奈美は、黙ったまま頷くと、豪は遠くに目を向けた。
「……コレを言ったら、奈美にドン引きされっかな〜」
豪が、額に掛かる前髪を、クシャッと掴んで後ろに流す。
「今はもう、彼と彼女の関係になったから言えるんだけどさ……」
彼は、何かを迷っているようだった。
「あ〜でもなぁ〜……コレ言って奈美に嫌われたら、すっげぇ落ち込むな、俺……」
(何をためらっているんだろう? そんな私に言いにくい事なのかな……?)
奈美に、じっと眼差しを送られて観念したのか、豪が恥ずかしそうに、彼女の額にキスを振った。
「俺、いつも奈美にクンニしてイカせた後、君が眠ったのを確認してから、バスルームで……その…………抜いてたんだよ」
「えっ……?」
奈美は黒い瞳を、更に大きくする。
豪が自慰行為をするのが、意外に思った。
「奈美に会った時は、口淫の後、いつも抜いてた。君の感じてる声と、表情を思い出しながら……。生々しいだろ……?」
奈美からすれば、豪は、恋愛経験が豊富で、女性の扱いに慣れているイメージ。
自慰行為なんてする必要がないのでは? と思ったのだ。
かと言って、そんな事で彼を嫌いになるわけではない。
「クンニまでしちゃうと、男としてはセックスしたくなる。けど、奈美はあのエロSNSのプロフでは、クンニだけの関係を求めてただろ?」
コクリと頷きながら、自分の性的経験値の乏しさに、恥ずかしくなってしまう。
豪には、色々と性について悩みとか話したけど、今では、本当に男の人を知らなさ過ぎた、と奈美は思わざるを得なかった。
「もっと正直な事を言えば、セックスもワンチャンあるかな、って、奈美と会う直前までは思ってた。けど……」
「けど……?」
「実際に奈美に会って、俺は一目惚れした。君を見て、軽い気持ちで抱けないって思ったんだ」
豪に寄りかかりながら、彼の胸の内を、奈美は、ただ耳を澄ませる。
「もし相手が奈美じゃなかったら……俺はワンチャンセックスしてたと思う。それなりに女と付き合ってきたし、ワンナイトの関係も何度かあったし……」
豪が、一区切りさせるように、フウっと大きくため息をついた。
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