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俺のせいで植物状態になった友人が3年ぶりに目覚めてしまいました

俺のせいで植物状態になった友人が3年ぶりに目覚めてしまいました 第1話

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2022年03月19日

#ホラー#サイコパス#嫉妬


「ねー、太一。ちょっと待ってよー」

「おせーんだよ、ったく!」


後ろからノロノロ付いてくる唯奈に、俺は悪態を吐く。

唯奈は俺の幼馴染だが、いつもとろくて嫌になる。

今日も、課題研究のために近くの丘に来ているのだが、大した坂でも無いのにもう疲れ始めている。

昔は妹みたいでかわいいと思っていたが、高校生にもなってこれじゃさすがにあきれてくるよな。


「女の子なんだから、優しくしてよー」

「なに言ってんだよ、ったく」

俺はため息を吐きながら立ち止り、唯奈を待つ。

俺1人だったらとっくに丘の上まで着いてるのに…


***


「ふう、やっと着いたー」


唯奈が丘の頂上で座り込む。

やっとなんて言うほどの距離でもないだろう…


「休んでないで、とっとと課題を終わらすぞ」

「えー、少しくらい休ませてよー」

「そんなこと言ってたら日が暮れるっつーの」

「でもー…」


あーもう、イライラしてきた。


「ほら、さっさと立て」

「はぁい」


唯奈を引っ張って立ち上がらせる。

不機嫌そうな顔しやがって…

よし…

ちょっと脅かしてやる。


「あ、唯奈。あれ見てみろよ」

「え?」


俺が指さした方向に、唯奈が目をやる。

その瞬間、俺は唯奈の背を押した。


「わっ!!」


「きゃっ…」


唯奈がバランスを崩して転倒する。


「あはは、ざまーみろ」

俺は笑いながら唯奈を見る。

しかしそこには…


「え…?」


さっきまでそこにいた唯奈がいない。

そしてその先に広がるのは…


「こ、こんなところに崖?」


茂みの先に、急な崖が広がっていた。


「ま、まさか…」


俺は嫌な予感を振り払い、ゆっくりと崖を降りていく。


「嘘だよな…嘘だよな…?」


心臓がバクバクと早鐘を打つ。

体中にじっとりと汗がにじむ。

永遠とも思える時間が流れ…

俺はようやく…それを見つけ出した。


「唯奈…」


血だまりの中に横たわる、幼馴染の姿…


「嘘だろ…」


俺はがくりと膝から崩れ落ちた。


「俺が…俺が唯奈を…」


後悔が、罪悪感が、恐怖が…


「いや、ちがうよな。俺のせいじゃないよな?ちょっと脅かそうとしただけだもんな…?」


そう、俺のせいじゃない。俺の…!!


「うわああああああああああっっっっ!!!!」


俺は1人、虚空に向かって叫ぶのだった。


***


「楽しかったね、太一」

「そうだな…」


夜のネオンの中、俺は車を走らせていた。


「これからどうする?」

「そうだな、ずいぶん遅くなったし…」


助手席に座る梨沙が、俺の肩に頭を置く。

いつものコロンの香りがやさしく漂ってくる。

ボタンの隙間から覗く胸の谷間が、俺の劣情を刺激した。


「どっかで休んでいこうか」

「うん、明日は講義もないし…ゆっくりできるよ?」


艶めかしく言う梨沙に、俺はそっとキスをする。

梨沙に出会えたおかげで、俺の大学生活は幸せだ。

入学してすぐに意気投合し、気が付けば恋人同士になっていた。

梨沙は可愛くてお洒落で料理も上手で、俺にはもったいないくらいの彼女だ。

そう、こんな俺には…


「ねえ、信号変わったよ」

「あ…」


目の前の青い光に気づき、俺は慌ててアクセルを踏む。


「またぼーっとしてた」

「…すまん」

「別にいいけどさ」


梨沙が少しほほを膨らませながら言う。


「太一さ、私と会う前のこと…全然話してくれないし」

「話すような過去がないからだよ」

「そうかなぁ」


責めるような梨沙の視線を、あえて無視する。

梨沙は頭も勘もいい。

俺が過去を隠していることを知っているのだろう。

でも、話すことなんてできるわけはない。

そして話す必要すらないのだ。

──俺が幼馴染を崖から突き落としてしまったことなど。

あの時、崖下で唯奈を見つけた俺はすぐに救急車を呼んだ。

そして説明したのだ。

──唯奈が足を滑らせて崖から落ちたと。

唯奈はもともと運動神経が良くなかったこともあって、疑われることはなかった。

俺は唯奈の家族の前で泣きながら謝罪したが、強く責められることはなかった。

それはそうだ。

俺はあくまで、一緒にいたのに唯奈を助けられなかったという責任しかないと思われているのだから。

唯奈は一命をとりとめたが植物人間状態になり、病院で眠り続けているらしい。

そしてそれから、俺は唯奈がどうなったのか知らない。

いまだに眠り続けているのか、既に亡くなってしまっているのか…

だが、医者が言うには目を覚ます可能性はほとんどないということだ。

だからもう、俺には関係ないことなんだ。

あれは事故だ。だから俺にはもう、関係ないんだ。

そう言い聞かせていても、たまに思い出してしまう。

早く吹っ切らないとな。


「ん?」


ふいに、着信が入る。

車を路肩に停めてスマホを見ると、実家からの着信だった。


「珍しいな」


独り暮らしを始めた当初はよく連絡が来ていたのだが、最近はめっきりだったのに…。


「もしもし?」


怪訝に思いながら、俺は電話に出る。

しかしその電話は…

俺にとって悪魔の知らせだった。


「…唯奈が、目を覚ました?」



俺のせいで植物状態になった友人が3年ぶりに目覚めてしまいました

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コメント

5

怖〜い

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