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騎士団長は恋と忠義を区別できない

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騎士団長は恋と忠義を区別できない

6 - 【第五話】召喚へ求めた期待①(シド・レイナード・談)

2025年10月01日

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あれからカイルは、セナ、エレーナという二人の神官を呼び出し、俺のために部屋の用意を頼んでくれた。いつまでここに滞在する事になるのか見当もつかないとの事で、長期滞在が可能な物を一式用意してくれるらしい。突然の召喚だったから身一つで来てしまっているので、正直有難い話だった。

今頃祖国カルサールでは『終戦の英雄の失踪』で大騒ぎになっているかもしれないが、『今はそれを確かめる術は無いと思っていて欲しい』と言われた。その確認の為だけに『遠見の古代魔法』というものを使い、一手間かけて更に時間を無駄にするよりかは、最初から帰還の為の魔法の準備をしたいとの事だった。

その決定に対して俺がどうこう言っても仕方ないだろうと、全てはカイルの判断に一任する事にした。知識も無い奴が感情論で口を挟んでもロクな事にはならない。得意な者へ任せるのが一番だ。

『何か私にもお手伝い出来る事があったら遠慮無く言って下さい』とだけ最後に伝え、俺はロシェルに引かれるがまま神殿の庭園へと向かう事になった。




この神殿はどうやらかなり広い様だ。白を基調としたシンプルな装飾の廊下が、どこまでも続いている。壁には神々を讃える絵画が飾られ、神の御使を思わせる石像なども随所に置いてある。王宮の様な華やかさは無いが神を祀る神殿としての荘厳さに溢れていた。

そんな廊下を俺は、何故か左肩に、豪華なドレスを着た少女を座らせるという不安定な状態で歩いている。右肩にはロシェルによって『シュウ』と名付けられた『使い魔仲間』が乗り、俺は完全に二人の移動手段と化していた。

ドレスのスカートが視界を邪魔し、歩き難いが文句も言いづらい。落ちない様にと俺の頭にしがみつき、はしゃぐロシェルが正直とても可愛らしいと思ってしまっているからだ。耳や後頭部に微かに当たる、やけに柔らかい物の正体も……少し気になる。

「ねぇ、シド。この角を左に曲がって下さる?」

「わかりました」

「ありがとう!優しいのね!」

過剰に喜び、ロシェルが軽く脚をバタつかせた。太ももに手を添えて落ちない様に気を付けてはいるが、それをやられると落としそうで少し不安になった。

「此処からまだ遠いですか?」

「いいえ、あと少しよ。父さんの執務室からなら庭に向かうのはまだ近い方ですから」

「わかりました」

俺がそう答えると、上から「んー……」と少し不満気な声が聞こえてきた。

「どうされました?」

表情を窺い知りたくても頭を動かせない。

「シドは普段からそんな話し方なのですか?」

その言葉に「ははっ」と俺は短く笑った。

「ロシェル様こそ、普段からその様な話し方で?」

「えぇ、私は常にこうです。だって私は誇り高き神子の娘ですもの。だけどこれでも、王族の方々と会う時よりかはかなり砕けて話しているのよ?」

「では、尚更私はこのまま話し方を変えてはいけませんね」

「あら、何故ですか?」

「この世界で神子というのは王族よりも上のお立場なのでしょう?私は異世界にあるカルサール王国の騎士団長でしかなく、一応公爵位ではありますが、それでも貴女様とは身分にかなりの差がありますから」

「私だって偉いのは両親だけで、娘でしかない『私』ではないわ。だけど、シドは私の使い魔よ。それなのに、私のお願いを優先してはくれないの?そんなの……距離を感じて悲しいわ」


(そう言われると、参ったなぁ……)


ふぅと息を吐き出してから俺は軽く頷いてみせた。ここは素直に従って、子供の可愛い我儘くらい聞いておくか。

「では、普通に喋らせてもらうよ」

「ホントですか?ありがとう!とっても嬉しいわ!」

ロシェルがはしゃぎ、俺の頭にギューと抱きついてきた。前が腕で完全に見えなくなり、危ないのでその場に立ち止まる。何となく触れていた柔らかい感触が思いっきり頭に押し付けられ、疎い俺でも流石にソレの正体がわかった。


(む、胸かぁぁぁっ!ちょっと待て!ソレはまずい!)


直様引き剝がしたくても肩に座るロシェルをどうこうする事も出来ず足元がふらつく。確信を得ていない状況とは違い、『コレは胸の感触なのだ』と認識してしまうと、免疫が無いからか変に体が火照って頭がクラッとした。

「ご!ごめんなさい!」

倒れかねない様子に慌てたのか、ロシェルが俺から胸を離し、最初の様に頭に手を置く程度に留めてくれた。彼女の様子的に『きっとあれでは呼吸が苦しいのか』と思ったみたいだ。

「……大丈夫、ですか?」

心配そうな声が耳に聞こえる。

「あ、あぁ……大丈夫だ」

かろうじて答えたが、鼓動が落ち着かない。耐性が無いとはいえ、子供相手にここまで動揺するとは……不覚だ。

「そうですか、良かったです。なら進みましょう?庭園まではもう少しですから」

頭に感じた胸の感触を中々忘れる事が出来ないまま、俺は庭園へと続く廊下を覚束無い足取りで歩き続けた。

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