聞いてない

けっこうな人の波にのまれて

小さい佐久間は目黒と離れそう

佐「ちょ　目黒くん」

呼んでるけど聞こえてない

佐久間は息を吸った

佐「れん！　置いてかないでよ！」

大きい声で目黒に叫んだ

目黒は立ち止まり後ろを見る

いつの間にか先を歩いていた

目「ごめん　佐久間くん」

腕を掴んで

佐久間の肩を抱く

目「こうしてれば良かったね　ごめんね」

佐「あんまり目立つ　これ」

目「今頃言ってんの？　おれ　いなくても佐久間くんだけでも目立ってるよ」

佐「そんな訳ないだろ」

はぁこの人岩本くんから聞いた通りの人だ

自分は可愛いなんて思ってないし

モテることも自覚がないんだな

目「ちょうどいいや」

佐「なにが」

目「オレの恋人になりましょうよ」

佐「何がちょうどいいの？」

目「おれたちお似合いと思いません？」

にっと笑って

佐久間の肩を更に抱き寄せる

ちょっと逸れて校舎裏

佐「あのまだ声かけて1時間くらいで付き合うとかなるの？ならないよね」

目「そーっすか？」

佐「ん？」

目「おれ　好きになったらしつこいし重いです」

佐「ん　なんか　そんな感じわかる」

目「でも絶対幸せにします！」

照が目黒に何を話したか

佐久間はわかってしまった

かつて大好きだった恋人に

ひどい振られ方をしたこと

しばらく

笑えなくて食べれなくなって

やっと立ち直って3年になった時に目黒に会った

かっこいいな

それくらいにしといた

仲良くなることなんて考えてなかった

失う怖さは

もう2度と味わいたくないから

それが今

一緒に文化祭をまわって

付き合ってと言われて

うれしいけど

泣きそうなくらいうれしいけど

どう言っていいのかわからない

目「その困ったような顔　他の人に見せたらダメだよ？」

翔太に先を越されてたまるか

絶対

佐久間くんをオレのにする

目「好きになりました　だから付き合ってください」

少し震える佐久間を

ギュっと抱きしめる