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「どうした? 何故こんなところに来たんだ?」
だけど、閻魔大王は殊の外優しそうな人柄だった。
かなり忙しい身のはずなのに、親切に俺に聞いて来た。
「あ、俺。亡くなった妹を地獄から救いに来ました。きっと、冤罪なんだ。俺の名前は勇気 火端 勇気です。妹は火端 弥生」
「……火端 弥生? ……ふむ。……冤罪? うーん……」
閻魔大王は腰に差した閻魔帳の一つを俺に渡してくれた。
「そこに君の知りたいことが全て載ってあるはずだ。弥生という君の妹が地獄へ落ちたなら、地獄へ行く理由の善悪のことがはっきりと書かれている」
「は、はい! ありがとうございます!」
「そうだ……その閻魔帳は、私が休暇中の時にも、代わりに獄卒が付けてくれたようだから、非常に正確のはずだ。だが、万が一にも。間違いがあったり、食い違いがったり、新たな発見がるかも知れないな。君が冤罪だと思うのなら、そうかも知れない。さあ、私は忙しいのだ。帰った。帰った」
閻魔帳とは、死者の生前の善悪を記しておくという帳簿だ。その帳簿には、弥生の生前の善悪が全て載ってあるはずだ。果たして、弥生は本当に俺の思う通りの冤罪のなのか?
いや、ここで読んでしまえばわかるはずだ……。
「火端さん?」
そこで、後ろから音星の呼び声がした。
俺は振り向くと、死者に紛れた音星がいた。
右手に持っている閻魔帳に気がついて、こちらを心配しているようだけど、俺は最初から平気なんだ。
弥生は絶対に助けると決めたからなんだ。
俺がニッと微笑むと、音星がコックリと頷いた。
「それは、閻魔帳ですね。やっと弥生さんが本当に冤罪なのかがわかりますね。火端さん? あちらの角で読んでみましょうよ」
「ああ、さすがにここで読むには死者たちに邪魔になるか……」
音星の指し示した坂道の角は、何の変哲もない木が立っていた。風も吹かない場所なので、木の葉が揺れたり落ちたりもない。
ここも、殺風景だな。
俺は音星と共に、閻魔帳から火端 弥生の書かれた文章を探した。
うん?
昔の文章だな。
それも書簡とかいわれるものに使うような文章だ。
なになに……。
火端 弥生
●月●日 火曜日
飲酒に姦淫の疑い。
酔っぱらっての周囲を惑わす妄言。
車で人を轢く。
轢かれたものは……。
「坊主??」
「お坊さん?」
俺は目が回り、音星と顔を見合わせた。
「あ、続きがありますね」
音星が次を急いだ。
「ああ……うん? 丸坊主?」
「あ! 最初から丸が抜けているんじゃないでしょうか? この文章? 丸坊主なのに、坊主と書かれていますね」
…………
うーん。
丸坊主? って、ことは弥生の言った通りに非合法組織の幹部のようだな。
これは……。
多分……。
弥生は冤罪の可能性大大大だ!!