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第21話:絶香者との模擬戦
訓練センター第三アリーナ。

ここは特殊な試合用に造られた空間で、壁や天井に大型換気装置が並び、香波を拡散・乱流させることができる。

黄波地区合同練習の最終メニュー——絶香者との模擬戦が始まろうとしていた。


「おう、拓真。今日は組むぞ」

低い声が後ろから聞こえた。

振り返ると、長身で筋肉質な青年・陸(りく)が立っていた。

髪は短く刈り込み、ジャージの袖をまくった腕には傷跡がいくつもある。

そして、彼の周囲には——何も見えない。香波者なら誰もが見えるはずの波の色が、一切。


「……無香域か」

拓真は息を呑む。陸は絶香者。強烈な自己香波が常時周囲の波感知を狂わせる存在だ。

そのため相手の波も、自分の波も、この範囲では感覚だけでは読めない。


対戦相手は橙波地区の精鋭ペア。濃い橙色の波を堂々と放ち、開始の合図とともに攻めてきた。


——だが、無香域に踏み込んだ瞬間、彼らの波の輪郭が滲み、色が曖昧になっていく。

陸は表情を変えず、真正面から突進。

「拓真、左!」

声だけで指示が飛ぶ。波で位置を読むのではなく、目と耳で状況を掴むしかない。


拓真は瞬時に反応し、左側から回り込んだ相手の足元を狙って捕縛リングを放つ。

感覚頼りの動きだったが、相手は躱しきれずにリングにかかり、体勢を崩したところへ陸のタックルが直撃。


審判の旗が上がる。

「ヒット、黄波ペア!」


試合後、陸は肩で息をしながら拓真を見た。

「波が見えなくても動ける。それは大きな武器だ。香波社会じゃ珍しいタイプだぞ」

拓真は笑みを浮かべる。

「じゃあ……俺にも、勝ち筋はあるってことですね」

陸は頷き、背を向けて歩き出す。

——香波だけがすべてじゃない。その確信が、拓真の胸に刻まれた。


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