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亮介の両親とのあいさつは、あっけなく終わった。

 

鎌倉駅から北へバスで10分ほど行くと、きれいな洋館が見えてきた。茶色の屋根にレンガ造りの壁。昔はえらい人が住んでいたのだが、しばらく空き家になっていたところを亮介のお父さんが一目で気に入って買い取ったのだそうだ。

 

重厚な木製の門は、まるでヨーロッパの邸宅のよう。インターホンを押すと元気な声が聞こえてきた。

 

「はーい、どうぞ!」

 

門をあけると、大きな庭が見えた。きれいに手入れされていて、いたずらうさぎが出てきそう。ため息が出るほどすてき。

 

立派な玄関は、ステンドグラスがはめ込まれていて、日差しが当たってきらきら光っていた。

 

「ただいまー」

 

亮介は玄関のドアを開けた。大理石で作られた大きなホールがあり、目の前には立派な階段。まるでタイタニック号だ。

 

上品なシャンデリアや、スズランの形のランプなど、当時のままであろう照明や、ピカピカに光ったこげ茶色の床が時代を感じさせる。

 

ほぉーっ。と開いた口が塞がらず、思わず胸の前で手を組んで見惚れてしまった。バタバタ奥から足音がして、白いTシャツにスキニーデニムのスタイルのいい女性がでてきた。

 

「亮介、おかえり! 待ってたよ」

 

ニカっと白い歯を見せて笑う顔は亮介にそっくりだ。

 

「ただいま。これお土産」

 

「ありがとう、はじめまして亮介の母です」

 

「はじめまして、篠田未央と申します」

 

未央は緊張しながら、深く頭を下げた。

 

「亮介から話は聞いてます。きょうはわざわざありがとう。さ、応接に入って。お父さん呼んでくる、さっき海から帰ってきたばかりでシャワー浴びてるの。すぐ行くようにするわね」

 

ホールの右側にある部屋に通された。ヨーロッパを思わせる内装。3人がけのソファーがひとつと、ひとり用ソファーがふたつ。ローテーブルを挟んで置いてある。

 

大きなシャンデリアが、オレンジ色の優しい光で部屋を包んでいた。

 

下座の3人がけソファーに並んでちょこんと腰掛ける。天井も高く開放感抜群。窓から見える庭の木々が、見守ってくれているように感じた。緊張して、背筋がピンとのびる。亮介は未央のその姿を見てぷっと吹き出した。

 

「なによ、笑わなくてもいいじゃん」

 

「ごめんごめん。緊張してる姿、かわいすぎて」

 

「もうーっ!! そう言われたらよけい緊張するじゃん」

 

きゃあきゃあ言っているところへガチャっとドアが開いて、亮介のお母さんがお茶を持ってきてくれた。

 

「亮介はコーヒーね。未央さんはコーヒーか紅茶、どっちがいい? 緑茶もあるけど」

 

「コーヒーでお願いします」

 

ややあって、亮介のお父さんも応接室に入ってくる。

 

「お待たせしてすみません、よくきてくれました」

 

ふたりで立ち上がってあいさつをする。

亮介のお父さんはサーフィンが趣味なだけあって、引き締まった体によく焼けた肌。白髪混じりだが、清潔感のある短髪。ほりの深い顔は亮介の姉、あきによく似ていた。

 

「じゃああらためて紹介するね。こちら篠田未央さんです」

 

そう亮介に紹介されてすごくくすぐったく感じた。

 

「はじめまして、篠田未央と申します。よろしくお願いします」

 

未央は深く頭を下げる。

亮介の両親もニコニコと頭を下げた。ソファーに座り直して亮介が話を始める。「この前話した通り、未央さんと結婚しようと思ってます」

 

凛として話す亮介の横顔が、とても頼もしく見え、未央も黙ってうなづいた。

 

「ふたりともおめでとう。未央さん、ふつつかな息子ですが、どうぞよろしくお願いします」

 

亮介のお父さんはまっすぐこちらを向いてそう言ってくれた。

ぽわんと温かい雰囲気が部屋中にあふれる。

 

「亮介のことよろしくお願いしますね」

 

亮介のお母さんにそう言われて、ぶわっと目に涙が溜まった。

 

「……ありがとうございます」

 

未央は声を震わせながら亮介を見ると、うれしそうに目を細めていた。

 

「さあ、堅い話はこのくらいにして。お寿司とってあるから、ふたりも食べていきなさい。ビールで乾杯しよう。未央さんはお酒飲めますか?」

 

亮介の父親にそう促され、応接室からダイニングへ移動した。亮介が言うような、『真面目な雰囲気が苦手』というのは微塵も感じない。

 

すき、ぜんぶ好き。

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