テラーノベル
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「そうそう、美花。お義兄さんとはうまくいってるの?」
食事もある程度済んできたところで、美花は奏に話を振られると、虚な瞳の色を滲ませ、唇を軽く噛む。
「…………美花? 何か……あったの?」
「それが……実は……」
怪訝な表情を見せる奏に、美花は覗き込まれる。
彼女は、バレンタインデーの前日、圭と会う直前に起こった出来事を奏に話していなかったのを思い出し、辿々しく口を開いた。
彼女の話を黙って聞いていた奏の表情が、徐々に引きつっていく。
「はぁ? 何なのそれ!! あんた、元カノと会った直後にお義兄さんと会ったんでしょ? 言わなかったの?」
「…………」
頬を紅潮させている奏は、怒りに震えるような声音で問い掛けると、美花が黙って首肯する。
「何で言わなかったのかなぁ……。お義兄さんの今の恋人は、美花でしょ!? ああもうっ! すっごく……もどかしいんだけどっ」
奏と美花の様子を伺っているのか、奈美が黙ったまま、交互に眼差しを向けている。
「ごっ……ごめん……。感情的になり過ぎた……」
ヒートアップした自分に、はたと気付いた奏が、バツが悪そうに口元を手で覆う。
美花は、そんな奏の様子に、力なく笑みを浮かべた。
「元カノの事は圭ちゃんに言えなかったけど……。私が子どもを産めない身体だっていう事は、正直に伝えたよ。圭ちゃんは、『美花が先天性の病気だろうと……左腕に傷があろうと…………俺には関係ない。俺にとって、美花の全てをひっくるめて…………大切で愛おしい存在なのは変わらない』って言ってくれたけど……」
美花は、目の前にあるグラスが水滴に覆われ、伝い落ちていく様子を見ながら、フゥッと息を吐き切った。
「だったらOKじゃない? お義兄さんは美花への気持ちを、しっかり伝えてくれたんでしょ?」
奏が、まだ納得しきれていないのか、美花に言葉をぶつけてくる。
「圭ちゃんの元カノは、まだ彼の事が好きだって言ってたし、私に『圭と別れてくれ』って言ってきたんだよ? 私が子どもを産めない身体だっていうのも知ってたし、それに、私が持ってた圭ちゃんに渡すプレゼントを奪い取って、グシャグシャに踏み潰すような人だよ?」
美花は、当時の事が頭に過り、瞳の奥がカッと熱くなるのを感じた。
「多分、元カノは彼と連絡を取ってると思うし、圭ちゃんと会ったら…………元カノに何をされるか分からないし、怖い……」
「もう…………めちゃめちゃ悔しいんだけどっ……!」
「美花……」
奏は怒りが再燃しそうなのか、クールビューティな面差しを顰めさせ、奈美は何と言えばいいのか分からないのか、美花の名前をポツリと零している。
美花は、幼い頃からの親友たちに、それぞれ眼差しを向けた後、背筋を伸ばして居住いを正した。
恵
コメント
1件
うわあ、今回も美花の心情がぎゅっと詰まってて胸が痛かったです……。「元カノにプレゼントを奪われて踏み潰された」ってエピソード、初めて聞いたけどそんなことがあったんですね。奏の「もうめちゃめちゃ悔しい」には完全に同感。でも、圭くんが美花の全てを愛おしいって言ってくれたのは本当に救いですよね。この子たち、ここからどうやって前に進むんだろう……続きが気になります。