そして6~7キロ進んだ川奈の辺りに海鮮料理の店があった。
海にせり出すように建ったその店で、二人は昼食を取る事にした。
10席ほどある店は、海に面した窓のすぐ下に海が迫っていて絶景だった。
店内は金曜日の平日という事もあり、それほど混んではいなかった。
二人は窓際の席に座ると早速メニューを見る。
メニューには写真も載っていた。
どれもボリュームたっぷりで美味しそうだ。
海鮮丼やあじのたたき丼、金目鯛丼などの丼物が充実していたが、二人は刺身定食を頼んだ。
それにプラスして、涼平はさざえのつぼ焼きも頼んでくれた。
このさざえは地元の海女さんが海で採って来たものらしい。
料理が運ばれてくると、二人は鮮度の良さに感激した。
さざえのつぼ焼きも磯の香りがしてとても美味しかった。
魚好きの詩帆は、
「このお刺身こんなに厚く切ってある。凄いボリュームね」
と、やたらと興奮していた。
嬉しそうに笑う詩帆を見ているだけで、涼平は幸せな気持ちに満たされていた。
詩帆といると本当に安らぐ。
「同じ海なのに伊豆の海は辻堂の海とはやっぱり違う気がする。不思議ね」
そう言って笑う詩帆の笑顔が心に染みる。
目の前の詩帆を見つめていると、涼平は自分の中からありったけの優しい気持ちが溢れ出してくるような気がした。
二人は食事を終えると大満足で店を出た。
車に戻った二人は、エメラルドグリーンの海を目指してドライブを再開した。
それから二人が乗った車は、小さな漁港を通り過ぎながら海沿いの道をひたすら進んで行く。
この辺りまで来ると車の往来もだいぶ少なくなっていた。
詩帆が城ケ崎海岸にある灯台に寄りたいと言ったので、涼平は快くOKした。
そこには観光名所のつり橋もあるので、そこにも行ってみる事にする。
目的地へ到着すると、二人はまず吊り橋へ向かった。吊り橋には多くの観光客が訪れていた。
前にいた人達が吊り橋を渡り終えると、涼平と詩帆も橋を渡り始める。
吊り橋から眺める景色は絶景だった。
眼下に広がる海は深みのある群青色、そして沖に向かっていくに従って明るいコバルトブルーへと変化している。
海はの色は太陽光によって変化しているようだ。
(ここの様々な青色があるのね)
詩帆は昔兄の航太が言っていた『様々な青色』の意味が少しだけわかったような気がした。
きっとこの世には詩帆が知らない青色がまだまだいっぱいあるのだ。
その後二人は灯台を見学しに行った。灯台の階段を上がって展望台に行ってみると大島がくっきりと見えた。
詩帆はいつか灯台の絵を描いてみたいと言った。
それを聞いた涼平が、いつか灯台巡りのスケッチ旅行にも行こうと言ったので詩帆は嬉しそうに笑った。
涼平は菜々子がいなくなって以降、未来について考えなくなっていた。
いくら未来を思い描いていても、それがある日突然『無』になってしまう経験をしたからだ。
だから未来について考える事など無意味だと思っていた。
しかし今自分は無意識に未来を語っていた。そして未来を楽しみにしている自分がいる。
涼平は自分が変化しているのを感じていた。そして変えてくれたのは間違いなくここにいる詩帆だ。
その時涼平は確信した。自分がこれから成すべき事は、海よりも深く空よりも広い心で目の前にいる女性を愛し幸せにする事だと。
コメント
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菜々子さんの記憶を無理に追い出そうとせず 心の片隅で大切にしながらも、 未来に向かって進む 前向きな気持ちになれたのは 詩帆ちゃんという存在があってこそ....✨ 二人だけの初めてのキャンプ🌊 さらにお互いをよく知り、二人の距離をもっと近づけられると良いですね....🍀✨
本当ですね、詩帆ちゃんとの出会いから涼平さんの心の中の愛情の厚みがどんどん増した気がします♪詩帆ちゃんが菜々子さんのこともしっかり受け入れて涼平さんにもちゃんと伝える愛情の深さ❤️🔥未来を見れなくなった涼平さんが詩帆ちゃんとの未来を望み愛する✨😭こんな素敵な決意を詩帆ちゃんが知ったら…ドキドキ💞💕今晩のキャンプナイト🏕️が待ち遠しい🥰