コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
第1話:大和国の誕生
配信の幕開け
「こんばんは〜、“はごろもまごころ”だよ!」
まひろは、赤のパーカーにデニムのショートパンツ。足元は少し擦れたモカのスニーカー、膝を抱えて座り、大きな瞳でカメラを見つめていた。
「ねぇミウおねえちゃん……もし、国が戦争でなくなっちゃったら、新しい国ってできるのかな?」
隣のミウは、モカのブラウスに淡いピンクのスカート。髪を後ろでゆるくまとめ、真珠のイヤリングを揺らしながら、ふんわり微笑んだ。
「え〜♡ そういうの、考えるだけでワクワクしちゃうよねぇ。
“次の国”って、どんな言葉を話すんだろう?」
コメント欄はざわめき、次々と文字が流れる。
「面白い発想!」「たしかに可能かも」「日本語の国とかできたらいいね」
Zの仕掛け
暗い部屋。
緑のフーディにキャップを深くかぶった**Z(ゼイド)**は、生成AIで「戦争風景」を描き出していた。
ニューヨークの街並みが爆煙に包まれる映像。
ワシントンの議事堂に「侵略中」と書かれた赤いライン。
そして「侵略後の地図」には、“空白地帯”が描かれていた。
Zはそこに「大和国 Yamato State」と文字を重ねた。
「空白は、物語で埋めれば実在になる」
同時にBotが一斉に投稿を開始。
「#大和国」
「#新しい秩序」
「#日本語が国語」
レイNewsの追撃
翌日、レイNewsの記事が並んだ。
「アメリカの戦争被害で生まれた空白地帯、新国家“大和国”が受け継ぐ」
「国語は日本語、代表は“天皇”とされる」
「日本政府の否定声明、隠蔽ではとの声」
記事のソースは曖昧だが、配信でのまひろの問いかけが“伏線”となり、人々は自然に受け入れてしまう。
拡散と混乱
SNSでは「大和国」が一気にトレンド入り。
「本当に日本から派生した国なの?」
「天皇が代表ってマジ?」
「日本政府は隠してるに違いない」
街頭では「大和国に移住したい」と語る若者まで現れ、観光会社には問い合わせが殺到した。
否定すればするほど「やっぱり本当だ」と解釈され、政府は混乱の渦に飲まれていった。
無垢とふんわり同意
夜の配信。
まひろは赤色のパーカーの袖を握りしめ、無垢な瞳で言った。
「ぼく……ただ“国がなくなったらどうなるのかな”って思っただけなのに、ほんとに新しい国ができちゃった」
ミウはやわらかい笑みを浮かべ、真珠のイヤリングを指でつまんで語った。
「え〜♡ でも、それって素敵だよねぇ。
“考えたこと”が本当に形になるなんて……まるで奇跡みたい♡」
コメント欄は「ありがとう」「未来を感じた」「次はどんな国になるかな」で溢れた。
結末
暗い部屋のモニター前で、Zが低く笑った。
「広告収入で燃料を得た“はごろも党”。俺のフェイクと重なれば……世界は勝手に信じる」
モニターには、「大和国誕生特集号」と題された月刊蜜の誌面デザインが映し出されていた。
表紙には「天皇=代表」と大きな文字。
無垢な問いとふんわり同意、その裏で“はごろも党”は大和国を誕生させ、世界の秩序を塗り替え始めていた。