ロッジへ戻り高瀬に礼を言ってから二人は部屋へ向かった。
部屋へ入り陸がバッグを置いて中から何かを取り出そうとしていると後ろから華子が抱き着く。
「陸、ありがとう。私、思い切って北海道に来て良かった」
陸は背中から抱き着く華子の手に自分の手を重ねると言った。
「俺も来て良かったよ。華子のお父さんに挨拶出来たからな」
陸はそう言った後くるりと向きを変えて華子をしっかりと抱き締めた。
陸のガッチリした背中に手を回す華子は甘えるように陸を見上げる。その小悪魔のような華子の事が陸は愛おしくて仕方がない。
「私ね、今陸が好きで好きで仕方ないの。陸の顔を毎日見ないと駄目なの。陸が傍にいないと淋しいし陸の隣で眠らないと不安なの。もうね、陸のストーカーになりそうなくらい陸が好きで好きでたまらないの」
華子の突然の告白に陸は驚いた。なぜならプライドが高い華子がそんな事を言ったからだ。
「そういう愛の告白はいくら聞いても飽きないな。もっと言ってくれよ」
陸がソファーにドカッと座ると華子を引き寄せ膝の上に横座りにさせる。
そして間近にある華子の顔を覗き込んでから言った。
「もう一度言ってくれ」
「んもうっ、さっき言ったでしょう? ちゃんと聞いてなかったの?」
「聞いていたさ。でも何回でも聞いていたい、いや違うな…永遠に聞いていたいんだ」
「フフッ、ざんねーん、もう言いませーん」
華子が笑いながら言うと陸は華子の耳に息を吹きかけながら甘く囁いた。
「もう一度聞かせておくれ、ハニー」
あまりにもセクシーな陸の声に思わず鳥肌が立つ。
華子は心臓の音をトクントクンとさせながら仕方なくもう一度繰り返す。
「しょうがないわねー、だからぁ陸の事が好きなの。陸の事が大好きでたまらないのよ。陸がいないとダメだし陸の傍にずっといたいのよ」
陸は顔を真っ赤にして言う華子を見ながら笑いをこらえていた。そして華子が言い終わったところで右手の人差し指を華子の唇に這わせる。
そのなんとも言えない指の動きに華子の心臓がドキドキと高鳴る。
そこで陸が言った。
「ずっと俺の傍にいればいい、ずっと俺を愛していればいい、俺も華子を絶対に離さないから」
陸は優しく微笑むと華子の柔らかな胸にその顔を埋めた。
そして二人は夕食までの時間をベッドの上で濃密な時間を過ごした。
次の日札幌へ行く前に二人はもう一度慶太を見舞った。
「今度会うのは結婚式でかな?」
「ううん、その前に何度でも会いに来るわ。その時は私の手料理も振る舞うわ」
「おお、そりゃあ楽しみだなぁ! だったら陸君とも一杯やらなくちゃな」
「お酒はまだ駄目よ!」
華子は看護師のように厳しく言う。そんな華子に男性二人が笑い声をあげる。
そして二人は病院を後にした。
この日ロッジをチェックアウトする際、二人は高瀬に礼を言った。
華子は今後の事を高瀬にお願いする。
「父の事、よろしくお願いします」
「心配はいりませんよ、任せて下さい」
高瀬は華子を安心させるように言った。
二人は空港に行く前に少しだけ札幌観光をする事にした。
「といっても、そんなに時間はないわよね?」
「ああ、でもちょっと行きたい所があるんだ」
陸が行きたい場所があると言ったので華子は付き合う事にする。
札幌は陸の出身地なのできっと懐かしくて行きたい場所があるのだろう。
岩見沢からは一時間足らずで札幌へ到着した。
陸は駐車場へ車を停めると大きなデパートがある通り沿いを歩き始めた。
「買い物?」
「ああ、華子の婚約指輪を買わないとな。札幌だったら有名ブランドも揃っているしチラッと見て気に入ったのがあれば買うか? もしなければまた東京で買えばいいし」
「え?」
全く想像もしていなかった事を言われたので華子は驚いていた。
「華子はどのブランドがいいんだ?」
華子が驚いたまま無言でいるとデパートのショーウィンドーに淡い水色のディスプレイが現れた。
華子の目はその店に釘付けになる。
「私、あの店のジュエリーが憧れなの」
華子は吸い込まれるようにショーウィンドーへ近づく。
それは陸でも知っている女性に大人気の有名ブランドだった。
「オードリー・ヘプバーンの映画を観て婚約指輪は絶対このブランドがいいって決めていたの」
「そっか、じゃあ中で見てみようか」
「でもここのジュエリーは高いわよ、大丈夫?」
「一生身に着けると思ったらそんなに高くないんじゃないか?」
華子はそこで『一生』という言葉にジーンとなる。
自分はこれから一生この人の傍で生きていくのだと思うと胸がいっぱいになる。
それから二人は店に入り婚約指輪をいくつか見せてもらった。
華子が一目惚れしたのはシンプルなプラチナの台に四角いエメラルドカットの大きなダイヤモンドが載った指輪だった。
よくあるラウンドタイプのブリリアンカットを選ばないのが華子らしい。
そのスクエアの個性的なカットは気高く美しい華子によく似合っていた。
指輪のサイズは華子の指にピッタリだったのでそのまま持ち帰る事が出来た。
店を出た二人は手を繋ぎながら札幌の街を歩き始めた。
「陸、素敵な指輪をありがとう。一生大切にするわ」
「ん、気に入ったのが見つかって良かったな」
陸は満足気に頷くと、まだ少し時間があるからと言って華子を時計台へ連れて行った。
時計台の敷地内に入ると陸がぽつりと言った。
「高校生の頃だったかな? いつかプロポーズをする時はこの時計台の前でって思っていたんだ」
「何それー陸かわいいー」
華子は思わず叫ぶ。
その時先に時計台を見学していたカップルが表通りへ出て行った。
時計台には陸と華子の二人だけになった。
そこで陸は華子と向かい合うと先ほど購入した指輪の箱を袋から出した。そしてリングケースの蓋を開け指輪を取り出すと真剣な表情で華子に言った。
「君を一生大切にする。そして君を世界一幸せな奥さんにすると約束する。だから華子、俺と結婚してくれ」
二人の婚約は、元々は華子が陸にプロポーズをした事が始まりだった。だからなんとなくその流れで婚約したので陸からはプロポーズをしていない。
しかし今陸は確かに華子にプロポーズをした。
陸のプロポーズを聞いた瞬間華子の瞳からは涙が溢れてくる。返事をしなくちゃと焦れば焦るほど喉が詰まって上手く声が出て来ない。
それでも華子は必死に答えた。
「陸…末永くよろしくお願いします」
すると陸は満足そうな笑みを浮かべてうんと頷くと華子の薬指にダイヤモンドの指輪をはめた。
華子の薬指には以前陸がプレゼントした指輪と今日贈ったエンゲージリングが仲良く並んでいる。
二つの指輪は相乗効果によりさらにいっそう煌びやかな光を放ち始めた。
コメント
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華ちゃん・陸さんご婚約おめでとうございます🩷 ムーンリバーが聞こえて来そう✴️💍✴️
華子チャン、陸さん、 ご婚約おめでとう✨💍✨ 華子チャン、陸さんにプロポーズして貰えて 本当に良かったね~🥺💖 あのプライドが高く気の強かった華子チャンが、陸さんの前では 甘々な恋する乙女.... そして、そんな彼女が可愛くてたまらない陸さん♥️♥️♥️🤭 ラブラブなお二人💖いつまでもお幸せに🍀✨
陸さんのあふれんばかりの愛に満たされて胸いっぱいの華子🌹 ずーっと寂しかったのに陸さんのおかげでたくさんの幸せを貰えてもう離れることができないと悟ったらストーカーにもなっちゃうね💝それもお互い様🫶🫶 華子が陸さんと本気で愛し合うようになってとにかく涙もろくなった華子がとても愛おしい🥰🥰 ダブルの婚約💍も幸せの証✨😊💖 末永ーく永ーく、お幸せにね😊華子&陸さん❤️🔥