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52話 尖った魔法石の物語
放課後。
リカは自分の部屋で、
何度も読み返している本を開く。
表紙は少し擦れている。
角は丸い。
手に馴染んでいる。
三人の魔女と魔法石。
杖の先に、
尖った魔法石を持つ魔女が描かれている。
弩赤林檎(どせきりんご)。
短く切った髪。
袖をまくった服。
立ち姿が前のめり。
杖を振る時、
迷いがない。
玲綺黄(れいきき)。
長い髪をまとめ、
襟元まで整えられている。
石を使う前に、
必ず一呼吸置く。
翠(みどり)。
背は低め。
服は簡素。
石を掲げず、
地面に置いたまま待つ。
三人は、
同じ魔法石を持っている。
形も、大きさも同じ。
でも、
使い方は違う。
石は、
願いを叶えない。
声も聞かない。
向けられた方向にだけ、
静かに反応する。
弩赤林檎は、
力をそのまま前へ向ける。
失敗しても、
立ち止まらない。
玲綺黄は、
角度を変え、
何度も確かめる。
失敗は、
手順の中に残す。
翠は、
何もしない時間を選ぶ。
石が動くまで、
動かない。
うまくいかない時、
石のせいにはしない。
三人は、
石を見下ろし、
自分たちの向きを確かめる。
ページをめくるたび、
リカの指が止まる。
石には力がある。
それは、
当たり前のこととして書かれている。
でも、
どう使うかは、
いつも魔女の側にある。
リカは本を閉じる。
表紙をなぞる。
窓の外の空は、
今日も黄緑。
机の上には、
学校の教科書。
石の図。
線。
記号。
リカは、
魔女の名前を思い出す。
弩赤林檎。
玲綺黄。
翠。
石は、
何も教えてくれない。
でも、
向きだけは、
自分で決められる。
それが、
この本を好きな理由だった。
#推理