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#勧善懲悪
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ズジの机の上には、紙の束が山になっていた。
黒い名刺のこと。
相談を値段に変える仕組みのこと。
止められなかった人たちの後悔と、止めようとした人たちの手間と、ぎりぎり間に合った言葉のこと。
どこまで書くか、どの言葉で残すか。
それを誤れば、また別の見世物にしてしまう。
「暴くためじゃない」
ズジは独り言のように言う。
「次に同じ手を使わせないため」
向かいに座っているゼフィレルは、小さく肩をすくめた。
まだ完全に人前へ出る勇気はないらしい。それでも今日は逃げずに来ていた。
「私は名前を出さなくていい」
「そう」
ズジは紙から目を上げない。
「でも、あなたがどんな言葉を書いたかは残す」
ゼフィレルは苦く笑った。
「容赦ないね」
「必要なところにはね」
しばらく沈黙が続く。
やがてゼフィレルは、持ってきたメモを机の上へ置いた。
『不安に寄り添うふりをして、選択肢を奪う文章を書いた』
短い一文だった。
「これ、載せて」
彼女は言う。
「格好つけた言い訳より、その方がまし」
ズジはその紙を見つめ、やがてうなずいた。
夜、無料冊子の初稿が刷り上がる。
表紙の題は、エリアの字で大きくこう書かれていた。
弱みを商売にさせない町でいるために。
サペは一冊受け取り、ぺらりとめくる。
そこには誰かをさらし者にする熱ではなく、二度と同じ手にだまされないための静かな熱があった。
ズジは刷りたての紙の匂いを吸い込み、少しだけ笑う。
「こういうの、地味なんだけどね」
「地味な方が残る」
マイナが答える。
派手な宣伝より、静かな記録。
その強さを知った町は、前より少しだけしぶとくなっていた。