してない、って日とか。

朝からずっと、誰とも目が合わなくて、グループLINEも既読だけついてて、誰も反応しなくて。

そのまま夜になって、もう寝ようかなと思ったとき、ふと、“俺って誰かの中にいるのかな”って思うんです」


日下部は頷いた。それだけだった。


「学校でも、家でも、別に嫌われてるわけじゃないのに。

でも“自分の存在が、誰かに必要とされてる”って感覚が、まったくなくて。

ひとりで部屋にいるとき、スマホの通知が鳴るのを待ってるんです。鳴らないのわかってるのに。

音が鳴らないまま、一日が終わるのがこわいんです」


男子は、声を震わせずに話し終えた。涙はなかった。ただ、淡々と。

その“静かさ”が、日下部には痛かった。


「今、ここに来たのは、通知じゃなくて、誰かの声が欲しかったからか?」


男子は、少しだけ目を見開いた。

そして、ぽつりと答えた。


「……たぶん。既読じゃなくて、反応が欲しかったんだと思います」


日下部は、机の引き出しから紙を一枚取り出し、鉛筆で何かを書き込むと、それを破いて彼の前に差し出した。


「はい」


見れば、こう書かれていた。



君は、確かにここにいた。

そして、誰かに届いた。




男子は、紙を両手で受け取ると、静かに深く、息を吐いた。

それが、彼の孤独にわずかでもひびを入れる呼吸であれば、と日下部は思った。


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