しばらくすると岳大が呟いた。
「困りましたね。モデルがいないと写真撮影が出来ないな……」
それを聞いて誰も何も言えずにいた。
するとその沈黙を、優羽の兄・裕樹が破った。
「だったらここにいる人達がモデルになったらいいじゃないですか。ちょうど子役もいますし」
それを聞いた優羽は兄をたしなめるように言った。
「お兄ちゃん! 素人の子供がカタログのモデルなんて出来ると思うの? 馬鹿な事言わないで」
「いや、それは名案かもしれない!」
岳大が言ったので優羽はびっくりした顔をする。
「そうか、それはいい考えかもしれない。今日呼んでいた子役モデルはちょうど流星君くらいの子供ですからね。あとはそうだな、パパ役とママ役が必要ですね」
井上は急に元気を取り戻して言った。そして優羽をチラリと見ると続けた。
「ママ役はいるから、あとはパパ役ですね!」
井上は笑顔で岳大を見た。
井上と顔を見合わせて微笑みを浮かべた岳大は、今度は優羽を見る。
優羽は岳大がなぜ自分を見て微笑んでいるのか理解出来ずにきょとんとしていたが、急にハッとしてその意味に気付く。
「私モデルなんて無理です!」
「そこをなんとかお願いできませんか? このピンチを乗り越えるために」
岳大はそう言った後、今度は夏樹に向かって言った。
「あとは、そうだな……パパ役は涼平、お前に頼んでもいいか?」
「俺っすか? まさか冗談を!」
「冗談じゃないよ。お前は海で鍛えているからマッチョでイケメンだし、日焼けしていてアウトドアのモデルにはぴったりだ」
そう言って笑うと、じゃあ準備を始めるぞと井上に声をかけて機材を組み立て始めた。
その時、電話を終えた田村が話し始めた。
「どうやら今回の件、『mountain top7』が絡んでいるらしいです。今日来る予定だった三人のモデルは向こうのカタログのモデルに起用されたようでドタキャンしたみたいです。うちへの違約金はいくらでも払うと言っているらしいから、きっと向こうの会社が一枚噛んでいますね。それにしても汚い手を使ってくるなー」
「マジですか? それは酷いですね。向こうは大手でしょう? 俺達弱小ブランドなんて相手にする必要ないのに、なんでそんな酷い事をしてくるんでしょう?」
井上が嘆くように言うと田村がさらに言った。
「それだけじゃないんですよ。俳優の大和翔真にもイメージキャラクターのオファーをかけているらしいです。今、同業者からの情報でわかりました。ほんと、やり口が汚いですね」
田村はとても悔しそうだ。田村は今日の撮影の為に身を粉にして準備してくれていたのでかなり無念な様子だった。
田村の悔しそうな顔を見た岳大は、慰めるように田村の肩をポンと叩いてから言った。
「とりあえずは今目の前にある課題に取り組みましょう。優羽さん、モデルをお願いできますか?」
優羽は田村の話を聞き『mountain top7』の西村に対して強い憤りを感じていた。なぜそこまでしてこちらのブランドを目の敵にするのか? 優羽は西村に対して許せない気持ちでいっぱいだった。そして意を決したように言った。
「わかりました。自信はありませんがやってみます」
優羽は力強い眼差しで岳大の目を見つめるとはっきりと言った。
優羽の視線を捉えた岳大は大きく頷く。
その瞬間その場にいた仲間達は一斉にホッとしていた。
そしていよいよ『peak hunt5』のカタログ撮影がスタートした。
コメント
4件
ここで『月遊び』の田村さんも登場ですね😃
西村が邪魔してくれたから、こちらはホントの親子➕涼平さんだから負けてないわよ😤
イケイケーっ‼️絶対にいい写真とカタログができる(•̀ᴗ•́)و ̑̑ 見てろ〜っ٩(`・ω・´)و オォォォ!!!