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翌週、栞は大学のカフェで、直也に頼まれた研究室の片付けをどうするか悩んでいた。

著名な教授たちの研究室をネットで検索し、画像を見て参考にしようと思い立つ。

栞は画像を眺めながら、本棚に並ぶ趣味の品々に気づいた。彼らは、自身の著書だけでなく、趣味に関する物を本棚に飾っているようだ。



(先生の趣味はサーフィンとバンドだけど、大きなサーフボードはここには置けないし、バンドだって何の楽器を担当しているのか……)



栞が「うーん」と悩んでいると、タイミングよく直也がトレーを持ってやって来た。



「お嬢さん、しかめっ面をして何を見ているんだい?」



直也は、笑みを浮かべながら栞の前に座った。



「あ、先生! ちょうど良かった! 今、研究室の雰囲気をどうするか考えていたのですが、先生はバンドで何の楽器を担当しているのですか?」



サンドイッチを食べ始めた直也は、モグモグしながら答える。



「研究室とバンド、何の関係があるんだ?」

「有名な教授たちの研究室には、趣味の物が飾られていたりするんです。だから、先生もどうかなぁと思って」



栞はそう説明しながら、画像を見せた。

そこには、著名教授たちの研究室の写真がずらりと並んでいた。

彼らの背景には、バイオリンやプラモデル、ボードゲーム、そしてサッカーチームのTシャツやアニメのフィギュアなどが並んでいた。



「なるほどね! でも楽器は無理だな。ドラムだったから」

「ドラム? 確かに大きすぎて無理ですね」

「うん。サーフボードもデカいしダメでしょ? うーむ、他に何か良いアイデアはないかのぅ……」



直也はそう言いながら、もう一つのサンドイッチにかぶりついた。

一口が大きくて食べるのが早い。

パフェを食べるのも早かったが、サンドイッチはさらに早い。

気になった栞は、つい我慢しきれずこう言った。



「先生、食べるの早すぎです! もっとよく噛んでゆっくり食べないと」

「ブッ!」



栞がまるで母親のように注意したので、直也が思わず噴き出す。



「先生、汚いっ!」

「だって…君が変なことを言うから」



直也は飛び散ったものを拾いながら、声を出して笑った。

それにつられて栞も笑う。



そんな二人の様子を、ちょうどカフェに来たばかりの重森が見ていた。

注文した物を待つ間、何気なく店内を見渡すと、栞が見知らぬ男性と楽しそうに笑っているのが目に留まった。


重森は、楽しそうに笑う栞を見た後、その向かいに座る男性をじっくりと観察した。

その男性は、焼けた肌に彫りの深い顔立ち、そしてロン毛でかなり男前だった。



(あいつはたしか、心理学の教授の代理で来たやつか……?)



重森は思わず眉をひそめた。

その時、一緒にいた女性が声をかけてきた。



「どうしたの?」

「あ? いや、別に……」



重森は慌てて二人から視線を逸らすと、咳払いをしてごまかす。

女性が不思議そうに重森が見ていた方向に目をやると、そこには見覚えのある二人が座っていた。



「栞?」



重森の隣にいた女性、それは栞の元義理の姉・華子だった。

華子は、重森がヨット部と兼任しているイベントサークルに、他大学から参加していた。

今日はサークルの活動日なので、栞の通う慶尚大学を訪れていた。


栞の姿を見つけた華子は、その向かいに座る男性へ視線を移した。



(あの人、たしか……)



その男性が以前栞を家まで送ってきた人物だと、華子はすぐに気づいた。

彼女の好みのタイプだったこともあり、強く印象に残っていた。



(二人はどういう関係なの?)



その時、コーヒーを受け取った重森が華子に声をかけた。



「おい、行くぞ!」

「ねぇ、あそこに座ってる日焼けしたロン毛の男性って誰?」

「ああ、あいつはうちの大学病院の精神科医で、心理学を教えに来てるらしい」

「ということは、お医者様で教授ってこと?」

「うん。入院中の教授の代理で来てるらしいから、たぶん短期間だと思うけどな」



重森は不満気に答えながら、少し苛立った様子で華子を急かした。



「ほら、行くぞ!」



重森に急かされ、華子はしぶしぶ彼の後ろを歩き始めた。




その日、直也の講義を終えた栞と愛花は、再び直也の研究室を訪れた。


数日前、栞は直也に関するすべてを愛花に打ち明けていた。勘の鋭い愛花に、これ以上隠し通すのは難しいと思ったからだ。

愛花は、なぜこれまで栞が誰とも付き合わなかったのか、その話を聞いて納得したようだ。

そして、栞が初恋の人と再会できたことを、心から喜んでくれた。



「私、俄然、栞の初恋を全力で応援するわ!」

「ありがとう、愛花。でも、これは私の片想いだから、なるべくそっとしておいてくれると助かる」

「何言ってんの! 再会したのは運命なんだから、このチャンスを活かさなくてどうするの?」

「ううん、いいの。私は、先生のことを見ているだけで満足なんだから」

「まったく、栞ったら―!」



愛花は呆れたように言いながらも、心の中では二人を必ず結び付けようと固く決意していた。



二人が研究室に入ると、部屋は先週とまったく変わらず、散らかったままだった。



「お二人さん、今日もよろしくねぇ!」



直也はのんきな様子で声をかけた。



さっそく二人は、アンケートの集計作業に取りかかった。

協力しながら手際よく進めたおかげで、わずか一時間で作業を終えた。



「先生、終わりました!」



愛花はそう言いながら、集計結果とアンケート用紙の束を直也の机に置いた。



「お! サンキュー! 早かったな! いやぁ、助かったよ。バイト代払わないと……」



そこで、愛花が慌てて言った。



「先生! 教授と学生の間での金品授受はダメです! だからその代わりに、何か奢ってください!」

「愛花ちゃん、しっかりしてるなー! だったら、来週学食のランチでもどう?」

「学食よりも、西校舎横のカフェでパスタとスイーツがいいなー!ね? 栞?」

「う、うん」

「はいはい、じゃあパスタとスイーツのセットってことで決まりね!」

「やったー!」



愛花は万歳をして喜ぶ。そんな彼女に、直也が言った。



「実は、栞ちゃんにこの部屋の片付けをお願いしていたんだけど、愛花ちゃんも手伝ってくれないかなぁ?」



そこで、栞が説明した。



「取材が入るから、この部屋を綺麗にしたいんだって」

「えっ? マジですか? それってテレビですか新聞ですか? それとも雑誌?」

「テレビ」

「キャーッ、すごい! 取材って、もしかして出版した本の関係でですか?」

「まあそうかな」



栞は驚いていた。取材なのは知っていたが、まさかテレビだとは思ってもいなかった。


そこで、愛花がこう提案した。



「だったら、取材当日、栞と一緒にお手伝いしましょうか? テレビクルーの方たちに、お茶出しとか必要でしょ?」



気の利く愛花の申し出に、直也は嬉しそうに頷いた。



「いいね、ぜひ頼むよ! 取材日が決まったら連絡するから! んで、今日は残れるの?」

「あ、私はこれからバイトなのでパスでーす! 栞は大丈夫だから、彼女に任せてください! じゃあ教授、また来週! 失礼しまーす! 栞、またね!」



愛花はにこやかに挨拶をして、元気良く部屋を後にした。



「ほんと、愛花ちゃんはいつも元気だなぁ」



その言葉に、栞はクスッと笑った。



「愛花が元気がないのは、彼氏と喧嘩をした時だけです」

「なるほど! 愛花ちゃんの彼氏って、ここの学生?」

「はい、ヨット部の人です。あ、でも医学部じゃなくて歯学部の人!」

「そっか。ああ、それで、栞ちゃんもヨット部のイベントに参加したのか」

「はい」

「なんで入部しなかったの?」

「それは……やっと念願の一人暮らしを始めたので、時間に拘束されたくなかったっていうか……」

「たしかに、サークル活動は結構忙しいもんなぁ」

「はい。それに、土日はバイトがあるし、父のところにも顔を出さなくちゃだし…」

「そっか」

「あ、そうだ! 先生に一つ報告があります」

「報告?」

「うちの父にも、春が来たみたいです」

「春? え? マジで?」

「はい」

「それって、好きな人ができたってこと?」

「まあ、そんな感じです」

「えーっ? 相手はどんな人?」



直也は、興味津々の様子で身を乗り出した。



「えっと、じゃあ、この話はクリニックでは絶対に内緒ですよ!」

「え? 何で?」

「実は、父が気になっている相手は園田さんなんです」

「ハッ?」



直也は、かなり驚いている様子だった。

そこで、栞は銀座での出来事をすべて直也に話した。



「それはまたタイミングよく出会ったね」

「はい」

「たしか、園田さんは君のお母さんに似てるんだよね?」

「はい。父も会ってそう感じたみたいです」

「それは運命的だなぁ。いや、全然いいと思うよ。君のお父さんはまだ若いんだし、これから人生を立て直しても全然遅くはないしね。それに、園田さんは本当に良い人だから、幸せになってもらいたいよなー」

「はい。私も園田さんがお母さんになってくれたら嬉しいかも」



栞がニコニコしながら話すのを見て、直也は安心したように微笑む。



「もうすっかり前の家族のことは乗り越えたみたいだね」

「はい。今はもうまったく気にならないです。あ……でも……」

「ん?」

「義理の姉がうちの大学のサークルに入っていて、キャンパス内でたまに見かけるんです。だから、バッタリ会わないように細心の注意を払わないとですが」

「そうなんだ。でもさ、ここは君の大学なんだから、堂々としていればいいんだよ」



その言葉に、栞の胸がじんわりと温かくなる。



(また、先生に励まされた……)



栞は直也の笑顔を見つめながら、自分がこれまでこの笑顔にどれほど救われてきたのだろうかと思い返した。

そして、胸がさらにジーンと熱くなる。


その時栞は、直也の笑顔が自分にとって特別な存在であることを、改めて強く実感した。

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コメント

16

ユーザー

愛花ちゃん、栞ちゃんのフォロー& 直也先生との仲を取り持つキューピッド役も お願いね~♥️🍀✨ どうか重森&元義姉の邪魔が入りませんように....🙏

ユーザー

もう栞ちゃんと直也先生相性ぴったりの二人に見えるんですけど❤️ 華子ちゃん 重盛君 邪魔しないで‼️ そして愛花ちゃん 奥手な二人をよろしくね(*^^*)

ユーザー

愛花ちゃんから強力な協力してくれますね💖栞ちゃんパパと園田さん💘のことにビックリの直也さんやテキパキ愛花ちゃんとの幸せで楽しい回✨かと思いきや、ピリリ🌶️と重・華が…何もしてこなきゃ良いな😵‍💫 「良いアイデアはないかのう」また直也さんの好きな言回しです😘 研究室のインテリア、ドラムスティックなら大きさ的にちょうどいいかも!?🥁😅

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