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皮を着て歩く骨。
時には野犬にも食われる。崖から落ちてみてバラバラに弾けても、やがて手脚のついた生き物に戻ってしまう。
これは呪いだ。
その生き物はそう信じて解呪の方法をあたりもしたが、その度にこれは呪いとは違うと断られてしまう。そして、大概がそのあとに謎の集団に攫われて切り刻まれた。
だが拘束されてそういう実験動物にされても、いつの間にか解放されている。切り刻んだ者たちは消えて失せているのだ。
やがて別の国に近づくにつれ、この生き物を狙う冒険者は増えていった。日に2度死ぬことも珍しくない。厳密には死んでないのだが。
冒険者側ではグールの定期的な発生として認識され討伐され続けている。一体のグールで複数回の依頼が出されて達成され続けるというループとなっていた。
しかしそれもしばらくすると無くなる。
襲われることもずいぶんと減った。
もう何度目かも分からない討伐をされた後、気づけばその生き物は肉を取り戻して、骨と皮だったものは壮年の男の姿をしていた。水面に映る姿にそれがかつての自身のものだと知り、結局またこの自殺行は振り出しに戻ってしまったのだと嘆いた。
道中に何者かに襲われたのか冒険者の死体があったので、服を拝借し近くの街へと進入して様子を窺う。どうも人々の話すところによると、最近は冒険者が少ないらしい。
冒険者の間にだけ限定しての流行病があったのだとか。あるいは切り刻まれて無残な姿で見つかるだとか。情報は多分に憶測が含まれる内容ではあったが、奇妙な死を迎えているというのは確からしい。
不思議に思う男は冒険者ギルドを訪れた。別に登録があろうとなかろうと見ていく分は制限などない。何かしらの情報でもあればいいと。もちろん探しているのは自身が死ぬための情報。
いっそ存在しないとされているおとぎ話のドラゴンとかいう、その通りであれば生命活動の維持はどうするのかと問いたい巨大なトカゲでもいてひと呑みにしてくれればいいとすら思って。
だが、そんな存在の情報はなかった。そりゃあおとぎ話なのだから。
しかし、調査依頼としてあるものを見つけた。
それもきっとおとぎ話の類いなのだろう。
マジマジと見る男に周りにいた者は、それはずいぶん前からあって誰も受けやしない。報酬もまともにないし、内容もあやふやで悪戯かなんかとの事だが、ずっとここに貼られてあると教えてくれる。
だが男はこんなものでも頼ってしまうほどに参っているのだ。自分自身でも馬鹿げていると思うが。
[西の方にあるらしい願いの叶う街の情報求む]
依頼かすら怪しい。けど、この男はそんなものにだって縋りたいのだ。