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不安定ラジオ
2
ほわ🌇
21
ふぃる汰
2,015
ミモザ
640
第10話 動画サイトの天気予報
朝。
立花湊は、窓を開けなかった。
カーテンも。
開けなかった。
起きて最初に手を伸ばしたのは、窓ではなく枕元の携帯端末だった。
午前七時十二分。
室温。
二十六度。
外気温。
四十一度。
予想最高気温。
五十二度。
湊の指が止まる。
「朝だよな」
間違っていない。
七時十二分。
窓の向こうから、強い日差しがカーテン越しに入り込んでいた。
冷房は夜から動いたまま。
室内は快適だった。
湊はベッドから降りる。
灰色の部屋着。
少し癖のついた茶色の髪。
冷蔵庫。
水。
一杯飲む。
端末が振動した。
気象警戒通知。
本日は広い地域で危険な高温が予想されています。
日中の不要な外出を避けてください。
最高気温が五十度を超える地域があります。
買い物、仕事、各種手続きにはLinkcityおよび配送サービスの利用をご検討ください。
「五十二か」
今年初めてではない。
だから。
驚くほどでもない。
そこが。
湊には少し妙だった。
五十二度。
数字だけ見れば異常。
なのに。
今年に入って。
何度も見た。
四十八。
四十九。
五十。
五十一。
五十二。
天気予報の数字が。
少しずつ。
上がっていく。
以前ならニュースになった気温が。
今では。
夏の予定を決めるための数字になっている。
湊は動画サイトを開いた。
トップ。
一番上。
LIVE。
全国気象特集。
今日、外へ出ますか?
視聴者。
七百八十二万人。
その下。
本日の最高気温予想。
各地域。
四十五。
四十七。
五十。
五十二。
湊は再生した。
映像。
スタジオ。
巨大な気象図。
中央に立っている女性。
肩より少し短い茶色の髪。
ベージュのジャケット。
紫色のシャツ。
画面下。
気象解説。
秋庭奈緒。
秋庭は画面の横へ移動した。
全国の予想気温が大きく表示される。
「本日も非常に厳しい暑さが予想されています。特に午後一時から四時にかけて、複数の地域で五十度を超える可能性があります」
湊は冷蔵庫を開ける。
麦茶。
残り。
少ない。
「買っとけばよかったな」
動画。
「外出予定がある方は、予定そのものを変更できないか確認してください」
湊は冷蔵庫を閉じた。
「変更」
今日。
昼。
買い物。
予定していた。
洗剤。
麦茶。
食料。
現実の店。
徒歩八分。
近い。
でも。
五十二度。
八分。
行き。
八分。
帰り。
店内は冷房。
だから。
大丈夫。
以前なら。
そう考えていた。
今は。
違う。
端末。
Linkcity。
買い物。
配送。
それで終わる。
動画では。
道路の映像。
日差し。
ほとんど人がいない。
AI配送車。
何台も走っている。
「現在、主要都市ではAI配送の利用件数が通常日の二・八倍となっています」
湊は笑った。
「みんな同じか」
続いて。
動画が切り替わる。
五年前。
夏。
街。
現在より人が多い。
「ここ数年、私たちの外出習慣は大きく変化しています」
秋庭の声。
「その理由は高温だけではありません」
映像。
春。
道路。
突然。
雨。
数分前まで。
乾いていた。
それが。
一気に。
水で覆われる。
「春と秋に増加している局地的な豪雨」
次。
巨大な雨雲。
強い風。
揺れる木。
道路を流れる水。
「大型台風」
次。
冬。
道路。
凍結。
停止した交通。
「そして冬には、地域によって氷点下十五度前後まで下がる低温」
湊は椅子へ座った。
天気予報。
というより。
特集番組。
今日は。
一日。
近年の気象変化を扱うらしい。
画面。
夏。
春。
秋。
冬。
四つ。
「かつて、天候による予定変更といえば、旅行や大規模イベントなどが中心でした」
映像。
昔の通勤。
駅。
大量の人。
「現在は違います」
企業。
Linkcity。
仮想オフィス。
「仕事」
学校。
仮想教室。
「学校」
店。
仮想店舗。
「買い物」
レストラン。
注文。
AI配送。
「食事」
診察相談。
行政手続き。
打ち合わせ。
「生活の多くが、天候に合わせて場所を切り替えられるようになりました」
湊は。
画面を見ながら。
Linkcityへ接続した。
自宅ワールド。
姿。
変わる。
淡い茶色の短い髪。
黄緑のシャツ。
灰色のジャケット。
茶色のパンツ。
現実側。
部屋着。
Linkcity側。
いつもの姿。
動画は。
小さな画面として。
視界の横へ表示。
湊は自宅ワールドの窓を開けた。
Linkcity。
外。
穏やか。
山。
川。
町。
風。
設定温度。
二十四度相当。
現実。
五十二度予想。
差。
二十八度。
「こっちは快適だな」
通知。
宮原結衣。
今日、外出する?
湊。
しない。
数秒。
結衣。
私も。
さらに。
新堂理央。
俺も。
三人。
同じ。
結衣。
天気特集見てる?
湊。
見てる。
理央。
会社の共有ワールドでも流れてる。
湊。
今日休みだけどそっち行こうかな。
理央。
来れば。
転送。
会社共有ワールド。
休日。
人は少ない。
でも。
完全には無人ではない。
休憩スペース。
巨大な画面。
同じ動画。
理央。
灰色の短い髪。
モカ色のシャツ。
グレーのパンツ。
ソファに座っている。
その隣。
結衣。
長い紫色の髪。
黄色の上着。
グレーのスカート。
「おはよう」
「おはよう」
「湊、現実の外見た?」
結衣が聞く。
「見てない」
「私も」
「カーテンすら?」
「開けてない」
理央が笑う。
「俺は見た」
「どう?」
「暑そう」
「感想それ?」
「外出たわけじゃないから」
三人。
画面。
気象特集。
秋庭が。
過去十年間の気温推移を表示する。
「夏の高温化で特に大きく変化したのが、昼間の人流です」
映像。
午前六時。
散歩。
買い物。
運動。
人。
午前九時。
減る。
正午。
ほとんどいない。
午後三時。
さらに少ない。
夕方。
少し増える。
夜。
人が戻る。
「最近、夏は朝型と夜型になるよね」
結衣が言った。
「買い物も朝」
理央。
「俺、配送」
湊。
「全部?」
「ほぼ」
「現実の店行かないの?」
「涼しい日は行く」
「それ夏じゃないじゃん」
「だから夏は行かない」
三人。
笑う。
動画。
街頭取材。
現実。
男性。
帽子。
水。
携帯冷却機。
短時間の移動。
次。
女性。
朝五時に買い物。
次。
高齢者。
Linkcityの店舗を利用。
「生活時間そのものを変える人も増えています」
秋庭。
「ただし、高温はLinkcityを利用すれば解決する問題ではありません」
画面。
発電。
冷房。
物流。
農業。
道路。
建物。
「現実側の設備を維持する人々がいます」
湊は。
少し姿勢を直した。
Linkcity。
便利。
家から。
出なくていい。
でも。
外。
なくなったわけではない。
食事。
現実。
配送。
現実。
電気。
現実。
通信設備。
現実。
全部。
現実側に。
何かがある。
動画。
AI配送ロボット。
強い日差しの下。
道路を走る。
機体温度。
自動冷却。
日陰ルート。
停止地点。
「AI配送も、高温時には通常とは異なる経路を選択します」
結衣が画面を見る。
「ロボットも暑いんだ」
「機械だから平気ってわけじゃない」
理央が言う。
「熱で性能落ちるからな」
「人よりは強い?」
「設計次第」
「こういう日、人が配達するよりいいよね」
「そのために増えたんだろ」
画面。
AIでは通行判断が難しい区域。
段差。
工事。
臨時通路。
Linkcity内。
配送オペレーター。
現実の配送ロボットを遠隔操作している。
「完全自動化が難しい場所では、人間がLinkcityから操作を引き継ぎます」
湊。
少し笑う。
「外にいるロボットを、涼しい部屋から操作」
「今の時代らしい」
結衣。
「人が行かなくていいなら、その方がいいよ」
動画。
午後の予測。
五十二度。
危険時間帯。
十三時。
十四時。
十五時。
十六時。
「本日は午後五時を過ぎても四十度を超える可能性があります」
「夜も暑いじゃん」
結衣。
「今日は現実散歩なしだな」
湊。
「昨日行った?」
「十分だけ」
「十分?」
「Linkcity旅行のあと」
「何それ」
「現実も歩きたくなった」
「それで十分?」
「暑かった」
画面。
特集。
春。
映像。
晴れている。
人。
歩いている。
十分後。
雨。
激しい。
道路。
水。
「高温と並んで、生活への影響が大きいのが春と秋の急激な天候変化です」
湊は。
その映像を。
じっと見た。
去年。
経験した。
買い物。
帰り。
晴れていた。
雨。
数分。
傘。
意味なし。
靴。
服。
全部。
濡れた。
それ以来。
春と秋。
天気通知。
かなり見る。
「これ嫌なんだよな」
湊が言う。
「豪雨?」
理央。
「急すぎる」
「予報出るじゃん」
「出るけど、ずれる」
「生成AI予測でも?」
「十分ずれたら濡れる」
「それはそう」
動画。
昔の予報。
現在。
比較。
数時間単位。
数十分単位。
五分単位。
細かくなった。
雨雲。
道路。
利用者の位置。
移動速度。
交通。
全部。
組み合わせ。
端末へ。
降雨予測。
あと十二分。
あと八分。
あと三分。
「予報技術は向上しています。しかし、予報が正確になることと、天候そのものが穏やかになることは別の問題です」
秋庭の言葉。
三人。
少し黙る。
確かに。
予報。
便利。
Linkcity。
便利。
配送。
便利。
でも。
雨。
止まらない。
暑さ。
下がらない。
台風。
消えない。
冬。
暖かくならない。
人間が。
避ける方法。
増えただけ。
昼。
十二時。
休憩通知。
Linkcity。
長時間利用が続いています。
現実側で水分補給を行ってください。
結衣が立つ。
「休憩しよ」
「了解」
三人。
一時離脱。
現実。
湊の部屋。
冷房。
静か。
端末。
四十七度。
外。
湊は。
初めて。
カーテンを少し開けた。
道路。
人。
いない。
車。
少ない。
AI配送ロボット。
一台。
ゆっくり。
進む。
向かいの建物。
窓。
閉じている。
日差し。
強い。
湊は。
カーテンを戻した。
水。
飲む。
冷蔵庫。
麦茶。
やっぱり少ない。
「注文するか」
再接続。
Linkcity。
結衣と理央。
戻っている。
「買い物行ってくる」
湊が言う。
結衣が驚く。
「今から?」
「Linkcity」
「ああ」
転送。
商業ワールド。
現実なら。
数百メートル。
でも。
Linkcityなら。
一瞬。
店。
利用者。
多い。
普段より。
明らかに。
多い。
「混んでる」
結衣。
「みんな外出ないから」
理央。
商品棚。
現実商品。
麦茶。
洗剤。
食料。
湊。
選ぶ。
カート。
配送予定。
四十二分。
通常。
二十五分。
混雑。
「遅いな」
「今日なら仕方ない」
「四十二分でも早いでしょ」
結衣。
確かに。
現実へ。
届く。
外。
五十度近い。
自分は。
部屋。
それで。
四十二分。
注文。
完了。
三人。
店を出る。
Linkcityの商業街。
人。
多い。
カフェ。
ゲーム。
服。
家具。
買い物。
みんな。
歩いている。
現実の街。
人が少ない。
Linkcityの街。
人が多い。
天候で。
人の流れが。
そのまま。
移る。
「これ、昔だったら街の店大変だっただろうな」
湊が言う。
「今はLinkcity店あるからね」
結衣。
「現実店閉めてLinkcityだけ営業する日もある」
理央。
「うちの近所も今日それ」
結衣。
「店員も家から?」
「接客担当は」
「商品は?」
「倉庫側とAI」
現実。
Linkcity。
片方だけでは。
動かない。
二つ。
つながっている。
午後一時。
特集。
再開。
三人。
カフェ。
巨大画面。
今度は。
台風。
過去映像。
巨大な雲。
沿岸。
強風。
交通。
停止。
「春と秋は、台風への備えも生活の一部になっています」
企業。
前日。
Linkcity勤務へ変更。
学校。
仮想授業。
イベント。
現実会場からLinkcity会場へ。
店舗。
配送時間変更。
「以前は中止という判断が多かった予定も、現在は場所を変更するという選択が増えました」
結衣が。
小さく頷く。
「これ助かる」
「何かあった?」
湊。
「去年のライブ」
「ああ」
「現実会場中止になったけど、そのままLinkcity開催」
「行った?」
「行った」
「どうだった?」
「現実で見たかったけど、完全中止よりいい」
「そうだよな」
動画。
スタジアム。
現実。
無人。
Linkcity。
何万人。
同じイベント。
場所だけ。
変わる。
予定が。
消えるのではない。
移る。
これも。
今では。
普通。
午後二時。
現在気温。
五十一度。
最高。
五十二度予測。
「上がった」
理央が言う。
「あと一度」
結衣。
「記録みたいに言うな」
湊。
「嬉しくない記録」
動画。
秋庭。
「現在、一部地域で五十一度を観測しています。外出中の方は、可能であれば冷房設備のある場所へ移動してください」
Linkcity内にも。
警告。
現実側気象警戒。
接続中の利用者へ。
表示。
外出予定の確認。
配送利用。
水分。
冷房。
「Linkcityにいても現実の天気通知来るんだよな」
湊。
「身体は現実にあるからね」
結衣。
その通り。
アバター。
快適。
でも。
身体。
現実。
部屋。
停電。
冷房。
水。
必要。
仮想現実へ。
逃げても。
現実との接続。
切れない。
午後三時。
特集。
冬。
映像。
氷点下十五度。
雪。
道路。
凍結。
交通停止。
「夏とは反対に、冬は低温が問題になります」
暖房。
住宅。
配送。
道路。
「夏は外へ出ない」
結衣。
「冬も出ない」
湊。
「春秋も豪雨なら出ない」
理央。
三人。
少し。
沈黙。
結衣が言う。
「いつ出るの?」
湊が笑う。
「天気いい日」
「減ってない?」
「減ってる」
「だからLinkcity増えるんだろ」
理央。
画面。
一年間のLinkcity利用時間。
季節別。
夏。
高い。
冬。
高い。
春。
豪雨日。
急上昇。
秋。
台風日。
急上昇。
気象と。
利用者数。
ほとんど。
重なっている。
「ヒノタマだけじゃないんだな」
湊が言った。
「何が?」
結衣。
「Linkcityが増えた理由」
「パンデミック?」
「それで一気に増えた。でも、そのあとも減らなかった」
暑い。
寒い。
雨。
台風。
仕事。
買い物。
学校。
食事。
Linkcity。
一度。
便利さを知った。
そして。
外の環境も。
戻る理由を。
少しずつ。
減らしていった。
画面。
五年前。
ヒノタマ・パンデミック。
Linkcity利用者。
急増。
四年前。
高温。
増加。
三年前。
大型台風。
増加。
二年前。
冬季交通障害。
増加。
去年。
記録的高温。
増加。
今年。
さらに。
増えている。
「Linkcityは、感染症対策として成長したサービスではありません」
秋庭。
「現在では、天候に左右されにくい生活基盤の一つになっています」
湊は。
その言葉を聞きながら。
商業街を見る。
人。
アバター。
店。
仕事。
旅行。
ゲーム。
生活。
ここへ。
避難している。
だけではない。
ここで。
暮らしている。
午後四時。
配送通知。
到着。
湊は現実へ。
戻る。
玄関。
受取ボックス。
麦茶。
洗剤。
食料。
外へ。
一歩も。
出ていない。
冷蔵庫へ。
麦茶。
入れる。
端末。
現在気温。
五十二度。
「本当にいったか」
動画。
速報。
今年最高。
五十二度。
記録。
でも。
歓声はない。
画面の秋庭も。
静か。
「五十二度を観測しました」
ただ。
伝える。
湊は。
窓へ。
カーテン。
少し。
開ける。
道路。
揺らいで見える。
人。
いない。
AI配送。
走る。
遠く。
散水設備。
動く。
街。
止まっているようで。
止まっていない。
人が。
見えないだけ。
建物の中。
Linkcity。
別の場所で。
動いている。
午後五時。
特集。
最後。
秋庭が。
年間の気象図の前に立つ。
「高温、豪雨、台風、低温。私たちが外で活動できる日は、天候によって大きく左右されるようになりました」
映像。
現実。
公園。
穏やかな日。
人。
散歩。
子ども。
買い物。
旅行。
「だからといって、外へ出る文化がなくなったわけではありません」
山。
街。
温泉。
店。
海。
「天候が穏やかな日は、現実へ出かける人も多くいます」
Linkcity。
街。
「一方で、危険な日に無理をして外出する必要もなくなりました」
企業。
学校。
店。
旅行。
「現実か、仮想現実か」
一瞬。
画面。
二つ。
「それを毎日固定する必要はありません」
天気。
予定。
体調。
仕事。
目的。
「今日に合う場所を選ぶ」
湊は。
画面を見た。
その言葉。
この世界では。
特別でもない。
朝。
天気を見る。
服を決める。
予定を決める。
そして。
どこで過ごすか。
決める。
現実。
Linkcity。
それだけ。
動画。
終了。
再生数。
二千八百万人。
コメント。
今日もLinkcity勤務。
配送に変更した。
学校がLinkcityになった。
予定を夜へ変更。
旅行は延期。
現実イベントからLinkcity会場へ変更。
無理して外へ出ない。
大量。
湊は。
コメントを閉じた。
結衣から。
通話。
「特集終わったね」
「うん」
「明日は?」
「何が?」
「気温」
湊は予報を見る。
明日。
四十六度。
「今日より低い」
「四十六?」
「うん」
「低く感じるの怖いね」
「分かる」
二人。
笑う。
でも。
確かに。
四十六度。
低い。
そう感じた。
慣れ。
数字。
感覚。
変わっている。
「明後日は?」
「三十九」
「お」
「雨」
「ああ」
「その次」
「台風接近」
「外出できないじゃん」
「来週」
「三十五」
「行ける」
「じゃあ現実で何か食べる?」
「天気変わらなかったら」
「了解」
予定。
来週。
現実。
昼食。
仮登録。
天気次第。
それも。
普通。
通話終了。
夕方。
五時四十分。
気温。
四十八度。
まだ。
高い。
湊は。
Linkcityへ。
再接続。
自宅ワールド。
窓。
開ける。
風。
設定。
二十三度。
穏やか。
夕方。
川。
山。
町。
遠く。
利用者。
歩く。
湊は。
外へ出る。
Linkcity側の。
外。
歩く。
現実では。
部屋。
アバターは。
街。
結衣。
理央。
合流。
三人。
何となく。
歩く。
「涼しい」
結衣。
「設定温度だから」
理央。
「分かっててもいいじゃん」
「まあね」
道。
カフェ。
店。
ゲームスポット。
旅行入口。
人。
多い。
現実では。
誰も歩いていない時間。
Linkcityでは。
いつも以上に。
人。
「今日は混んでるな」
湊。
「五十二度記念」
結衣。
「記念にするな」
「じゃあ五十二度避難」
「それも違う」
理央が笑う。
三人。
歩く。
現実。
仮想現実。
どちらが。
本当の生活なのか。
そんなこと。
もう。
考えなくてもいい。
今日。
現実。
危険。
だから。
Linkcity。
来週。
穏やかなら。
現実。
それでいい。
湊は。
Linkcityの街を歩きながら。
現実側の天気予報を。
視界の端へ置いた。
午後六時。
四十六度。
午後七時。
四十三度。
午後八時。
四十度。
午後九時。
三十八度。
まだ。
高い。
今日は。
現実の散歩。
なし。
湊は予定表から。
散歩。
消す。
代わりに。
Linkcity。
探索。
追加。
「どこ行く?」
結衣が聞く。
湊は。
周囲を見る。
知らない入口。
小さなワールド。
利用者。
十二人。
「ここ」
「おすすめ?」
「違う」
「何のワールド?」
「知らない」
「じゃあ行こう」
三人。
入口。
入る。
景色。
変わる。
小さな町。
植物。
川。
静かな道。
現実には。
ない場所。
外では。
五十二度を記録した日。
湊たちは。
知らない町を。
歩いていた。
危険な日に。
無理をして。
現実へ出る必要はない。
だから。
今日。
ここにいる。
そして。
天候が穏やかな日には。
また。
現実へ出ればいい。
動画サイトの天気予報は。
明日の気温だけを。
教えているのではない。
今日は。
どちらで暮らすのか。
その選択まで。
人々へ。
渡すようになっていた。
コメント
1件
あーもう、これめっちゃ刺さった。52度が「もう驚かない数字」になってる日常感、めちゃくちゃ怖いのに妙にリアル。Linkcityに逃げても現実の身体は部屋にいて、水分補強の通知が来るあたりで「完全には逃げ切れない」って描写にゾクッとした。でも「天気が穏やかなら現実で」って選択肢が残ってるのが救いにも感じた。湊たちが知らない小世界に入っていくラスト、なんか良かった…じんわり来た。