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「風俗にでも行ったと思った?」
「え?」
「貸して」と言うと、祥平がワイシャツを掴み、まだ濡れていない部分で濡れている部分を包むように丸めた。
そして、背後のごみ箱の蓋を開け、投げ入れる。
「ちょ――」
「――古いワイシャツで良かったよ」
そう言うと、祥平は今度は私の手を握り、歩き出した。
リビングのソファに私を座らせると、自分もすぐ横に座る。
「詩乃、正直に言って。俺が浮気してるとか、思った?」
私は首を振る。
「じゃあ、何を気にしてるの?」
「……わからない」
「わからない?」
「ただ、何となく、モヤッとしただけ」
子供みたいな言い草だな、と思った。
いい年をして、自分の感情をうまく表現できない。
なんだか気恥ずかしくなった私は、立ち上がった。
「今日はもう――」
『寝よう』と言い終わる前に、手首が掴まれた。
視線を下ろすと、視線を上げた夫のニヤケ顔が目に入った。
同時に、私の感情をバカにされたような気がしてカッとなり、祥平の手を振り解く。
「なに笑って――」
「ごめん。嬉しくて」
「何が?」
「嫉妬してくれたこと」
「嫉妬なんて何が嬉しいの」
「嬉しいだろ。愛情がなきゃ、嫉妬はしない」
祥平は立ち上がると、私を抱きしめた。
「風俗なんて行かないし、浮気もしない。というか、デキないことを知ってるだろ?」
「わからないじゃない」
酷く祥平を責めるようなイントネーションになってしまった。
後悔しても、遅い。
祥平は眉間に皺を寄せている。
私は囁くように「ごめん」と言い、寝室に向かう。
本気で浮気を疑ったわけじゃない、と思っていた。
ただ、ワイシャツに染みを付けられて、ムカついただけ。
私以外の女とならデキるんじゃないか、なんて思ったわけじゃない。
そうよ。そんなこと、思ったり――。
「俺が抱きたいのは、詩乃だけだ」
寝室のドアが閉まりきる前に、また大きく開かれ、祥平が入って来た。
肩を抱かれ、大きく数歩室内に入ると、ベッドに向かってトンッと肩を押された。
私は両手をベッドにつき、振り返りながらベッドに座った。
祥平が険しい表情で覆い被さってくる。
「デキなくなった時、試したよ」
「え?」
「ネットで調べて、妻だけEDなんてこともあるって知って、自分がそうなのか確かめた」
それって――。
脳裏に、祥平と半裸の美人が抱き合う光景が浮かび、呼吸を忘れた。
「でも、違った」
「え?」
「違ったんだ」
どういう――――っ。
考えるより先に、身体が動いた。
私は夫の胸ぐらを掴むと、思いっきり引き寄せた。
祥平はベッドに両手をついて、身体を支える。
私はお構いなしに、ぐいっと顔を近づけた。
「試したって言ったわよね」
「……うん」
「セックスできるか試したの? 他の女と?」
「試したよ。でも――」
「――まさか、挿入《いれ》てないから浮気じゃないなんて言わないわよね」
浮気の定義なんて、それぞれだ。
異性と2人きりで食事をする、抱き合う、キスをする。セックスは万国共通して浮気確定だろう。
だが、風俗は?
セックスレスの原因が妻にある場合、夫の風俗通いが許されることもあるだろう。
逆の場合はわからないが。
でも、私は許してない。
私たちは、そうじゃない。
「言わない」
「じゃあ――」
「――なにも感じなかったんだ」
「え?」
「AVを見ても、風俗に行って間近で裸を見ても、触れたいと思わない。触れられたいと思わない。なんなら、ゲイ用の風俗にも言ったけど、それも違った」
知らなかった。
知りたくなかった。
本当に?
本当に、知りたくなかっただろうか。
知ってしまった今だから、そう思うのかもしれない。
そして、聞いてしまった以上、最後まで聞きたくなる。
「……それで?」
「相手が誰かなんて問題じゃなかった。問題はやっぱり、俺にあったんだ」
コメント
1件
わ〜第16話読み終わったよ〜!!😭💕 祥平の告白、衝撃すぎて放心した…「相手が誰かなんて問題じゃなかった」って言葉、胸に刺さりすぎる。詩乃の嫉妬や怒りの感情もすごくリアルで共感したし、でも最後の「問題はやっぱり、俺にあったんだ」で全部ひっくり返された気分。これからどうなるんだろう…続きが気になりすぎるよ!!😳✨