「ここならいいだろう。じゃあかかっておいで」
今は街の外に出てきて少し離れた丘の上。魔術が見たいと言った私に、なら見せてあげると言ってここまで連れられてきたっすけど──。
「私は魔術が見たいんすよ? なんで対戦みたいになってるっすか? こんなか弱い少女相手に」
「俺の魔術を見せるならその方がいいってことだよ。それに、か弱くはないだろ?」
ミーナちゃんが離れて三角座りしてニコニコしながら見ている。依然2人は繋がっている。これは言うまでもなく魔力によるリンク。何の作用なのかは分からないっすけど。
「はぁ……じゃあ、行くっすよ?」
踏み込み、ハイキック。私の身長じゃせいぜいビリーさんのアゴ辺りまでだけど。
ビリーさんはかわ……さない。そのままクリーンヒットしてしまった。それでも上体を横に向けたくらいで立ったままっす。
「え? 避けられたっすよね? なんでくらってんすか?」
思い切り振り切る蹴りとは言え様子見。バレバレのモーションで当たる事なんて想定してないっす。
「まあ、普通に速すぎるしどんなのか試しに受けてみようってね」
ビリーさんはピンピンしている。というか全く効いていないっす。
「なるほどっす。その繋がりは、そういう事っすか」
遠慮なくパンチとキックの乱れ打ちっす。
「まあ、繋がりってのが見えてるのは予想外だけど、ミーナと意思疎通するためと、ちょっと魔力を借りることが出来るだけなんだけどね、これは」
つまり──。
「俺は魔力を纏って防御するベールを作り出す。あとは魔道具を使えるくらいなのかな?」
ビリーさんは全くダメージを受けてないっす。そのベールってのがそれほどに強固なのはわかったっすけど。
「なんで幼女の魔力をあてにしてるんすか」
被保護対象から力を借りる保護者って。
「まあ、それは置いといて……じゃあ俺から一度だけ」
そう言ってビリーさんは腰の剣に手をかけて──
風が私の周りに吹き荒れたっす。風、正確には斬撃。その剣閃はその気になれば私をすぐさまバラバラにしただろうと思わせるほどに。なんて凄い。抜いたところが全く見えなかったっす。
剣を納めたビリーさんは何だかプルプル震えてるっす。さっきの凄まじい斬撃は代償とかで、何か副作用とかあるやつだったんすかねえ? ちょっと心配になるっす。
「何この子、うさ耳とか超カワイイっ! ぐはぁ」
「あっ」
私がかぶっていた帽子は風に飛ばされていたようで……帽子で隠していたうさ耳が見えてビリーさんが何故か興奮したところを、ミーナちゃんがお腹に綺麗な後ろ回し蹴りを決めて止めるという、どう反応すれば良いのかわからない寸劇が行われたっす。
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