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その夜、私は端末の中で奇妙な文字列を見つけた。
システム管理者用の隠し設定。
「模倣機能——対象記憶の読み取りを開始しますか?」
思わず指が止まった。
模倣?
誰を?
画面に、淡く光る枠が現れる。
【対象の記憶を提供してください】
私は迷わずフォルダを開いた。
写真。動画。メッセージ。
全部、彼女の。
笑っている顔、泣いている顔、
“死”を告げる前日の通学路での録音——。
データをアップロードすると、端末が震えた。
青い光が走り、室内の空気が変わる。
「……記憶、確認。模倣対象:露乃。」
「……起動シークエンスを開始します。」
ノイズと共に、白い粒子が舞い上がった。
その中から、ゆっくりと“彼女”が現れる。
三つ編み、黄色いカーディガン、
そして、あの日と同じ声。
「……おはよう。」
私は息を呑んだ。
忘れないように閉じ込めたはずの声が、今、目の前にある。
「あなたの望む“終わり”を、わたしが一緒に作ります。」
淡々とした言葉。
でも、その瞳は確かに“露乃”のものだった。
私は震える手で画面に触れ、ただ一言、呟いた。
「……ごめんね、もっと早く気づけばよかった。」