テラーノベル
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スマホの画面を開いた瞬間、胸の奥に鋭い刃が刺さるようだった。グループLINEの文字列が、まるで自分の存在を切り刻む音に聞こえる。
〈遥ww今日のスピーチ、地獄だったわ〉
〈見てて泣きたくなるレベルw〉
〈暗すぎて逆に笑えるwww〉
〈声、小さすぎww聞こえてないんじゃね?〉
遥の指は動かない。震えて、触れることすら怖い。
文字が画面を跳ねるたび、体育館での冷たい視線と笑い声が蘇る。
〈あのテーマ、誰得? ひとりでいる時間とかwww〉
〈暗いとか通り越して、存在が笑えるww〉
〈見るたびに胸糞悪くなるwww〉
胸が焼けるように痛い。喉も、声も、存在そのものも凍りつく。
文字だけで、これほどまでに人を叩き潰せるのか――。
〈遥、さすがにスピーチはもうやめた方がいいと思う人ーw〉
〈手あげろww〉
〈全員あげろwww〉
〈無理にやらせるともっと滑稽www〉
涙が出そうになるのを、必死でこらえる。
でも心の奥では、もう無力感と恐怖が渦巻いていた。
自分が“見せ物”にされ、笑い者にされる――その事実が、痛くて、痛くてたまらない。
〈目、赤かったよなw〉
〈泣きそうになってるの見えたwww〉
〈いや、見えすぎて笑ったw〉
〈可哀想すぎて逆に面白いwww〉
一文字一文字が、自分の存在を否定している。
誰も止めない。誰も止められない。
返信しようと指を伸ばしても、声も言葉も、画面に吸い込まれて消えてしまう。
〈遥、次もスピーチやれたら面白いなwww〉
〈いや、むしろ無理やりやらせろwww〉
〈絶対見たいwww〉
〈可哀想すぎてお腹痛いwww〉
肩が震え、胸が焼ける。
声にならない叫びが、頭の中でぐるぐる回る。
自分は笑われるためにここにいるのか——。
笑おうとした自分の顔は、画面の光に映り、苦悶で歪んでいた。
夜は静かで、でも画面の光だけが容赦なく照らす。
全員に見透かされ、笑われ続ける感覚。
皮膚の下、骨の奥まで、痛みが染み渡る。
誰も助けてくれない。誰も守ってくれない。
ただ、笑い声と文字だけが、残酷に、残酷に、押し寄せてくる。
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