テラーノベル
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夜も更け始め、母は缶ビールのロング缶、奈美は烏龍茶を飲みながら、仕事の話や恋の話をして、豪の事も少し話した。
「へぇ! あんたの好きな人は、俳優のオダガワショー似なのね〜! イケメンじゃん」
「まぁ、かなりモテると思う」
母は恋バナが大好きだ。
あと数年で還暦になるけど、恋愛の話をすると、自分が若返った気持ちになるらしい。
「オダガワショー、お母さんもカッコいいと思う! そんなイケメンと、どうやって知り合ったの?」
きっかけを聞かれて、さてどうしよう、と考える。
妥当なのは、友達の紹介とか、合コンなのかもしれない。
母親に、エロ系SNSで知り合い、クンニだけの関係なんて言ったら、椅子ごとぶっ倒れてしまうだろう。
紹介にするか、合コンにするか。
奈美は、遠くを見やりながら、逡巡して答えた。
「…………合コン」
「へぇ。奈美も合コンなんて行くんだ? ちなみに、どこにお勤めなの?」
母親くらいの世代の人って、相手の勤務先を気にする人が多いな、と思いつつ、彼の勤務先を答えた。
「事務機器や文具メーカーの向陽商会ってあるでしょ? そこに勤めてる」
「ふうん………知らないわねぇ……」
なぜか、母親のテンションはダダ下がりになった。
(まあ、知らない人は知らないよね……)
そんな事を思いつつ、彼女は母に、豪と出会ったきっかけや、デートした時に告白されて付き合った事、この連休の初日に彼が女性と一緒にいるのを、立川駅前の交差点で見た事を、かいつまんで話した。
「なるほどねぇ〜。彼っていくつなの?」
「三十二歳」
「わりと歳が離れてるのね。それに、アラサー世代の男って、オトコ盛りだよね〜」
「アラサー世代がオトコ盛りなのかどうか、私にはわかんないな」
「何言ってんの!? 男として一番脂が乗ってる年頃じゃない!」
「っていうか魚じゃあるまいし……」
奈美が、げんなりした表情を浮かべると、母は怪しい笑いを見せながら質問してきた。
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