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目が覚めると、視界いっぱいに先輩の広い背中があった。 寝返りを打った拍子に、シーツの下で足が触れる。 「……起きたか」 低い、少し掠れた声。先輩は仰向けになり、天井を見つめたまま動かない。
「先輩……昨夜は、その、ありがとうございました。よく眠れました」 「嘘をつけ。お前、ずっと緊張してただろ。……俺もだ」 先輩がふっと自嘲気味に笑い、こちらを向く。至近距離で見つめ合う形になり、心臓が跳ねた。
「……あの、先輩」 私は、自分でも驚くほどはっきりと口に出していた。 「私、この旅が終わるのが怖いです。美味しいものを食べて、先輩の助手席にいて……仕事の後輩としてじゃなく、もっと近くにいたいって、思っちゃいました」
心臓が口から飛び出しそうな沈黙。 先輩は一瞬目を見開いたが、すぐにふいっと視線を逸らした。 「……バカか、お前は」
突き放される、と思った。 けれど、次に聞こえてきたのは、絞り出すような情熱的な声だった。 「……俺の方が先に、そう思ってたに決まってんだろ。じゃなきゃ、わざわざ有休溜めて、お前を連れ回したりしない」
先輩の手が、私の頬を包み込む。 「……いいよ。後輩はやめだ。……これからは、俺の女として隣にいろ」
「……先輩」 名前を呼ぶと、吸い寄せられるように唇が重なった。 昨夜までの「食欲」が、すべて相手を求める「独占欲」に変わる瞬間。 シーツが擦れる音と、重なり合う吐息。
「……腹、減ってるか?」 先輩が耳元で、意地悪く囁く。 「……今は、いいです。……それより、先輩がいい」 「……そうか。じゃあ、朝飯は抜きだな。……たっぷり可愛がってやる」
窓の外では、松島の海へ向かう観光客の喧騒が始まりかけている。 けれど、この広いベッドの上だけは、二人だけの世界。 旅の目的地なんて、もうどこでも良くなってしまうほど、深い熱に浮かされていった。
数時間後。 シャワーを浴び終え、少し乱れた髪のまま、先輩はホテルの冷蔵庫にあるミネラルウォーターを差し出してきた。 「……よし。体力使ったからな。次は、予定通り松島で**『焼き牡蠣』**だ。……しっかり食えよ。夜まで持たないぞ」
「……先輩、体力ありすぎです」 赤くなって俯く私を、先輩は満足げな、そして今までで一番優しい笑顔で見つめていた。
る る あ ︵ ︵ 🌈🍑
かんすい