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夜、スマホが震えた。画面に表示されたのは、クラスのグループLINE。
表向きは雑談用。けれど、遥を入れているのはこのためだった。
「今日の授業、また“あいつ”だけ浮いてたね笑」
「うん、見てるだけで空気重くなる」
「てかさ、あれで“普通にしてる”つもりなのかな?」
「多分そう。鏡見たことないんじゃない?」
「言ってあげたほうが優しさじゃない?」
「じゃ、今言えば? ここ見てるし」
通知が鳴るたび、遥の名前だけが沈黙のまま光る。
その「既読1」が、彼らにとって一番の娯楽だった。
「あー、また既読ついたwww」
「反応しないとつまんない。スタンプ押してみ? 見てるんだろ?」
「無視って、ほんと卑怯だよね」
「あ、スクショ撮っとこ。“今日も無言”って投稿しよ」
「“無言の主張=自己中”ってタイトルでどう?」
「あーいい、いい。うちら教育してあげてる感じする!」
笑いのスタンプ、拍手のスタンプ、炎のスタンプ。
画面がカラフルに点滅するたび、遥の世界は少しずつ灰色に沈んでいく。
別のグループでは、彼のいない場所で、また別の笑いが生まれていた。
“痛めつける用”と“排除する用”の二層構造。
どちらにも共通しているのは、「存在を面白がる」という冷たい目的だった。
暗い部屋の隅で、遥は背中を丸めて布団に潜り込んでいた。
スマホが震えるたび、心臓が跳ね上がる。
夜の静けさに、通知音のひびきが異様に大きく響いた。
画面にはクラスのグループLINEが開かれている。
そこには、彼を「遊び道具」として入れたメンバーがいた。
「寝てるの? 起きて見ろよw」
「起きて反応しないと、マジで哀れだよね」
「既読つけたけど何も言わないwww」
通知が立て続けに飛び、スマホの画面が光るたび、遥の体は硬直する。
手が震えて画面を押すこともできない。
「今日の俺たちの授業もウケたな〜」
「あいつ、ほんと存在感だけあるのに中身ないんだよね」
「人間じゃなくて、飾りって感じw」
画面の文字は、まるで指先で彼の心を突き刺す針のようだった。
どれも、笑いながら放たれた刃。
彼の胸は痛いのに、涙は出ない。
ただ、震えと冷や汗だけが、体中を這った。
遥は布団の中で小さく丸くなり、震える手でスマホを押さえる。
通知が鳴るたび、体の奥から恐怖と屈辱が溢れる。
その痛みの大きさに、眠ることもできず、目だけが冴えていった。
「明日、顔見に学校行くの楽しみだわw」
「あいつの顔、みんなで笑えるようにしてやろう」
「反応したらもっと面白いのにwww」
その言葉の一つひとつが、遥の心を抉る。
彼はスマホを握りしめたまま、布団の中で小さく息を吐くしかなかった。
痛みも屈辱も、誰にも届かないまま、夜は長く続いた。