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昼休み。
教室の空気はざわめいていた。
誰かがスマホを掲げ、「ねえ、見た? あれ」と笑う。
画面には、匿名アカウントで晒された遥の写真。
目線の先にいる本人を、誰も隠そうとしない。
「うわ、これマジでウケる。キモくない?」
「てか、なんで生きてんの? こういうの見ると元気出るよね」
「先生もさ、こういうやつのこと“繊細”とか言って甘やかすけど、ただの構ってちゃんじゃん」
「自分のことばっかで、他人の気持ちとか考えたことなさそう」
「こういうやつが、陰で人の悪口書いてそう。てか、もう書いてるでしょ」
「わかる。顔も、声も、存在が無理」
教室の真ん中にいるのに、誰も遥を見ていないようで、全員が見ていた。
笑い声が、空気の粒みたいに肌に刺さる。
否定の言葉が、ひとつずつ、人格を剥ぎ取っていく。
「ねえ、反論しないの? “そうじゃない”とか言えば?」
「言えないってことは、図星ってことでしょ?」
「てか、さっさとアカウント消せばいいじゃん。自分で晒したんでしょ、どうせ」
「……あんたのそういうとこ、ほんと気持ち悪い」
遥は何も言わない。
何を言っても、もっと燃料になることを、もう知っていた。
笑いながら「正義」を掲げるクラスメイトたちは、自分たちをいじめ加害者だとは思っていない。
むしろ、「空気を守る側」だと信じている。
机の上のスマホが震えた。
新しい通知。
《#消えろ遥》
タグがひとつ、またひとつ、増えていく。